映画『死の追跡』何処へ行く銃規制と平和主義?!

この映画『死の追跡(The Deadly Trackers)』は1973年のアメリカ合衆国の西部劇映画です。監督は、バリー・シアーで、主演はリチャード・ハリス、他に悪役では珍しいロッド・テイラー、やっぱり悪役のネヴィル・ブランド、本作のみ善玉のアル・レッティーと多彩で奇抜なキャスティングとなっています。

原作(オリジナル脚本)は、サミュエル・フラーの「リアタ」で、監督もフラーが予定でしたが、予算オーヴァーで企画ごと流れ掛けました。それを食い止めたのがリチャード・ハリスで、ハリスがワーナーと直接交渉して映画化に漕ぎつけました。

目次

 


1.ストーリー

1)プロローグ

サンタ・ローザで、アイルランド出身の保安官ショーン・キルパトリック(リチャード・ハリス)は、人を撃たないと決めていたために銃を持ちませんでした。

フランク・ブランド(ロッド・テイラー)をリーダーとする無法者一味、右腕に鉄道のレールをつけているチューチュー(ネヴィル・ブランド)、頭の弱いスクールボーイ(ウィリアム・スミス)、黒人のジェイコブ(ポール・ベンジャミン)は、サンタ・ローザの銀行を襲う計画を実行します。

 

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2)殺された妻子

町に向かったフランクらは銀行を襲い、それに気づいたキルパトリックと保安官補、そして男たちは、犯人を捕らえようとしました。

銃を手にした男たちはフランクらの逃亡を阻止し、キルパトリックの指示で、チューチューとジェイコブを捕えました。

 

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学校の教室に押し入ったフランクは、教師(ジョアン・スウィフト)に銃を向けて脅し、子供たちは怯えています。

抵抗するスクールボーイは、キルパトリックの前で観念しました。

学校に立てこもったフランクに、仲間を捕らえたことを伝えたキルパトリックでしたが、息子のケヴィンが人質に取られ銃を向けられました。

銃を捨てなければ子供を殺すと言われたキルパトリックは、町の男たちに銃を捨てさせました。

 

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仲間を解放し馬を用意して金も渡したキルパトリックは、町の外れまでケヴィンを連れて行き降ろすという、フランクの言葉を信じるしかなかったのです。

キルパトリックの妻キャサリンはケヴィンを助けるために駆け寄り、フランクは彼女を容赦なく射殺しました。

馬から落ちたケヴィンも、踏み潰されて死亡しました。


3)始まった追跡

妻子を亡くし絶望したキルパトリックは、一味がメキシコに逃げたことを知り、保安官補のビル(ウィリアム・ブライアント)に止められるものの、単独で追跡することになりました。

野営地にスクールボーイを残して出発したフランクらは、銃を手にしたキルパトリックが追ってきたことに気づきました。

銃撃されたスクールボーイが襲われ、キルパトリックにナイフで殺されたのを確認したフランクらは、その場を去りました。

スクールボーイを殺したものの、キャサリンとケヴィンを想いだしたキルパトリックは、その場で泣き崩れてしまうのでした。

その後、一味を見つけたキルパトリックは銃撃しようとしますが、現われたルドルフォ・グティエレスアル・レッティエリ)に制止されました。

グティエレスに銃を向けられたキルパトリックは、彼が治安判事である保安官だということを知り、自分のバッジを見せましたが、この土地で人を殺す権限はないと言われたキルパトリックは、一味は悪党だとグティエレスに伝えました。

殺人容疑で指名手配中のフランクを追っていると言うグティエレスは、目の前で妻子を殺されたと話すキルパトリックを気の毒に思うのでしたが、報復は許さないとグティエレスは言い、自分が捕らえて裁判にかけるとキルパトリックに伝えるのでした。

自分たち保安官の仕事は犯罪者を捕えることで、処刑人ではないと言ったグティエレスは、国に戻るようにとキルパトリックに言い、手紙で報告することを、自分の妻子の命にかけてキルパトリックに約束しました。

納得したように見せかけたキルパトリックは、グティエレスを殴り倒してその場を去る。りました


4)はめられた罠

とある民家に押し入ったフランクらは、老人夫婦の食料を奪い、キルパトリックが追ってきたことに気づいたフランクは対策を考え、老人夫婦を利用しようと考えました。

 

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村に着いたキルパトリックは、待ち構えていた人々に襲われて痛めつけられました。老夫婦を殺し、それがキルパトリックの仕業に仕立てたフランクは、彼は偽の保安官だと言って絞首刑にさせようとすしたのです。

