映画『柘榴坂の仇討』時代の陰にひたむきに生きる!?

この映画『柘榴坂の仇討』は、浅田次郎による短編集『五郎治殿御始末』に収録された同名の短編を原作とし、2014年9月に映画化されました。

同じ浅田次郎原作の『壬生義士伝』で主演を務め、日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞した中井貴一が仇敵を追い続ける彦根藩士・志村金吾役を、追われる敵役・佐橋十兵衛を阿部寛が演じています。

目次

 

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1.紹介

企画が持ち上がったのは2012年4月で、文庫本で38ページの短編である原作を2時間の映画にするための脚本作りに難航し、30回以上の改稿を重ね、原作に登場しない親友・内藤新之助や、十兵衛のその後、金吾と妻・セツの関係などが掘り下げられました。

激動の時代の要求に強い責任感で応えた結果、人間一人ではとうてい背負いきれない重い荷を引きずる二人が出会います。それは彼らがそれぞれ前に進むためには必然といえるわけですが、あまりに切ない悲劇的なムードが漂います。戦いはすでに終結しているのに、彼らの因縁はいまだ消え去ることがないのです。


2.ストーリー

1)プロローグ

舞台は幕末の江戸。安政7年、彦根藩士の志村金吾(中井貴一)は井伊直弼中村吉右衛門)の近習役にあたることとなりました。

初めて井伊直弼に会ったとき、志村はその素朴な人柄に惹かれました。日本の行く末を案じる一方で、井伊直弼は自然を愛で和歌を愛する心を持っていたのです。

志村はそんな主君を心から尊敬していましたが、それから間もなく、桜田門外で悲劇が起きました。

 

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2)襲撃

それは、江戸城への登城中のときでした、笠をかぶった一人の男が井伊一行の前に現れ、訴状を納めて欲しいと言ってきました

それに対して、井伊は「命を懸けた訴え」と評し、訴状を受け取ろうとしますが、志村が男から訴状を受け取ろうとしたとき、突然男が斬りかかって来ました。

それと同時に大勢の男たちが一行を襲撃しました。刀を柄袋に納めていた近習役たちは刀を抜くのに時間がかかり、次々と倒れていきました一方、志村は脇差で訴状を持っていた男を追い詰めますが、その間に井伊は殺されてしまいました。

 

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3)生き恥

おめおめと生き延びた志村は激しい非難を浴びました。故郷の両親は自殺し、志村自身は切腹することすら許されず、生き恥をさらし続けることを強いられました。
志村がこの苦しみから逃れる方法はただ一つ、主君を殺した浪士に仇討を果たすことでした。

藩の家老からそう言いつけられた志村は絶望の日々を送りますが、そんな志村を支え続けたのは、美しい妻セツ(広末涼子)でした。

セツは禄を失った志村に寄り添い続け、自ら働きに出ることで生活を支えるようになっていきました


4)仇探し

それから13年、明治6年桜田門外の変を起こした浪士たちの多くは自刃、あるいは捕まり、生き残っていると思われるのは佐橋十兵衛(阿部寛)のみとなっていました。

佐橋はあの日訴状を持って現れ、志村と一戦交えた男でした。佐橋は名を直吉と変え、車引きとして生きていました。直吉は同じ長屋に暮らす人々に慕われており、未亡人のマサ(真飛聖)とその娘チヨは特に直吉に信頼を寄せていました。

 

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一方、明治の世になっても志村は佐橋十兵衛の行方を追っていましたが、仇討はすでに時代錯誤のものとなり、仇探しは次第に困難さを極めていきました。

そんなある日、志村は道場仲間で今は邏卒となった内藤新之助(髙嶋政宏)と再会を果たします。

内藤はいまだに志村が仇討を考えていることに半ば呆れつつも、早く苦しみから友を解放させたいという思いから、ある人物に助けを求めます。その人物とは、桜田門外の変の取り調べを担当した秋元和衛(藤竜也)でした。


5)成就の予感

それから間もなく、秋元から志村に一通の文が届きました。そこには、明日秋元の屋敷に来て欲しいと書かれていました。志村は佐橋十兵衛の行方を秋元が知っていると確信、明日秋元の家を訪ねることをセツに伝えると、セツは覚悟した表情を浮かべました。

翌日、セツが志村を見送ったときのことでした。暖かくなったら彦根に帰ろうと志村がセツに優しい口調で語り掛けてきました。目を潤ませながら、「うれしゅうございます」と返答するセツ。雪が降る中去って行く夫を、セツは笑顔で見送りました。

 

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6)寒椿

秋元の家に着くと、秋元は淡々と井伊直弼を暗殺した水戸藩士たちのその後について語り出しました。

その話の中で志村が許せなかったのは、捕まった水戸藩士が打ち首とならず、切腹を許されたことでした。

思わず感情的になった志村は秋元に刀を抜こうとしますが、それに対して秋元は感情を抑えながら志村に語りかけました「ひたむきに生きよ」秋元は障子を開け、庭に咲く椿を見ながらこうつぶやきました。秋元は、雪が降る中でも可憐に咲く椿のように生きるべきと諭すのでした。
そして、秋元の細君からも志村以上にその妻セツも苦労していると咎められるのでした。

ちょうどその日、正式に仇討行為が禁止となり、仇討を果たしても志村の汚名は返上されることがないと秋元はつけ加えました

これに対して、志村は汚名返上が目的ではなく、主君がただたまらなく好きだったことを明かしました。

気持ちがあふれ出し涙を流す志村に、秋元は「おぬしは忠義者よの」と声をかけました。

 

