映画『居酒屋兆治』女は、こんな男に惚れてはいけません?!


この映画『居酒屋兆治』は、山口瞳の長編小説を原作として、1983年に降旗康男監督、高倉健主演により映画化されました。

目次

 

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1.ストーリー

1)プロローグ

藤野伝吉(高倉健)は函館の街外れで、小さな居酒屋「兆治」を妻・茂子(加藤登紀子)と共に営んでいました。店主である伝吉は、もっぱら店の名前の兆治と呼ばれています。

かつて造船所で働いていた兆治は、オイルショックの際に同僚社員の首切り役を命ぜられたことに反発し、会社を辞めて店を開きました。

 

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2)馴染み

兆治は無口で無骨な男ですが気持ちはまっすぐで、そのことを店の馴染み客はよく知っており、店は繁盛しています。

馴染み客には幼馴染みの岩下(田中邦衛)や、会社時代の同僚・有田(山谷初男)、有田の部下・越智(平田満)、酒癖の悪いタクシー会社社長・河原(伊丹十三)などがいました。

「兆治」の店の向かいには小料理屋「若草」があり、こちらも店主・峰子(ちあきなおみ)がカラオケで客を集めて繁盛しています。


3)ほろ苦い過去

兆治の初恋の女性は神谷さよ(大原麗子)という年下の女性で、兆治はさよと思い合っていました。しかしある時さよに、牧場主・神谷久太郎(左とん平)との縁談が持ち上がり、さよの幸福を願った兆治は身を引きます。

さよは神谷と結婚した後も兆治が忘れられませんでした。


4)火事

ある夜、さよの不注意で神谷の牧場が火事に遭います。さよはそのまま逃亡しました。

その事件の話題も下火になった頃、兆治の背に「あんたが悪いのよ」という声がかかります。さよの声でした。

 

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常連客の秋本(小松政夫)の妻が扇風機の風に当たりすぎて死にました。酔って秋本を責める河原に我慢できず殴った兆治は、警察に拘留され取り調べを受けます。

しかし取り調べの内容は河原を殴ったことではなく、主にさよのことでした。

警察は、兆治とさよの関係に目をつけて、神谷牧場の火事は、兆治とさよの共謀による放火事件ではないかと疑っていたのです。さよはまだ行方不明のままでした。


5)ススキノへ

やっと釈放された兆治を、妻・茂子と幼馴染み・岩下が迎えます。

そんな折、若草の店主・峰子が「さよをススキノで見かけたという男がいる」と言いました。

兆治は昔のさよの写真を引き伸ばし、ススキノの繁華街を聞きこみに回ります。

そこで兆治は有田の部下・越智と偶然出会い、さよが現在はサリーと名乗るホステスをしていることを知りました。越智はサリーに夢中になり、結婚を申し込んでいました。

 

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さよの部屋を訪ねた兆治は、瀕死のさよを見つけました。さよは酒がたたり、食道動脈瘤の破裂を起こしていました。さよはそのまま兆治の胸の中で息を引き取ります。

兆治は警察に、さよが見つかったことを告げました。


6)エピローグ

さよの葬儀が営まれます。葬儀は青年団により、明るく陽気にとりおこなわれました。

失意に暮れる兆治を、妻の茂子はやさしくフォローします。

その夜、兆治は明かりを消した居酒屋でさよとのツーショット写真を燃やしました。


2.よもやま話

1)大原麗子

ヒロイン大原麗子の存在が忘れ難いのです。女優としては代表作には恵まれませんでしたが、サントリー・レッドのイメージ・キャラクターとして男性ファンをトリコにした待つ女で一世を風靡し、私生活では2度の結婚もうまく行かず、晩年は病と闘い62歳で孤独死したのが話題となりました。
この役がとても気に入っていたといい、当時37歳で薄幸の女を素で演じていました。

 

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2)絆

本作の準備中に、高倉健黒澤明監督に『乱』の出演オファーがありました。降旗監督との約束を優先して、直々に出演を断ったというほど義理堅いひとでした。井川比佐志が演じた「鉄修理」役は健さんのイメージでできたことを知ると、俳優として歩む道が違っていたのかもしれません。降旗監督との男同士の絆は、『駅/STATION』(1981年)から、最後の主演作品『あなたへ』(1912年)まで30年も続いてました。

 

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3)モデル

舞台となるモツ焼き屋「兆治」のモデルになったのはかつて東京都国立市南武線谷保駅の近くにあった居酒屋「文蔵」です。山口瞳の近所の行きつけの店で、山口が「週刊新潮」に連載を続けた名物コラム『男性自身』シリーズの中にもたびたび登場しました。
山口は「家の近くに、赤提灯の店がある。毎晩、そこへ飲みに行って客の言葉を記録し、日記ふうの小説が書けないだろうかと、考えたことがある」と書いていて、もともと物置だったところを借り受け「滑稽なくらいにちいさい」店だったそうです。

店名の由来はプロ野球選手でロッテオリオンズのエースだった村田兆治で、主人公の藤野英治は高校時代に投手だったことで、村田兆治への憧れから店の名を「兆治」にしたという設定です。野球ファンの山口瞳が、村田の「マサカリ投法」の異名をもった全力投球に魅了されていたことが背景にあったといわれています。


4)その兆治

映画公開から7年後の1990年10月13日、店名のモデルになった村田兆治の最後の公式戦登板を見た高倉健が、村田の引退劇に感銘を受け、村田と面識はなかったのですが、花束と手紙を持って村田の自宅を訪ねました。
しかし村田は不在で、車の上に花束と手紙を置いて帰りました。夜、村田が自宅に帰り封筒を開けると「長い間、本当にお疲れさまでした。高倉健」と書かれてあり、感激したそうです。

 

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5)映像化

この原作小説『居酒屋兆治』は、1992年に、フジテレビによってテレビドラマ化され、兆治役は映画渡辺謙でした。さらに、2020年にNHK遠藤憲一主演によりテレビドラマ化されています。

 

 

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高倉健  加藤登紀子  ちあきなおみ  大滝秀治  小松政夫

 


3.まとめ

昭和ですね。男の美学でしょうか。黙っている男がもて囃された時代です。今となっては、陳腐とも言えなくもないかもしれませんが、何度も甦ってくるのは、どこかに男の琴線に触れるところがあるのでしょう。