映画『桜田門外ノ変』日本を揺るがした幕末のリアリズムです!!

この映画『桜田門外ノ変』は、吉村昭歴史小説を原作とした2010年10月16日公開の東映配給映画です。

目次

 

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1.制作

水戸藩開藩四百年記念」と銘打ち、茨城県の地域振興と郷土愛を目的に時代劇として実現しました。監督は『男たちの大和/YAMATO』の佐藤純彌、主演は大沢たかおです。企画・製作・撮影においては茨城県内の自治体・企業・市民団体の全面協力体制がとられ、見せ場である桜田門外襲撃シーンのために約2億5000万円の巨大オープンセットも組まれました。


2.あらすじ

1)プロローグ

1854年、ペリー提督率いるアメリカの「黒船」艦隊が浦賀に来航、長きに渡り鎖国政策を貫いてきた徳川幕府に開国を迫ります。幕府の意見は二つに分かれ、開国を主張する彦根藩主・井伊直弼派と、外国を武力で追い払うべきだと攘夷を唱える水戸藩主・徳川斉昭北大路欣也)派の間で激しい権力闘争が繰り広げされていました。


2)江戸城桜田門

1860年3月3日。この日の江戸は大雪が降り積もっていました。桃の節句を祝うため登城に向かう大老井伊直弼伊武雅刀)の行列が江戸城桜田門に差し掛かったその時です。何者かが直訴状を持って直弼の乗る籠に近づいてきました。それを合図に、門の周辺に待機していた実行隊長・関鉄之介(大沢たかお)率いる水戸藩脱藩者17名、薩摩藩士1名の計18人が直弼の行列を襲撃してきました。

 

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最初に斬り込んだ水戸浪士の稲田重蔵(田中要次)は護衛に斬られますが、大半の護衛の者は刀の柄に袋をかけていたので即座に対応できずに次々と斬られていき、白い雪景色が鮮血の赤に染まっていきます。そして、唯一の薩摩藩士・有村次左衛門(坂東巳之助)が直弼を駕籠から引きずり出し、遂にその首を討ち取りました。

既に薩摩藩の挙兵の約束を取り付けていた襲撃者たちは京都へ落ち延びようとしますが、重傷を負った有村ら一部の者は力尽きて自決します。鉄之助はこの日に至るまでの日々を回顧していました。


3)安政の大獄

1858年、大老に就任した直弼は独断で日米修好通商条約を締結します。斉昭は直弼を問い詰めようと福井藩主・松平春嶽池内博之)と組んで江戸城に上がりますが、直弼は不時登城を咎めて斉昭を隠居謹慎処分とします。これを機に直弼は恐怖の「安政の大獄」を開始し、数多くの反対派を捕えて処刑していきました


4)事変前夜

当時、水戸藩に仕えていた関鉄之助は、妻・ふさ(長谷川京子)や息子・誠一郎(加藤清史郎)と共に穏やかな暮らしを送っていました。

しかし、主君・斉昭の永蟄居と安政の大獄により状況は一変します。藩政改革を訴え、諸藩と組んで直弼に対抗しようとする群奉行の金子孫次郎(柄本明)と高橋多一郎(生瀬勝久)の命を受け、鉄之助は越前藩・鳥取藩・長州藩への遊説に赴きますが、弾圧の嵐は既に諸藩にまで及んでおり、鉄之助は何一つの成果を挙げられず江戸に引き上げます。

金子と高橋は極秘裏に直弼暗殺を計画、鉄之助ら賛同する藩士たちが集ってきました。彼らは藩に迷惑をかけまいと脱藩、唯一の薩摩藩士・有村を加えた18人は桃の節句を決行日とし、江戸に潜伏します。妻子を水戸に残した鉄之助は愛人いの(中村ゆり)の家に身を寄せながらその時を待っていました。


