映画『勝利への脱出』サッカーファンが泣いて喜びそうな脱走映画です?!


この映画『勝利への脱出(Escape to Victory)』は、ジョン・ヒューストン監督、による1981年のアメリカ映画です。

目次

 

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1.紹介

第二次世界大戦の最中、ドイツの捕虜となっていた連合軍兵士とドイツ代表との間で行われることになったサッカーの国際試合と、その背後で進められる脱走計画をテーマにしています。

この物語は、1942年8月に第二次世界大戦下のウクライナで行われ、ディナモ・キエフの選手を中心に編成された「FCスタルト」対ドイツ空軍の兵士により編成された「フラッケルフ」との親善試合(死の試合)をモデルとしています。

主要キャストは、シルヴェスター・スタローンマイケル・ケインマックス・フォン・シドーですが、サッカーの王様ことペレや、1966年FIFAワールドカップ優勝メンバーのボビー・ムーアといった往年のスター選手や、1978年FIFAワールドカップ優勝メンバーのオズワルド・アルディレスといった現役選手達が多数出演しました。

ペレは作品内のサッカーシーンにおいてテクニカル・アドバイザーを担当しました。これらのスター選手の他に連合国軍チームにはイプスウィッチ・タウンFCの選手、ドイツ代表チームにはニューヨーク・コスモスの2軍選手達がエキストラとして出演しています。


2.ストーリー

1)プロローグ

物語の舞台は第二次世界大戦下、ナチスの捕虜収容所です。ある日、ナチス将校のフォン・シュタイナー(マックス・フォン・シドー)が収容所を見回ったとき、仲間にサッカーを教えるイギリス人捕虜の中年男性と出会いました。

 

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元ドイツ代表のサッカー選手であるシュタイナーは、その男の名前を聞いて驚きました。男の名前はジョン・コルビー(マイケル・ケイン)といい、イングランドのサッカーチーム、ウェストハム・ユナイテッドでかつてプレーしていた名選手だったのです。

シュタイナーはコルビーの主導で捕虜たちがサッカーの練習に励み、試合を楽しんでいることを知り、これを国威発揚に利用することを思いつきました。それは、捕虜たちのチームとドイツチームのエキシビジョンマッチを開催する、というものでした。


2)親善試合

その後、再びシュタイナーはコルビーの元を訪れました。敵国同士ながら、シュタイナーとコルビーはこの戦争が過ちだという考えでは一致しており、シュタイナーは「国家の争いもサッカーでけりがつけばな」とコルビーに本音を漏らしました。

シュタイナーは本題に入り、ドイツ陸軍チームと試合をしないかとコルビーに提案しました。コルビーは試合をする条件に、チームが寝食を共にすること、栄養のある食事とビールを提供することを要求、シュタイナーはその求めに応じ、上官を説得しました。

シュタイナーの上官がこの試合開催に賛同したのは、プロパガンダ効果を見込んだためでした。サッカーのドイツ代表は一度もイギリスに勝利したことがなく、この試合でドイツ軍チームがイギリス人を中心とする捕虜チームに勝つことに大きな意義を見出したのです。


3)チーム編成

コルビーは早速代表選手を選抜、若手を中心に続々と有力な兵士たちを集めました。そんな中、ロベルト・ハッチ(シルヴェスター・スタローン)というカナダ軍所属のアメリカ人兵士が代表入りしようとアピールしてきましたが、コルビーはハッチを代表入りさせるつもりはありませんでした。ハッチがサッカーのルールをろくに理解しておらず、乱暴なプレーばかりをすることが原因でした。

 

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そんなある日、コルビーはウォルドロン大佐(ダニエル・マッセイ)ら捕虜の士官たちに呼ばれ、脱走計画に協力するよう求められました。ドイツ軍との試合の最中に脱走しろ、というのです。しかし、コルビーは仲間が危険にさらされることを恐れ、協力を拒否しました。ウォルドロンたちの命令を受けて脱走を試みた兵士がドイツ軍に殺されるケースが起きていることに、コルビーは問題を感じていたのです。

その後もコルビーは代表の選抜を続け、その中でルイス・フェルナンデス(ペレ)という逸材を見つけ出しました。トリニダード出身の黒人兵士のルイスは幼い頃からサッカーに親しんでいたと語り、自由自在にボールを操ってみせました。コルビーはルイスの代表入りを即決しました。


