映画『荒野の七人』『七人の侍』をオマージュしリメイクして西部劇のレジェンドになりました!!



この映画『荒野の七人(The Magnificent Seven)』は、1960年のアメリカ合衆国の映画で、言わずもがなの黒澤明監督『七人の侍』(1954年)の舞台を西部開拓時代のメキシコに移し、監督はジョン・スタージェスで主演はユル・ブリンナーで描いたリメイク映画です。

後に第二作『続・荒野の七人』(1966年)、第三作『新・荒野の七人 馬上の決闘』(1969年)、第四作『荒野の七人・真昼の決闘』(1972年)などの続編が制作されています。

目次

 

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1.制作

ユル・ブリンナーが『七人の侍』に感銘を受け制作したオマージュ色の強い作品のため、大まかなあらすじ・登場人物の設定・台詞などの多くが忠実に再現されています。しかしながら、ロケ地や多数のキャストを使ったメキシコに配慮して、初めから用心棒を雇うのではなく銃を購入するという村人の自主性を尊重したり、衣装の汚れがみすぼらしく映るのを避けるために敢えて衣装の汚れはなくすなどの工夫や変更点が見られます。

当初の構想では、監督をユル・ブリンナー、製作をルー・モーハイム、主演をアンソニー・クインが担当する予定でしたが、スタッフ間の対立により現行のスタッフ・キャストに変更されました。
また、実際にはウォルター・ニューマンとウォルター・バーンスタインも脚本を手がけていますが、共同脚本のクレジットを辞退したため、映画・ポスターでは脚本のクレジットはウィリアム・ロバーツ単独になっています。


2.ストーリー

1)プロローグ

国境を越えたメキシコの寒村イズトラカンは、毎年刈り入れの時期にカルベラ(イーライ・ウォラック)率いる盗賊に作物を奪われ苦しんでいました。そして今年は作物ばかりか1人の村人が殺されたのです。自分たちは耐えられても子どもたちにこの苦しみを与え続けるわけにはいかないと、ミゲル(ジョン・アロンゾ)は長老に相談し、盗賊と戦う銃を買うために金を出し合って、国境を越えてテキサスに向かいました。


2)流れ者

メキシコに近いテキサスの辺境の町では、行き倒れた先住民の死体を誰も葬らないので、見かねた行商人たちが葬式をしてやろうとしていたところでしたが、町では先住民の埋葬が禁じられており、周囲は敵意むき出しの荒くれ者ばかりで、誰も霊柩車の御者を引き受けませんでした。
そこに、1人の流れ者クリス(ユル・ブリンナー)が御者として名乗り出て、それを見たもう1人のよそ者のヴィン(スティーブ・マックイーン)が助っ人を買って出ました。


3)救世主

それを見て2人に共感する者達からショットガンと霊柩車の弁償代を借りたクリスとヴィンは、通りの窓や屋根からの狙撃者にすばやい銃さばきで弾を撃ちこみながら霊柩車で街を進み、墓地まで死体を運び、そこで数名の住人たちに銃を突きつけられるも、2人はこれを難なく退けて先住民を埋葬し、町は歓声に包まれました。

ミゲルたちは、緊迫した状況なのに冷静に対処する2人の男を見て、その勇気にかけて「銃の買い方と撃ち方を教えてくれ」と懇願します。クリスは「銃を買うよりガンマンを雇った方が良い」と言って助っ人を引き受け、彼の人柄に惹かれたヴィンも協力を申し出ました。しかしながら、1人2人のガンマンでは勝ち目がない。せめて7人のガンマンが必要でした。


4)メンバー募集

村の全財産を持ってきたと言っても、1人わずか20ドルしか報酬はありません。2人は町を探し回り、儲け話に目がない旧友ハリー(ブラッド・デクスター)、歴戦の強者である怪力のベルナルド(チャールズ・ブロンソン)、投げナイフの名人ブリット(ジェームズ・コバーン)、凄腕の賞金稼ぎだが今は追われる身のリー(ロバート・ヴォーン)、勝手についてきたガンマン志望の若者チコ(ホルスト・ブッフホルツ)を仲間に加えました。


5)前哨戦

20ドルの報酬で雇われた7人の凄腕ガンマン達は、村人たちとの交流を経て、カルベラ一味を迎え撃つことになりました。予想外の戦力に対してカルベラたちは混乱し、村を襲うも7人のガンマンによって撃退されました。一時は勝利したことで村人達が安堵し、楽観した雰囲気が広がる中、チコは村娘ペトラ(ロゼンダ・モンテロス)と惹かれあうのでした。