5)事変後

直弼の首を取った鉄之助らは、薩摩藩の挙兵を信じて京都に向かいますが、当の薩摩藩は挙兵慎重派に押される形で約束を反故にし、挙兵を撤回していました。

追い打ちをかけるように、水戸藩も幕府に弓を引いたとして実行犯を手配したのです。他の藩からも受け入れを拒絶され、後ろ盾を失った実行犯たちは全国各地を逃亡しました。

高橋は幕吏の追っ手に追い詰められ大阪の四天王寺境内で自決、金子も捕らえられるなど、一人また一人と捕縛または自決していきます。鉄之助の愛人だったいのも捕らえられ、拷問の末に獄中死します。

鉄之助は全国各地を逃亡していましたが、越後の湯沢温泉に潜伏していたところを遂に発見され、捕らえられてしまいます。鉄之助を捕えた水戸藩士の安藤龍介(北村有起哉)は鉄之助に敬意を示して酒を振舞います。鉄之助は「わしも幕府を倒すのに力を貸したいが、それも叶わぬ夢だな…」と呟きます。
江戸に贈られた鉄之助は、桜田門外の変から2年が経った1862年5月11日、刑場の露と消えます。


6)エピローグ

時は流れ、元号が「明治」となった1868年、官軍の隊列が桜田門に差し掛かります。部隊を率いる西郷隆盛永澤俊矢)は、感慨深げに「ここから始まったのだ。あっという間だった」と呟きました。


3.考察

1)歴史ドラマ

桜田門外の変」はNHK大河ドラマ第1作として「花の生涯」(1963年)で放映されています。同じ史実を全く反対の立場から描きましたが、どちらが正しいのかは、その時点では誰にもわかりませし、今でも正誤の判断は難しものです。

未来から振り返った時、ああすべきだったかもしれない、とわかる程度のものでしょう。たとえその時はおかしな選択だったとしても、それが後々生きてくるなんてケースは腐るほどあって、歴史や政治は、常に謙虚な目で分析していきたいものです。


2)構成

結構、序盤で「桜田門外の変」を見せてから、時系列を遡って事件の所以を描き、事件後の展開を描いていくのですが、この映画で一番面白く良くできているのがこの「桜田門外の変」シーンなので、観ているとテンションがドンドン下がってしまいます。
この映画、追いつめられていく展開が結構長く、史実に忠実っぽい感じが悪くはないのですが、正直イライラしなくもありません。


3)演出

演出も全体的に微妙な感じがし、例えば、御白砂に座らされた人たちが一人ずつ刑場に連れて行かれるのですが、「引っ立てい!」「はっ!」みたいな描写をワンカットで淡々と何人も何人も写します。監督的には何らかの思い入れがあったのでしょうが、あまり必要性が感じられません。最後、鉄之介が斬首される直前に妻と息子のことを思い出すシーンとかも恐ろしく安っぽくて興ざめしたりします。


4)史実と創作

後半にあった鳥取藩の剣術指南役との対決シーンは、絶対史実になさそうですが、チャンバラを期待する観客へのサービス感アリアリなシーンなのと、剣術指南の立場と心意気、それに呼応した鉄之助は気持ちのいいものでした。

 

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また、高橋多一郎の切腹振りも幕末の時代にまで実在したとは思いませんが、心ある侍が座敷を借し、血でふすまに辞世の句を書き残すとは、武士の鏡といえますね。

よくわからないのが妻子を思う良き家庭人の鉄之介が、一方で、江戸でいの(中村ゆり)を囲っていて、その女性が拷問の末に殺されて心を痛めていましたが、これが史実通りなるが故に取り上げたようで、無残な話です。

井伊直弼が最初に足を撃たれたとか、警護の藩士が柄袋していて刀が抜けなかったとか、結構、史実に沿っていて、雪が降りすぎて見えにくいところが多々ありましたが、血しぶきが飛び、雪が血で染まるのはなかなかリアリティーがありました。ただ、主役の鉄之介がずっと見てるだけだったのは、史実通りなんでしょうけど、やはり物足りなくもありました。

 

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4.まとめ

感覚的には大河ドラマの雰囲気で、年末にやってるスペシャル時代劇な感じもしました。「桜田門外の変」と「鳥取での真剣勝負」のシーンは見ごたえのあるものでした。

全体的には史実に忠実になぞって良心的ではありました。その分迫力に欠けましたが、それはそれ、悪いものではありませんでした。