映画『ガン・ファイター』異色でロードムービー的な西部劇です?!


この映画『ガン・ファイター(The Last Sunset)』は、監督ロバート・アルドリッチ、脚本ダルトン・トランボで、カーク・ダグラスロック・ハドソンの共演による、1961年の異色西部劇です。
1957年に発表された、ハワード・リグスビーの小説”Sundown at Crazy Horse”を基に制作された作品です。

目次

 

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1.紹介

一般的にはアルドリッチの失敗作と見なされている本作ですが、失敗作と見なされるのも理解できる異色の西部劇で、1000頭もの牛を運ぶロングドライブにもかかわらず、カウボーイレギングスを履いているものいないし、確かに何かと不満も多いのですが、マリアッチで歌やダンスを組み込むなど、アルドリッチのやたらめったら面白い娯楽性はきちんと担保されていました。

クライマックスにガンファイト、ではありますが、三角関係のメロドラマを、キャトルドライブの道中での出来事を物語るというロードムービー的な展開になっています。
何よりどこか不可解さを残す本作には謎めいた魅力があり、観終わった今もおおいに頭を悩ませます。

また、邦題の『ガン・ファイター』では、ガンマン物を思い浮かべてしまい、原題の『The Last Sunset』の方が、はるかに、哀愁や詩情を帯びて本作にふさわしく思います。


2.ストーリー

1)プロローグ

物語の舞台は西部開拓時代のメキシコ。無法者オマリー(カーク・ダグラス)が昔の恋人ベル(ドロシー・マローン)と会うため、ある牧場を訪れることから物語は始まります。ベルは人妻となっていましたが、オマリーはベルを取り返そうと目論んでいました。

オマリーはようやくベルがいる牧場にたどり着きますが、ベルは初めて会ったような他人行儀な態度を取ってきました。それとは対照的に、ベルの娘でもうすぐ16歳になるメリッサ(キャロル・リンレイ)は、母親の元恋人ということを知らないまま、大人の魅力を持つオマリーに一目惚れをしました。オマリーもベルの若い頃によく似たメリッサに紳士的な態度をとりました。

 

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2)幼馴染

ベルの夫で牧場主のブレッケンリッジ(ジョセフ・コットン)はこの日不在でしたが、オマリーは泊めて欲しいと言い出し、ベルはその求めに応じて部屋を用意しました。その夜、オマリーはベルと二人きりになると、「もう君を離さない」と口にしました。二人は幼なじみであり、オマリーはその昔ベルが黄色いドレスを着たときのことを語り出しました。しかし、ベルは別の記憶を思い出していました。そのとき、別の男の子がベルをダンスに誘うと、嫉妬深いオマリーはその男の子を殺す勢いで殴りつけたのです。オマリーはもう自分が別人になったと語りますが、ベルは黄色いドレスをすでに燃やしたことを明かし、オマリーの思いを拒みました。


3)ロングドライブへの誘い

その翌日、ブレッケンリッジが牧場に戻ってきました。ブレッケンリッジは南軍として南北戦争を戦った経歴を持つ酒好きの年寄りでした。ブレッケンリッジはオマリーを気に入り、テキサスのクレイジー・ホースまで牛の群れを運ぶのを手伝って欲しいと頼みました。

 

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すると、オマリーはもう一人手伝える「腐れ縁」の男がいると言い出し、そろそろその男がここに現れると返答しました。ブレッケンリッジはそんなオマリーを頼もしく思いますが、オマリーが提示してきた条件を聞き驚きました。一つは、牛の5分の1をもらうこと、もう一つは、妻ベルをもらうことでした。人材不足に困っていたブレッケンリッジは一つ目の条件は了承したものの、二つ目の条件については真剣に受け止めませんでした。


4)追ってきた男

それから間もなく、オマリーの予想通り、腐れ縁の男は牧場に現れました。男の名前はストリブリング(ロック・ハドソン)、アメリカの保安官であり、殺人の罪でオマリーを追跡していました。ストリブリングは逮捕状を持っていましたが、オマリーはそれがメキシコでは無効であることを知っていました。そこで、オマリーは奇妙な提案をしました。テキサスまでの牛追いの旅に同行しろというのです。ストリブリングはオマリーの言葉に困惑しながらも、国境を越えたら逮捕できると考え、この話に乗ることを決めるのでした。