6)逆転勝利

しかし数度の小競り合いで引き上げるかに見えたカルベラ達が、是が非でも村から食料を奪わねばならないほど追い詰められている事が明らかになり、皆殺しを恐れた村長ヒラリオはカルベラへ降伏しての談合を決意し、ガンマンたちを裏切ってカルベラ一味を村に引き入れてしまいました

カルベラによって一時は村から追い払われた7人でしたが、村人たちの苦渋の決断とカルベラ達から受けた侮辱に対し、村から盗賊を追い払うため壮絶な戦いに挑みます。


7)勝者は誰?

決戦の後、生き延びたガンマン達に長老(ウラディーミル・ソコロフ)は「農民が勝った。農民は大地と共に永遠に生きていける。あなた達は大地の上を吹きすぎていく風だ。イナゴを吹き飛ばし、去っていく」と声をかけました。クリスたちと旅立とうとしたチコでしたがペトラのもとに駆けていき、農民として生きる事を決意するのでした。
仲睦まじく農作業をする彼らの姿に、クリスは長老の言った通り「勝ったのは俺たちではない。農民たちだ」と笑って、ヴィンと共に荒野へと去っていきました。

 

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3.『七人の侍』と『荒野の七人』のキャスティング対比

本作『荒野の七人』では今となれば、贅沢で豪華な配役になっていますが、このころはまだ駆け出しで、この映画の後で、マックイーン、ブロンソン、コバーン、ボーン、ブーツホルツなど、その後の有名な映画の主役を張ることになった大スターになりました。


1)クリス

ユル・ブリンナー1920年7月11日生~1985年10月10日没)

7人のリーダー格で、『七人の侍』の勘兵衛に相当するキャラクターです。冷静沈着な性格で、盗賊団と戦うための戦術から、他のガンマンや村人達のまとめ役となり、チームワークを乱す者に対しては決して容赦しない厳格さも見せます。

 

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黒ずくめの衣装やファニングショットなど、それまでの西部劇では悪役が行っていたような衣装や攻撃方法が特徴です。当初の構想では、年老いた南北戦争の敗残兵という、より原作の勘兵衛に近い人物設定でした。黒澤明宮崎駿との対談で「ガンマンをならず者にしたのは失敗だった。南軍の元将校の方が良かった」と語っています。

幾度も合戦に出た勘兵衛と異なり、一ガンマンとしては腕利きですが、戦略的な活躍は少なくなっています。これはオリジナルにおける「武士」が野武士も含めて元農民の菊千代、初陣前の勝四郎を除いてほとんどが合戦経験を有するプロの兵士であるのに対し、本作における「ガンマン」は銃の技量に長けたならず者にすぎないためです。

よってオリジナルで見られた村を要塞化したり、四方から騎馬で攻め込んだり、あえて村に野武士を招き入れて包囲するといった戦略的な要素は無く、戦闘シーンは双方とも正面からの撃ち合いに終止しています。またオリジナルでは勘兵衛は菊千代の抜け駆けを厳しく叱責したのに対し、本作におけるチコの抜け駆けは特に咎められていないのも、クリス達が軍人ではなくただの「ガンマン」である為なのでしょう。

また勘兵衛は七郎次以外との面識はなく本編中で他の五名と知り合いますが、本作のクリスは七郎次に相当するヴィンとは初対面な一方、ハリー、ブリット、リーとそれぞれ既に交友関係を持っています。


2)ヴィン

スティーブ・マックイーン(1930年3月24日生~1980年11月7日没)

7人のサブリーダー格で、五郎兵衛と七郎次に相当するキャラクターです。女に関心をよせる描写は"菊千代"の要素も含まれていますね。

 

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厳格で真面目なクリスに比べて軽妙洒脱なところがあり、しばしば冗談を言って場を和ませます。しかし、自分達のようなガンマンがもはや時代遅れである事を自覚しており、雑貨屋の店員などの手堅い職と安定した生活を望むなど、根はとても真面目な人格者です。

早撃ちの達人で、七郎次と異なり、クリスとは冒頭の葬儀への助っ人となって知り合いました。そして五郎兵衛と同様に、彼の人柄に惹かれて同行を申し出ることになりました。

最終決戦後まで生き残り、クリスと共に旅立っていきました。


3)チコ

ホルスト・ブッフホルツ(1933年12月4日生~2003年3月3日没)

