映画『ゼロの焦点』原作から半世紀!二度目の映画化の出来やいかに?!

松本清張生誕100周年記念作品と銘打って東宝映画が製作した映画です。第33回日本アカデミー賞に11部門でノミネートされました。残念ながら最優秀賞はとれませんでしたが、主演女優賞に広末涼子助演女優賞中谷美紀木村多江のダブルノミネートと3人の女の慟哭を描いた映画としては、面目躍如たるものがあったことでしょう。

 

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中谷美紀as室田佐知子
美貌と知性はあるが過去を持つ女。壮絶な過去を持つあまり、今は華やかな場所にいながらも嫌でも過去のマリーを引きずってしまいます。夫に愛されていながらもそれがゆえになお苦しみます。過去から逃れ切れなかった女の悲哀が画面に滲みます。

 

木村多江as田沼久子
知性はないが純粋な心を持つ、過去のある女。お腹に子どもを宿しながら、男に捨てられ、信じていた親友に裏切られ、生きる希望を失ってしまう、エミー。

 

広末涼子sa鵜原禎子
知性と純粋さを持つ、過去のない女。夫への想いに半ば盲目になってしまいます。純粋に彼を信じる姿は美しいのですが、或いは、自分が信じたことへの落とし前のために。真実を知らないと人は前に進めないものなのでしょうか。

 

パンパンを思わせる真っ赤なコートに身を包み微笑みをマリーに投げかけて崖に身を投げたエミー、親友をなくしてしまい空蝉の身となりながらも市長選の当選祝いの演説を続ける佐知子に、禎子はマリーと呼び掛けます。佐知子の表情が凍り、眼を剥いて倒れこんでしまいます。

こうして、3人の女の愛憎劇は幕を下ろします。

 

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それにしても、古典ミステリの映画化は難しいですね。とくに松本清張のような社会派はその時代を色濃く反映させているだけに、その時の情勢や気分が重要といった傾向が強いからなおさらです。

そして、2009年に製作した映画となると、およそ半世紀も昔の原作となれば、まんまたどれば、ただの記録映画にしかなりません。難しい時代であったからこそ2009年なりの解釈を盛り込んで欲しいものです。

 

しかしながら、戦後占領下の日本の暗さ、混沌を今の時代に描いても高齢の人以外には伝わりようもないかもしれませんが、松本清張が指摘して問題提議し、描こうとしていたもの、伝えようとしていたもの、を今の時代でもう一度伝えようなどというところが見えてきません。

 

ただ、映像の作りこみはかなりしっかりしていて、昔の金沢の町並み、電車、風景は良くできています。クラウンの観音開き(?)や日野ルノー(?)などよくぞ走らせてくれました。

少なくとも、これが分かる人でないと、3人の女の心情や、禎子の夫鵜原憲一(西島秀俊)、佐知子の夫室田儀作(鹿賀丈史)の心情はくみ取れないように思われます。

 

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いまわしい過去、それは戦争です。戦争であったこと、戦後にあったこと、を忘れたいがため、無かったことにしたいがために起こることが物語になっているのでしょう。

 

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