去ろうとしたフランクはキルパトリックに呼び止められ、町で殺したのは自分の妻子だと言われました。

フランクらはその場を去り、吊るされたキルパトリックでしたが、グティエレスに救われ、処刑は中止となりましたが牢屋に入れられたキルパトリックは、フランクらを追うグティエレスが、あくまで法に従おうとしていることを確認するのでした。


5)追跡の再開

その後フランクらは、馬の蹄鉄を直すためにある村に寄り、鍛冶屋のエレーロにそれを任せました。

グティエレスに気づいたフランクは、彼を迎え撃ちますが、エレーロが妨害して銃撃戦になり、グティエレスはチューチューを銃撃し、フランクとジェイコブは逃げました。

一方、獄中に死んだ男に祈りを捧げた神父(レイ・モイヤー)を呼び寄せて脅し、看守に扉を開けさせたキルパトリックは逃亡しました。

エレーロにチューチューを連行させたグティエレスは、フランクらを追いますが、フランクに銃撃され、崖から転落してしまいます。

チューチューは、落とした金を拾おうとしたエレーロをレールで殴り、銃を奪い射殺しました。銃声を聴きその場に向かったキルパトリックは、発砲されながら近づき、エレーロの死体を確認しました。

 

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廃墟でチューチューを追い詰めたキルパトリックは、フランクの居場所を聞き出そうとして、彼を底なし沼に突き落としました。

サン・ホセだと言われたキルパトリックは、チューチューを引き上げようとしますが、息子のことは悪かったと言われた瞬間に怒りがこみ上げ、彼を見捨てました。


6)善悪それぞれの選択

無事だったグティエレスに気づいたキルパトリックは、去ろうとするものの、思い直し、引き返して彼を助けました。

ある町で、情婦のマリア(イセラ・ベガ)と揉めたフランクは、ジェイコブからキルパトリックは処刑されず、自分たちを追っていることを知らされ、ジェイコブから別れると言われました。

黒人ということで、今まで侮辱され続けていたジェイコブはフランクと対等に話し、カードで決着をつけようとします。

イカサマをさせる気はないと言うフランクは、1000ドルで希望していた売春宿をやらせるとジェイコブに伝えて金を受け取りました。

グティエレスから、チューチューを連行したエレーロが当局に連絡すると言われたキルパトリックは、二人が死んだことを伝えました。

自分が行くべきだったと言うグティエレスは後悔し、目の前でフランクを殺したら逮捕し、必要なら殺すとキルパトリックに警告するのでした。

”銃を持たない保安官”の噂は聞いていると話すグティエレスは、他人の妻子が殺されてもここまで追ってきたかキルパトリックに尋ねましたが、キルパトリックは、何も答えようとしませんでした。


7)心を通わせる追跡者

サン・ホセでフランクらの馬を見つけたキルパトリックは、グティエレスの手を縛り、酒場にジェイコブがいることを確認します。

酒場に押し入ったキルパトリックは、ジェイコブを射殺してフランクを捜しました。

マリアを脅しフランクの居場所を聞き出そうとしたキルパトリックは、グティエレスに制止されました。

娘に会いに来たフランクは、1時間前に出て行ったと話すマリアは、娘は修道院に預けてあるとキルパトリックに伝えました。

ジェイコブの金を集めて去ろうとしたキルパトリックは、銃を隠し持っていた男に目の前で発砲され、目が見えなくなりました。

キャサリンの名を呼び叫ぶキルパトリックを、隣町の医者に連れて行くようマリアに指示したグティエレスは、一緒に行くと見せかけてその場を去りました。

グティエレスが自分を置いて修道院に向かったことに気づいたキルパトリックは、医者に行くと言うマリアに現金をすべて渡して、修道院に案内させました。

その後、グティエレスに追いついたキルパトリックは、フランクがいると思い発砲します。キルパトリックを殴り倒したグティエレスは、彼のことをケダモノだと言って取り乱すマリアを落ち着かせて、キルパトリックの妻子を殺したフランクこそ悪党だと彼女に言うのでした。

翌朝、殴ったことと発砲したことを互いに謝罪したグティエレスとキルパトリックは話をし、保安官になった理由を訊かれたキルパトリックは、父親を保安官に殺されたのがきっかけだとグティエレスに話しました。

正しい法があるなら、正しい人間がそれを行使するべきだと思ったと言うキルパトリックは、二人でフランクを捕らえたら正しく裁くべきだと考えるグティエレスに、彼は別だと言い張るのでした。

 

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8)最後の決断

出発したキルパトリックは、暫くして視力が回復しますが、見えない振りをしますが、キルパトリックの様子が気になるグティエレスは休息し、サソリを入れたコップに水を注ぎ彼に渡しました。