7人の最年少メンバーで、勝四郎と菊千代に相当するキャラクターです。クリスのガンマン募集で一度は却下されますが、あきらめずについて行き仲間となりました。

 

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ひたむきで純粋である反面若さ故感情的になりやすいところがあり、実のところ農民の出で、彼らが真っ先に戦いの犠牲になっている事を身をもって知っているため、自分が憧れているガンマン、ひいては仲間達にもわだかまりを抱いています。

七人の侍』の勝四郎と異なり、最後は村に残り、ペトラ達と共に生きる道を選びます。これは身分制度の存在する時代・社会が舞台のオリジナルにおいて「武士」は身分であるが、本作の舞台での「ガンマン」は身分ではないためなのです。

ガンマンはいつでも農民になれるし、逆もまた可ですが、武士はそうはいきません。
もちろん、菊千代のように混乱期の野武士や浪人で出自の定かでないような武士もあり得るのかも知れませんが本物の武士からは侮蔑されていました。

こうした違いも、前述の村娘との結末も含めてエンディングの描き方の相違となっています。

冒頭、クリスたちの仲間に入るべく後を追いますが、途中で川魚を捕まえて食べながら一行を待っているエピソードは『七人の侍』の菊千代のまんまでした。


4)ベルナルド・オライリー

チャールズ・ブロンソン1921年11月3日生~2003年8月30日没)

平八に相当するキャラクターです。その出自に対するコンプレックスと子どもたちとの関係性は菊千代の要素も含まれています。

 

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メキシコ人とアイルランド人の混血で、それ故に自分の「ベルナルド」という名前を嫌っています。平八と同様に薪割りの下働きをしていたところを、ハリーから聞いたクリスにスカウトされました。

平八と異なり腕利きだが、特に愛想が良い訳ではありません。しかし素朴で屈託の無く温かい人柄から、村の子供達に慕われます。盗賊団の復讐を恐れた村人達によって7人が追われた際、自分達の親を弱虫で卑怯だと非難した子供の尻を叩き、「銃を持って戦うより土地と家族を守るほうがよほど勇気がいる。お前達の親は村と家族を守るために決断したのだから悪口を言ってはいけない」と叱りました。

最終決戦では、助けに駆けつけた子供達を注意している際に隙を突かれ落命します。最後まで子供想いの心優しき人物でした。最終決戦後、殉職した4人の墓に向かって黙祷する子供達の姿が見られる。ただ、メンバー武士の一人一人に墓の世話をする担当があらかじめ決めてあった様ではありますが。

原作では平八によって「戦にはこういうものがないと寂しい」と旗指し物が作られるが、本作ではそういった描写はありません。


5)ブリット

ジェームズ・コバーン(1928年8月31日生~2002年11月18日没)

久蔵に相当するキャラクターで、7人の中で最もオリジナルの役柄に忠実になっています。ナイフ投げの達人で、寡黙かつ求道的な孤高の男です。

 

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カウボーイと決闘を繰り広げた際にクリスと再会し、一度は誘いを断るも夜には宿に訪れて一行に加わりました。セリフは非常に少ないのですが、含蓄のある言葉や行動でチコから慕われています。

最終決戦では、敗走する敵の銃弾に倒れるが、死の間際までナイフを投げる構えを崩さず、原作における久蔵は野武士の頭領に狙撃を受けて斃れる間際、刀を投げる事で射手の位置を報せて味方の勝利に繋げたように、ブリットの場合はあくまで最期まで戦う姿勢を示すという在り方で描かれました。

前哨戦のあと斥候にでて、木の根元で寝そべって花を摘みながら敵を待つシーンは『七人の侍』の久蔵のまんまでした。


6)ハリー・ラック

ブラッド・デクスター(1917年4月9日生~2002年12月12日没)

相当する役柄の無いオリジナルキャラクターで、クリスの旧友という点では、一部だけ七郎次に該当しています。また、『七人の侍』でも7人のメンバーではありませんが、恩賞に執着する点で、前半に宿場で勘兵衛の浪人集めの試験に合格するが百姓の頼みと聞いて参加を断る剣客をモデルのイメージにしているかもしれません。

 