4)開催地

代表選抜が進む中、コルビーは突然シュタイナーに呼び出されました。当初の予定ではドイツ陸軍チームとコルビーがいる収容所の捕虜選抜チームとの試合でしたが、それが大幅に変更され、ドイツのサッカー代表チームと各占領地の捕虜からなる連合軍チームとの試合になるというのです。それも、開催地はパリのコロンブ競技場だといいます。

すると、そこにドイツ代表を率いるミュラー(ゲイリー・ウォルドホーン)が現れました。コルビーとミュラーは面識があり、二人は笑顔で再会の握手をしました。ミュラー立ち合いの下、シュタイナーは各地の収容所にいる捕虜のリストを見せ、有力な選手をピックアップするようコルビーに指示しました。しかし、このリストはコルビーが望む選手すべてを載せていませんでした。コルビーはポーランドチェコの世界的な選手を呼びたいと望みますが、シュタイナーは難色を示しました。この当時、ナチスは東欧で捕虜の虐待を行っており、選手の生死すら不明な状態だったのです。「紳士として、勝つ可能性を与えるのが君の義務だ」コルビーが鋭い眼差しでそう言うと、シュタイナーは努力すると返答しました。

 

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5)脱走計画

一方、ウォルドロンたちはパリでの試合が見せ物になると批判し、独自で脱走計画を進めました。ウォルドロンたちが今回脱走させようとしていたのは、ハッチでした。この決定を受けて、ハッチはサッカーの練習を投げ出し、脱走計画に集中しました。偽造の身分証明書の用意も既にできており、あとは首尾よく脱走のタイミングを見計らうだけでした。ところが、その直後にハッチは思わぬトラブルに見舞われました。見張りを怠ける警備兵が異動したうえ、警備兵の人数が増やされたのです。その理由は、コルビーら連合軍チームが共同の部屋に移されることに伴う警備体制の見直しでした。

怠け癖のある警備兵が連合軍チームの見張りにつくと知り、ハッチはすぐにトレーナーとしてチームに入れて欲しいとコルビーに頼みに行きました。しかし、コルビーはハッチの頼みを断り、ハッチが脱走のためにチームに入ることが必要だと説明しても態度を変えませんでした。コルビーが「君を死なせるわけにいかない」と言い聞かせると、ハッチは「俺の命だろ」と反論しました。この言葉でハッチの覚悟を知ったコルビーは、ハッチのチーム入りを許可しました。


6)計画変更

その後、各地の捕虜収容所から選手が集まり、栄養のある食事も提供されるようになりました。それから数日後、ついにコルビーが待ち望んだ東欧の選手5人が到着しますが、彼らはひどく痩せ衰え、不衛生な状態にあり、長い間劣悪な環境下にいたことは明らかでした。この5人は身体的にも精神的にも弱り切っており、ただ黙って与えられた食事を食べていました。

このとき、コルビーたちはウォルドロンたちから試合出場は敵のプロパガンダに貢献するだけだと批判され、ロンドンでも問題になっていると注意を受けていました。しかし、コルビーと選手たちは東欧の選手たちを見て、彼らのためにも試合を放棄しないことを決めました。もし試合を放棄してしまえば、東欧の選手たちはまた元の場所に追い返されることとなっていたからです。

その後もチーム練習をしていく中で、コルビーとルイスはハッチがゴールキーパーとして筋がいいことに気づきました。ハッチは本格的にキーパーの練習をするようになり、実力をつけていきました。

 

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ちょうどその頃、ハッチはウォルドロンたちから脱走計画に変更が出たことを知らされました。脱走した後、パリのレジスタンスと接触し、パリで試合をするコルビーらチーム一行の脱走の支援を要請しろというのです。それは危険極まりない任務でしたが、ハッチは渋々承諾しました。

それから間もなく、ハッチは脱走計画を実行、コルビーらチームメイトの協力とサボり癖のある警備兵のおかげで計画は成功しました。


7)捕虜収容所への帰還

その後、ハッチは一般市民になりすましてパリ入りし、レジスタンスと接触を図りました。サッカーの試合に臨む捕虜たちを脱走させて欲しいとハッチが頼むと、レジスタンスは市街戦になる可能性が高いという理由で協力を拒否しました。ところが、試合会場がパリのコロンブ競技場と知ると、レジスタンスは態度を変えました。パリの下水道は競技場の真下で分岐しているといい、下水道を脱走経路にすれば希望があるというのです。