 

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5)優しい人殺し

ストリブリングが仲間に加わったおかげで、牛追いの旅の準備は着々と進んでいきました。そんな中、ストリブリングはオマリーがベルに好意を持っていることに気づきました。ある夜、部屋に三人だけになったとき、ストリブリングはベルにオマリーが人殺しであること、女に見境がないことを教え、注意するよう忠告しました。

激しい怒りを覚えたオマリーは、頭を冷やすために外に出て行きました。すると、そこにメリッサが現れ、人殺しなのかとオマリーに尋ねてきました。オマリーは人を殺したことを認めましたが、メリッサはオマリーを責めようとしませんでした。オマリーはそんなメリッサとの会話を楽しみ、メリッサを子どものように扱いました。メリッサはオマリーのそんな態度に不快感を覚え、怒ってしまいました。

その後、オマリーは侮辱するような発言はやめて欲しいとストリブリングに頼みに行きました。すると、ストリブリングは驚きの事実をオマリーに明かしました。オマリーが殺した相手は、ストリブリングの妹の夫ジミーだったというのです。ストリブリングが国境を越えてまで執拗に追跡を続けてくることに疑問を持っていたオマリーは、ようやくその理由を理解しました。


6)出発そして死

それからすぐ、ブレッケンリッジたちの牛追いの旅は始まり、炊事担当のベル、カウボーイたちの手伝いとしてメリッサも同行しました。ストリブリングはリーダーシップをとり、ベルやメリッサにも慕われるようになっていきました。

一行がこの日の野営地を定めると、ブレッケンリッジはさらなる人手を集めるため、近くの町へと出かけて行きました。ところが、なかなか帰ってこなかったため、オマリーもストリブリングは町に様子を見に行くこととなりました。

町に着いたオマリーとストリブリングは、ブレッケンリッジが酒場で二人の男に絡まれている光景を目撃しました。この男たちは南北戦争でブレッケンリッジと同じ部隊におり、ブレッケンリッジが逃亡したことを非難していました。オマリーとストリブリングは仲裁に入ってブレッケンリッジを連れて帰ろうとしますが、男の一人が銃をいきなり抜きました。オマリーたちはすぐに応戦して男を射殺しましたが、男の銃弾はブレッケンリッジに命中してしまいました。

翌日、ブレッケンリッジの遺体を埋葬すると、一行は牛追いの旅を再開、ベルとメリッサは暗い表情を浮かべていました。オマリーたちはブレッケンリッジが喧嘩の仲裁をして殺されたと説明していましたが、夫の臆病な性格をよく知っているベルはそれが嘘だと見破っていました。


7)大喧嘩

その夜、ストリブリングはベルを励まそうと親しげに接し、ベルは少しずつストリブリングに惹かれ始めました。オマリーはその光景を忌々しく思い、その腹いせにストリブリングの妹を侮辱し始めました。ストリブリングはオマリーに殴りかかり、二人は大乱闘に及びますが、ベルが仲裁に入ると喧嘩はすぐに収まりました。その後、ストリブリングは重大な事実をオマリーに教えました。ジミーが殺された3日後に妹は首を吊って自殺したというのです。オマリーはこの言葉に黙り込んでしまいました。


8)あやしい3人

その翌朝、一行が出発の準備をしていると、3人組のガンマン、ホッブスジャック・イーラム)、エド(ネヴィル・ブランド)、キッド(ラッド・フルトン)が近づいてきました。3人はブレッケンリッジから雇われたといい、ベルは人手不足を補うため3人の同行を了承しました。

 

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オマリーは3人がベルを嫌らしい目で見ていることに気づき、嫌な予感を抱きました。オマリーの予感は的中しており、ホッブスたちの目的はベルを誘拐し、高く売り払うことでした。オマリーは3人に厳しい態度を取り、必要に応じて銃を抜くこともためらいませんでした。

 

