映画『大統領の陰謀』胆のすわった報道関係者の映画です!!

パクラ監督と言えば名うての社会派監督で、今回は有名なウォーターゲート事件の内幕を暴いたワシントンポスト記者の活躍を描いています。

 

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ニクソン大統領が任期途中で辞任するという滅多にない事件の発端となったウォーターゲート事件は、単に政治家が絡む事件というだけでなく、ホワイトハウスが首謀者となった事件だけに、その圧力や取材妨害はもちろん半端無く、ついには二人の命の危険までささやかれ始めるほど、いかに危険な取材だったのかが伝わってきます。

 

さらには、ベテランの政治部記者が担当したのでもなく、入社数ヶ月の記者ボブ・ウッドワード記者(ロバート・レッドフォード)がウォーターゲート事件の裁判を傍聴取材を担当したところから始まったということにも驚かされました。

 

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相棒となったカール・バーンスタイン記者(ダスティン・ホフマン)の、しつこい取材攻勢も今なら問題視されるところかもしれませんが、それも取材にかける執念なるが故のことで、しかしながら、取材された側も誰が漏らしたことなのかを詮索されることになるだろうし、その者の地位保全のためのリークもあったりして、そのギリギリの駆け引きが映画全体に緊張感が漂っています。

 

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編集主幹のベン・ブラッドリー(ジェーソン・ロバーツ)は、厳しいながらも理解ある上司で、若い二人の記者を信じて、担当を変えることもなく、アドバイスしたり、二人をかばったりしています。クライマックスで二人に話す、「オレたちが守らなきゃいけないものは一つ。合衆国憲法修正第一条だ。取材の自由、国民の自由だ。」というセリフは、現実にも彼の信念だけでなくワシントン・ポスト紙の社是となっているようです。

 

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政治サスペンスとしての面白さはもちろんあるのですが、とにかく何よりも全体的な印象は地味で、ほとんどの場面がワシントン・ポスト紙の編集フロアーな上に、徹底して淡々と二人の行動を追っていく演出は、まるでドキュメンタリー映画のようです。

 

感情がほとばしるような場面もなければ、マイアミの大統領再選委会の要人に受付嬢の隙をみて強引に面会したり、簿記係の女性を問い詰めるスリリングなエピソードを除いて、取材する側も取材される側もほぼ電話で登場するだけで、ミステリー映画のような切迫したドキドキ感はありません。

 

この映画は、よくある骨太ドラマを売りにする社会派映画の悪い面の、堅いが故に退屈という部分が前面に出てしまったように思えます。というのも、バーンスタインとウッドワードが書いた原作小説をそのまま映画化したためか、大量の人物が役職名付きで次々と登場してき、それが風のように通り過ぎていくからで、同時代の人間であれば問題なく観ることが出来ただろうし、本であれば冒頭の登場人物一覧に名前やら役職やらを並べて書いてくれているだろうからそこを参照すればクリアに理解できたかも知れませんが。

 

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要は、この映画には冷徹な熱さと、機智に富んだ会話によって「魅せる力」はありましたが、それを観客の頭や心に届けて理解を促す「魅せきる力」はそこまで無かったと言うところですか。時代背景、アメリカの大統領制、の詳細は述べるまでもなく、ウォーターゲート事件のことくらい多少知ってるよね感がしてしまいます。

 

今となっては、どうしても読み返さざるを得ない映画なのですが、ミステリーの伏線捜しの読み返しなどでもなく、難解部分を理解するための読み返しは、あまり面白くありません。

この映画にエンターテイメント的な面白さを求めると、裏切られることになるでしょう。しかしながら、この事件自体が、大統領を辞任に追いやるに至るアメリカにとっては前代未聞の大事件だし、しかも事件から数年しか経過していませんし、関係者への配慮があったことは間違いなく、それだけに冷静に真実を見極めようとする演出なのでしょう。

 

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この時代の映画は、サービス精神どこ吹く風、観客に媚びないところが多々あります。それはそれで、その雰囲気が悪女の深情け的な魅力を醸し出したりします。

 

近年公開されてアカデミー賞を賑やかした『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』のエンディング直前のシーンに、この映画『大統領の陰謀』の冒頭のウォーターゲイト・ビルの警備員が民主党本部のドアの異常を見つけるところが、そのまんま使われており、これはこの映画に対するオマージュであることに間違いないでしょう。

 

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