レジスタンスたちは早速脱走計画に向けて動き出し、その間、ハッチはルネ(キャロル・ロール)という若い未亡人の家に匿われることとなりました。ルネは戦争で夫を亡くしており、幼い息子フランソワと暮らしていました。ルネはこの戦争で大勢の仲間が命を落としていることに心を痛めており、出会ったばかりのハッチのことも心配していました。そんなルネにハッチが「俺は孤児のろくでなしだ」と言うと、ルネは少しだけ微笑みました。

その後、レジスタンスが下水道を確認した結果、競技場のビジター用更衣室に脱出用の穴を通せることが判明しました。そこで、この重要な情報をコルビーたちに伝えるため、レジスタンスはハッチにドイツ軍に捕まり、捕虜収容所にもう一度入るよう求めました。ハッチはこの案に反対し、同じ捕虜収容所に入れない可能性を指摘しますが、見せしめの目的で同じ捕虜収容所に入れられる可能性は高いと返答されました。ハッチはやむなくレジスタンスの案に乗ることを決め、「くそサッカーめ」とつぶやきました。その後、ハッチはすぐにドイツ軍に捕まり、コルビーたちのいる捕虜収容所に戻され、営倉の独房に入れられました。


8)偽装骨折

それからすぐ、コルビーはウォルドロンたちからチームの脱走計画を知らされ、レジスタンスからのメッセージを聞くためにハッチを営倉から救い出すのに協力して欲しいと求められました。しかし、コルビーはチームの脱走を拒否し、チームの練習に専念すると冷たく返答しました。ウォルドロンたちの部屋を去った後、コルビーはハッチのいる独房に目をやり、「救い難いバカめ」とつぶやきました。

それから時が経ち、試合開催を直前に控えたある日、コルビーとウォルドロンはシュタイナーに呼び出されました。そこで、コルビーは突然ゴールキーパーが骨折したため、ハッチを試合に出したいとシュタイナーに求めました。シュタイナーはゴールキーパーの骨折を軍医が証明するならハッチの同行を許すと発言、それからすぐ、コルビーはゴールキーパーのトニーに同意を得た上でトニーの腕を骨折させました。


9)満員の競技場

そして試合当日、ハッチを加えたチームはコロンブ競技場に到着、レジスタンスの思惑通り、コルビーたちにはビジター用の更衣室が提供されました。競技場にはドイツ軍の将校の他、ルネやフランソワを含む大勢のパリ市民が駆けつけ、超満員となっていました。シュタイナーはフェアな試合が行われることを期待していましたが、ドイツ代表チームに有利な判定をする審判が担当することを上官から知らされ、ショックを受けました。

その後選手が入場、いよいよ試合が開始されることとなりました。試合が始まる直前、フランソワが小さな花束をハッチに渡し、ハーフタイムに脱走を決行することを伝えました。まさにこのとき、地下ではレジスタンスがビジター用更衣室の浴槽下の掘削を行っていました。ハッチはすぐにチームメイトにレジスタンスからのメッセージを伝え、ハーフタイム中の脱走がチーム内で共有されました。


10)前半戦

その後始まった試合は、ドイツ軍の上層部が望むような試合展開となりました。ドイツ代表は早々と先制点を取り、その後も審判を味方につけて試合を有利に進め、4-0とコルビーら連合軍チームを圧倒しました。しかし、そんなドイツ代表を称賛しようと拍手する市民は誰もいませんでした。

そんな中、連合軍チームのエース、ルイスがラフプレーを受けて負傷、一時的にピッチを離れる事態が発生しました。なんとか10人でドイツ代表の猛攻を凌ぐ中、連合軍チームはパスを確実に繋ぎ、1点を返すことに成功しました。前半終了間際の得点に、コルビーたちだけでなく、観客の市民たちも大歓喜しました。

その後ハーフタイムになり、コルビーたちが更衣室に戻ると、浴槽に穴が開き、そこからレジスタンスが顔を出しました。一時は下水道に出たコルビーたちでしたが、「勝つ望みはある」という声が一部の選手たちの間から出始めました。

コルビーはこの声を聞いて考えを改め、後半も戦うことを決断、脱出しようとするハッチを説得しました。負傷中のルイスからも「今逃げたら試合に負けるだけじゃない」と声をかけられ、ハッチは後半戦を戦うことを決めました。ハーフタイム終了後、ピッチに再び現れたコルビーたちの姿にルネやウォルドロンは驚きの表情を浮かべました。


11)後半戦

後半戦が始まって間もなく、コルビーたちは速攻で2点目を決め、その後も攻め続けた末に後半30分、3点目を入れました。コルビーたちは時に華麗なプレーを見せ、ゴールキーパーのハッチもドイツ代表の猛攻をよく凌ぎました。