キルパトリックがそれを飲もうとしたため、グティエレスはそれを制止します。そして、謝罪したグティエレスは、本当に見えないか確認したと言って、サソリをコップに入れたことをキルパトリックに言いました。

しかしながら、隙を見て銃を奪ったキルパトリックは、一人で行くことをグティエレスに伝え、抵抗する彼を殴り倒しました。

グティエレスを連れて行くようにとマリアに指示したキルパトリックは、金もやると言って修道院に向かいました。

娘ルイジに会えたフランクはキスするが、怖がり涙する彼女は去ってしまいます。現われたキルパトリックに発砲したフランクは、建物の中に逃げ込みました。

 

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フランクを追い詰めたキルパトリックは、その場にいたルイジが父を呼んだために、彼女を人質に取り、10秒待つと言いました、フランクは、ルイジが泣く声を聞いて、金を渡すとキルパトリックに言い、出てきたフランクを銃撃したキルパトリックは、とどめを刺さずにルイジを解放しました。


9)エピローグ

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復讐せずにフランクを連行したキルパトリックは、グティエレスに彼を引き渡し、君が正しかったと言いました。

目撃者も死に証拠もないと言うグティエレスは、フランクは釈放されるとキルパトリックに言い、フランクが自由になることをグティエレスに確認したキルパトリックは、それが法だと言われたために、思わず笑ってしまいました。

自由の身である自分に酷い仕打ちをしたと言って、キルパトリックを非難するフランクは、グティエレスに、この件を皆に知らせろと言いましたが、キルパトリックは、フランクを射殺し、逮捕すると言うグティエレスの前に銃を投げ捨てたのでした。

その場から去るキルパトリックに警告したグティエレスは、それを無視する彼を射殺するのでした。

 

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2.俳優陣

B級映画感満載の本作ですが、懐かしく個性的な俳優さんが出演しています。

1)リチャード・ハリス

アイルランドの俳優で、名優というにふさわしく古今の名作の重要な役を演じています。
映画化された『ハリー・ポッター』シリーズの1作目と2作目で魔法学校の校長アルバス・ダンブルドアを演じ、『ハリー・ポッターと秘密の部屋』が遺作となりました。
また、歌手としても知られ、1968年に発表した「マッカーサー・パーク」は全米2位、全英4位を記録しました。

 

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2)ロッド・テイラー

オーストラリア・シドニー出身の俳優で、ヒッチコック監督の『鳥』など二枚目俳優で通してきましたが、ここでは最低の悪役を演じています。しかしながら、娘をかばった父親の顔も見せ、悪役になり切れていませんでした。もっとも髭面で悪役に見せていますが、よく見るとやはり端正な顔立ちは隠せません。

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3)アル・レッティエリ

最も悪役に相応しい役者とも言えるアル・レッティエリが、メキシコの保安官として、あくまで法に従った行動を取ろうとする男を好演しています。『ゴッドファーザー』や『ゲッタウェイ』で悪役スターとして知られた当時の彼を知るファンにとっては必見の作品となりました。

 

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4)ネヴィル・ブランドとウィリアム・スミス

アメリカ合衆国アイオワ州グリスウォルド出身の俳優で、悪役での出演が多く、特に『都会の牙』のギャング役、『やさしく愛して』でのエルヴィス・プレスリーを殺す役どころ、テレビドラマ『アンタッチャブル』のアル・カポネ役、『悪魔の沼』の殺人鬼役が有名です。

 

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日本では1966年にフジテレビ系で『ラレード』として放映され、途中から『西部の三匹』と改題されたウエスタン・テレビドラマのヒット作がありました。番組のムードとしてはコメディ要素が強く、ここでのネビル・ブランドはいかつい顔ながら、優しい目をした、コミカルな役を配されていました。
この時、三匹の1人として、本作ではちょっと頭の弱いスクールボーイを演じているウィリアム・スミスが、タフガイだけどやさしいジョー役で絶妙にキャスティングされていました。

 

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5)ポール・ベンジャミン

本作では、いかさまギャンブラーでしたが、『アルカトラスからの脱出』でクリント・イーストウッド相手に牢名主もどきの影の支配者を静かな迫力で演じていました。

 

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3.まとめ

銃を持たない保安官のお話で、銃器規制問題か思えば、結局、銃容認かと訳の分からない本作ですが面白い俳優ばかりで、それだけで楽しめました。

製作当時はアメリカンニューシネマの影響でBad Endが流行していました。なので今時の生温い作品と違う非情なラストが泣けてきます。