9)それぞれの求愛

その日の夜、オマリーはベルと二人きりで話す時間を得て、ロマンティックな言葉を言ってベルを微笑ませました。「100年たっても、俺の目に映る君は黄色いドレスのかわいい娘だ」…オマリーはそう語りかけますが、ベルは「今の私で愛されたい。私は子どもじゃない」と悲しげに返答しました。

その翌朝、ベルはストリブリングと二人きりになり、悲しい過去を打ち明けられました。ストリブリングは妻子を先住民に殺されたというのです。その後、ストリブリングはベルにプロポーズし、ベルがオマリーとどのような関係にあるのか教えて欲しいと言い出しました。しかし、ベルは返事をしようとはしませんでした。

 

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10)先住民来る

その後、一行が出発すると、オマリーは先住民の戦士数人が近くにいることに気づきました。オマリーは先手を打とうと戦士の一人を射殺しますが、この攻撃は先住民の怒りを買うことになってしまいました。そこで、ストリブリングは先住民との交渉に単身赴き、その結果、事態を平和的に解決してみせました。ストリブリングはオマリーの取り分である5分の1の牛を先住民に差し出したのです。オマリーはストリブリングのやり口に不機嫌になりますが、オマリーの命がけの行動のおかげで一行は旅を再開することが可能となりました。


11)母娘の危機

その後、一行はひどい砂嵐に襲われ、視界不良になってしまいました。そんな中、ストリブリングが沼にはまるアクシデントに見舞われました。オマリーは意地の悪い言葉をかけながらもロープを使ってストリブリングを救出しますが、その裏ではベルたちが危険な目に遭っていました。この混乱に乗じて、ホッブスら3人組がベルとメリッサを誘拐しようとしたのです。

オマリーがメリッサを救出している間、ストリブリングはベルを保護しました。ベルは自分の身を守るため、ホッブスを射殺したといい、ひどく落ち込んでいました。ストリブリングはそんなベルを抱きしめ、慰めました。この出来事がきっかけで二人の仲は発展し、愛し合うようになりました。オマリーはそんな二人の姿を木陰からただ眺めていました。


12)メリッサの恋心

その後、牛追いの旅は順調に進み、一行は国境付近にまで到達しました。その日の夜、一行は最後のメキシコの夜を楽しもうとささやかな宴を開催しました。そんな中、メリッサは黄色いドレスを着て現れました。メリッサはベルがかつて着ていたドレスを内緒で持ってきていたのです。オマリーがその美しさに驚いていると、ドレスにほつれがあることにふと気づきました。「男の子にもらった桜草の花飾りを、嫉妬した別の子が引きちぎったの」…メリッサがすかさずそう説明すると、オマリーはいつか同じ花飾りをメリッサに贈ることを約束しました。

 

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オマリーはメリッサの求めに応じ、歌を歌いながら短い間ダンスを踊りました。「黄色いドレスのかわいい娘 いつになれば僕に心をくれる?」…オマリーはロマンティックな歌を歌い、メリッサはそんなオマリーに見惚れていました。

その後、オマリーが見張り番をしていると、メリッサがオマリーに愛の告白をしてきました。メリッサはストリブリングがベルのそばにいてくれることに安心し、自分はオマリーとの愛に生きようと考えたのです。オマリーは若者と恋愛すべきだと諭しますが、メリッサは自分の思いを諦めるつもりはありませんでした。オマリーはその熱意に負け、メリッサにキスをしました。


13)驚愕の告白

その翌朝、一行は国境の川を越え、テキサス入りしました。そのとき、オマリーとストリブリングは決着をつけるため、日暮れに決闘する約束をしました。

決闘の時間が迫る中、ベルは決闘しないで欲しいとストリブリングに懇願しました。ストリブリング自身、オマリーを旅をともにした仲間とみなしていましたが、このまま見逃すこともできませんでした。

ストリブリングが考えを変えるつもりがないとわかると、ベルはオマリーの元に行き、逃げて欲しいと頼むとともに、メリッサを巻き込まないで欲しいと口にしました。オマリーはメリッサを真剣に愛していることを伝えますが、ベルが問題にしているのは別の点でした。メリッサはベルとオマリーの間にできた子どもだというのです。オマリーはその事実に驚き、ベルが嘘をついたと決めつけ、ベルの顔を叩きました。