その後、連合軍チームは再びゴールネットを揺らしますが、このゴールは審判にノーゴールと判定されてしまいます。その直後のことでした。ルイスがまだ傷が痛む中、コルビーにもう一度プレーしたいと直訴し、再びピッチに立つこととなりました。このとき、試合終了まであと4分でした。

ルイスは傷を庇いながらのプレーとなりましたが、コルビーたちはボールを繋ぎ、ゴール前にいたルイスにクロスボールを送りました。そのとき、ルイスはオーバーヘッドキックをし、ボールはゴールネットを揺らしました。

 

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シュタイナーはこのゴールの美しさに魅せられ、大勢のドイツ将校に囲まれる中、立ち上がって拍手をしました。シュタイナーは上官ににらまれることも気にせず、連合軍チーム、パリ市民とともにルイスのゴールを称えました。このゴールに勇気づけられた市民たちは「連合軍に勝利を!」と叫び、熱気は最高潮に達しました。


12)ペナルティーキック

ところが、試合終了まで残り1分となったとき、ドイツ代表チームにペナルティーキックが与えられることになりました。そのとき、自然と市民たちは「ラ・マルセイエーズ」の合唱を始め、ゴールを守るハッチを見守りました。市民たちの合唱が終わり、ピッチが静まり返る中、ハッチは相手キッカーをしばらくの間にらみつけました。ハッチの迫力に押されたキッカーが放ったシュートは、ハッチに見事キャッチされました。

 

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13)エピローグ

その次の瞬間、市民たちはピッチの中になだれこみ、選手たちの姿は群衆の中に飲み込まれていきました。その混乱の中で、市民たちは自分たちの服や帽子を着させて選手たちを一般市民に変装させました。そのまま市民たちは選手たちとともに競技場を去り、こうしてコルビーやハッチたちは脱出を成功させました。


3.四方山話

1)史実

本作のモデルとなった試合の史実では、2試合が行われ5-1、5-3と「FCスタルト」の勝利に終わりますが、面目を潰されたドイツ軍は報復としてスタルトの選手達をバビ・ヤールなどの強制収容所(スィレーツィ強制収容所)へ送り、多くの選手達が処刑されています。

この試合をモデルとした映画にはハンガリーで1962年に公開された『地獄のハーフタイム』があり、こちらの作品は史実の結末に近い内容となっています。


2)名プレーヤー

ペレを筆頭に有名サッカー選手が新旧とりまぜて登場し、妙技をくりひろげています。宣伝では王様ペレのバイシクル・シュートが大いに喧伝されました。

しかしながら、引退していたペレやボビー・ムーアら往年の名選手より、目を惹くのは当時現役バリバリの代表選手たちのプレイでです。中でもアルゼンチン代表(日本では元清水エスパルス東京ヴェルディ他監督の)オジーことオズバルド・アルディレスの全盛期の華麗なテクニックは映画で見ながら溜息をもらすほどです。パスサッカー専門監督とだけ思っている人は、是非、全盛期のプレイを見なおして下さい。

他にもノルウェー代表のハルヴァー・トーレセン、スコットランド代表のジョン・ウォークなど各国の代表選手が集められた試合場面の迫力は本物です。


3)試合会場

試合となる会場は、ドラマでは、1924年の”パリオリンピック”や1938年の”ワールドカップ”会場の”スタッド・オランピック・イヴ=ドゥ=マノワール”ということだが、実際は、ハンガリーの近代化されていなく、当時の面影を残し、よい雰囲気のスタジアムで、見る限りでは1~2万人規模のスタジアムが使用されています。

 

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4.まとめ

『ロッキー』シリーズでブレイクし、『ランボー』シリーズも翌年から始まる、飛ぶ鳥を落とす勢いのシルベスター・スタローンが、似合わないサッカーに挑戦し、プロ選手の風格を感じさせて見事に演ずるイギリス人、マイケル・ケイン、捕虜達を、選手の目から尊敬の眼差しで見守り称える、ドイツ軍将校マックス・フォン・シドー、連合軍捕虜の選任将校ダニエル・マッセイ等に囲まれ、うまい具合にサポートされています。

野球映画に名作は多いですが、サッカー映画に傑作は少ないと言われます。少なくともアメリカ映画においてはそれは事実で、長らくサッカー不毛の地であったアメリカでは仕方ないことかもしれません。

そんな中にあって、サッカーファンも映画ファンも誰もがこよなく愛する映画が本作と言えますね。

 

 

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