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山師でもあり、クリスが村の護衛を引き受けたのは「村の護衛に20ドルというのは建て前で、実は物凄い報酬がある」と思い込んで一行に加わりました。クリスからは否定されましたが、ひんぱんに村人へ鉱山や財宝のありかを尋ねては、村人たちが「アステカの財宝が近くの山にあるらしい」と噂しているのを聞き、ますます誤解を深めていきました。

7人の中で一番現実的・ドライな性格で、村を追われたときは一旦6人と袂を分かつが、結局最終決戦では馬を走らせて彼らの元に駆けつけ、窮地から救い出しました。しかし落馬の隙をつかれて銃弾を受け、クリスに看取られながら落命、7人最初の犠牲者となりました。

今際の際まで報酬を気にかけており、クリスの「実は村には50万ドル相当の金があり、分け前は1人7万ドルだ」という、クリスの心遣いから出た嘘を聞いて、「来て良かった」と満足しながら息を引き取りました。


7)リー

ロバート・ヴォーン(1932年11月22日生~2016年11月11日没)

七人の侍』に相当する役柄の無いオリジナルキャラクターです。凄腕の賞金稼ぎでクールな皮肉屋ですが、標的を仕留めた結果として追われる身となり、潜伏していたところをクリスに声をかけられ同行を決意しました。

 

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しかし、銃の腕前の衰えから自信を失い始め、自分が倒した敵の亡霊に怯える日々を送っており、守るべき対象である村人から逆に優しく励まされる事もありました。村を追われたときはクリスから誰にも借りがないからと離脱を許可されるも、「(借りは)自分にある」と死地を求めて村へ戻るのでした。

最終決戦では、家に捕らわれた村人を救うべく単独で突入し、瞬時に三人の山賊を仕留める活躍を見せるが、その直後に隙をつかれて撃たれ絶命します。しかし彼が解放した村人たちが攻撃に参加することによって形勢が逆転しました。


8)カルベラ(イーライ・ウォラック

七人の侍』では野武士の頭目のキャラクターは際立ってませんが、ここでは重要な筋立てを握り、35人の手下を率いる悪行の盗賊団の首領としてのセリフをはきます。

 

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毎年収穫の時期になると、村の食料を強奪し、クリス達7人のガンマンと初めて対面した際には「(村人に)食い扶持残してやったばっかりにこんな悪党ども雇いやがって」と怒り、村の食料を強奪している事をクリスに咎められても「知らねえな。この商売でそこまで気にしていられるか」と発言し、村人を指して「(神は)羊には羊の役目があるからお作りになったんだぞ」と悪びれもせず言い切ります。

意外に律儀なところもあって、一旦村人を人質に取って7人のガンマンを追い出す際にも、クリスたちの面目を立てて銃を一時預かるだけでガンマン達が村を離れたら殺さずに銃を返却しています。その後、村に戻って油断したところを7人の奇襲を受けて敗死すろことになりますが、村に戻っても何のメリットもないクリス達がなぜ戻ってきたのか、疑問に思ったまま絶命しました。


9)総括

このように、この作品『荒野の七人』は、基本的な設定こそ『七人の侍』と同じですが、さすがに志村喬扮する勘兵衛に相当するリーダー、クリスを同じスキンヘッドのユル・ブリンナーが演じさせ、それ以外のキャラクターは、ストーリを止揚しながら、リーダーの良き相棒(七郎次)、半人前のイケメン(勝四郎)、冷静沈着な剣の達人(久蔵)、子ども好き(菊千代)、粗暴(菊千代)などなど、こういった要素を『荒野の七人』では巧みにばらけさせて各キャラに割り振り、さらには新たな個性をも加味させていくことで、新たなキャラクター像を構築することに成功しています。

ジェームズ・コバーン扮するブリットは宮口精二扮する久蔵のキャラをかなりなぞっていますが、一方でロバート・ヴォーン扮するリーは完全オリジナル・キャラ。ブラッド・デクスター扮する金に目がないハリーも、リーダーと旧友であることや豪放に見える点以外、『七人の侍』との共通項はさほど強く感じられません。

単なるリメイクにしてやるものか!とでもいたげな名匠ジョン・スタージェス監督らスタッフの意気込みがうかがい知れるところですね。

 

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4.まとめ

七人の侍』も本作『荒野の七人』も公開以来、半世紀以上経ちました。全ての懐かしい名優の方々は物故されてしまいましたが、この二つの作品は今もなお生き続けています。