 

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その後、オマリーはメリッサに会いに行き、今日一緒に旅立とうと言葉をかけました。メリッサはこの言葉に喜びますが、その一方で、オマリーが意味深な言葉を口にしたことに違和感を覚えました。自分が死んだら新しい恋人を探して欲しいとオマリーはメリッサに頼んだのです。


14)決着の時

その後、オマリーはメリッサに荷物を取りに行くとうそをついて、決闘の場に向かい、ストリブリングと対峙しました。オマリーとストリブリングは何も語らずに徐々に距離を詰め、銃を抜きました。

 

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次の瞬間、倒れたのはオマリーでした。ストリブリングがオマリーの銃を調べると、愛用のデリンジャーの薬室は空だったことが判明しました。


14)エピローグ

銃声を聞いたベルとメリッサが現れました。メリッサは横たわるオマリーの髪を撫で、その死を悲しみました。すると、カウボーイの一人(レジス・トゥーミー)がオマリーから預かったという包みをメリッサに渡してきました。

その中には、桜草の小さなブーケが入っていました。「約束した花ね」…メリッサはそう語り、オマリーに寄り添い続けました。


3.四方山話

1)カーク・ダグラス

カーク・ダグラスの個性が際立っていて、軽快な身のこなし、殺人犯として登場するものの、その人間味のあるキャラクター、歌を口ずさんだりもするユーモアを含めた演技、哀愁漂うラストも印象深く、笑・怒・哀の表情を見せています。

おまけに主題歌『黄色いドレスの可愛い娘 (Pretty Little Girl In The Yellow Dress)』 、挿入歌『ククルクク・パロマ(Cucurucucu Paloma) 』まで披露しています。


2)監督と脚本家

監督は赤狩りを避けてヨーロッパへと渡っていたところを呼び戻された、『何がジェーンに起ったか?』のロバート・アルドリッチ。スタジオが求めたのは彼の傑作『ヴェラクルス』に比類する成功だったのでしょう。

脚本はカーク・ダグラスと『スパルタカス』で組んだダルトン・トランボで、『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』で映画化までされたハリウッド・テンの筆頭格にして不屈の男です。おそらくはアルドリッチとも共鳴する部分があったと思われます。

アルドリッチとトランボは、自らの正直さを罪とされた赤狩りの犠牲者です。ゆえに彼らは、ただ純粋に人を、自由を、芸術を愛する、欠点も多いが魅力的な人物のオマリーに託したのかも知れません。


3)赤狩りとの関連

監督アルドリッチと脚本トランボに共通する重大要素、「赤狩り」について、ハリウッド・ブラックリスト (Hollywood Blacklist) は、1940年代後半から1950年代中期ごろ、マッカーシズムによる赤狩り旋風が吹き荒れる中、その中心的機関であった下院非米活動委員会 (HUAC) が取り調べを行なうため、ハリウッドを中心とする娯楽産業で活躍していた映画監督、脚本家や映画俳優などの芸能人の中で人生のある時期に共産党と関連があったとして列挙した人物のことで、そのうち召還や証言を拒否して議会侮辱罪で有罪判決を受けた主要な10人をハリウッド・テン (Hollywood Ten) と呼びました。

そしてそのハリウッド・テン の1人がダルトン・トランボで、更には、赤狩りのメインステージHUACの主任調査官がストリップリング(Stripling)という名だった事実が付け加えられます。


4)脇役

ベルの夫で牧場主役の名優ジョセフ・コットン、途中から旅に加わるお馴染みの悪役ジャック・イーラム、ネヴィル・ブランド、牧童頭役レジス・トゥーミーなど、B級映画テイストにかかわらず豪華共演者も注目です。

 

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4.まとめ

自分に正直に生きてきた夢見がちな男が現実的に生きることを強要され、ついにはその現実なるもののために自らを犠牲に捧げる物語、それがこの奇妙な西部劇『ガン・ファイター』の真実の姿なのかもしれませんが、今なお不可解な謎は残ります。

 

 

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