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7)直吉との再会

その後、志村が向かったのは新橋駅でしたそこには、雪の中客を待つ直吉の姿がありました。

志村は笠の下の顔を見て、目の前にいる車引きがあの佐橋十兵衛であることを確信します。

 

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一方の直吉も、志村がただの客ではないことに感づいていました 志村が雪見をしたいと言って車に乗り込むと、二人は互いを探り合うように言葉を交わしました。

直吉は、若い頃にひどい過ちを犯したこと、その後は独り身で生きていることを志村に明かしました。

その中で志村を驚かせたのは、直吉が今の名前に変えた理由でした「若気の至りで手にかけちまったお人の一文字を頂戴いたしやした」この直吉の言葉で、志村はその人物が井伊直弼であることを確信します。

桜田門外の変の後、直吉は井伊直弼の行為の正しさに気づき、名前を一字もらいたいと考えたのだといいました。

 

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8)互いの決着

やがて、車は柘榴坂に着きました。直吉はこの坂を「死に後れちまった場所」と語り、13年前にこの場所のことを思い出していました。桜田門外の事件のあと、この場所で自刃しようとしますが、右腕を負傷した直吉は自ら命を絶つ覚悟ができず、雪降る中茫然とただ座り込んでいました。

志村はこの坂を登った場所で車を降り、直吉に立ち合いを申し入れました。立ち合いを拒む直吉に志村は自分の刀を渡し、自らは脇差しを抜きました。

志村の思いを知った直吉は刀を抜き、二人は真剣勝負に臨みました。互角の勝負が続く中、志村の脇差しは直吉の喉元まで迫りますが、志村は直吉を殺そうとはしませんでした。

 

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そればかりか、観念した直吉が自らの首を搔っ切ろうとしますが志村は体当たりでくい止めました。


9)ひたむきに生きよ

長い間死を望んでいた直吉は主君の仇を討つよう志村を挑発しますが、その瞬間、志村の視界に椿の花が入ってきました。そして、志村は13年前のあの日、井伊直弼が語った言葉を思い出しました。

「命を懸けたる者の訴えをおろそかに扱うな」志村はあの言葉の真意を理解しました。井伊はたとえ自らの命が奪われることになろうとも、命を懸けた訴えを受け入れようと考えていたのです。

志村は直吉を討たないことこそが主君の意思であることに気づき、脇差しをしまいました。自分と同じように、13年前のあの日の悲劇にとらわれている直吉に、志村はこう語り掛けました。
「生きてはくれまいか、わしもそうするゆえ」志村の言葉に、直吉は涙を流しうつむくのでした。


10)エピローグ

その後、長屋に戻った直吉は、お土産を渡すためにチヨとマサの家を訪ねました。そして、去り際に直吉はマサに湯島天神の縁日に行こうと誘いました。マサは驚きつつも、嬉しそうに微笑みを浮かべるのでした。

一方、志村がセツの働く料理屋に向かうと、ちょうどセツが後片付けを終え帰るところでした。夫が生きて帰ってきたことに驚くセツ。その帰り道、セツは今朝が志村との今生の別れと覚悟していたことを明かし、涙を流しました。
そんなセツに、志村は明日主君の墓参りにともに行こうと誘いました。セツが笑顔で応じると、志村はセツの手を取り家に向かって歩き出しました。

 

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3.四方山話

1)志村を乗せた俥

このシーンについて阿部寛は、相手役中井貴一の反応が全く見えない位置関係もあって、もっとも演じるのが難しかったと語っています。13年の重みの腹の探り合いでしょう。

追う者と追われる者という役柄の関係上、中井と阿部は日常会話さえ控えて撮影に臨み、完成報告記者会見では監督に「こんなに仲の悪い人たちはいないっていうくらい、2人は話をしなかった」と茶化されるほどの徹底ぶりだったといいます。大きなスリルと感動を味わえる、よくできたクライマックスとなっていました。


2)中井貴一のインタビュー

中井貴一は『壬生義士伝』で日本アカデミー賞主演男優賞を受賞した際、「人は人によってしか救われないのではと思う」と語っていました。「今でもその意見は変わっていない。お酒を飲んだり、遊びに行ったり。問題は瞬間的には消えて薄まるけれど、すぐに再燃してくる。だけど何かしら人と関わることで、ポンと抜け出せたりする。やっぱり、人間は人間のことを好きじゃなければいけないんだ、平和じゃなきゃいけないだって、最近しみじみ思うんです。人は人にしか救われない。11年前よりもそう強く思っています」。


3)武士の魂

原作にはないけれど心に残るシーンがあって、町中で金貸しとヤクザ者たちに囲まれて烈しい取り立てにあっている者を、金吾が助けようとするシーンです。
困っている者を見過ごしにはできないと武士の情けを語る金吾に呼応して、周りにいた町人や職人に姿を変えた元士族たちが次々と名乗り出てヤクザ者を追い払うのです。
新しい世の中になっても武士の魂は生きていることを示す印象深いシーンでした。

 

 

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4.まとめ

同時代を扱っている中井貴一主演の時代劇である本作と『壬生義士伝』は、「静」と「動」の対照的な映画となりました。

そして、どちらも、武士の「義」「家族愛」「時代の壁」がテーマとなっています。

さて、潔く散る『壬生義士伝』に惹かれはするものの、本作『柘榴坂の仇討』のように過去を引きずってしまう切なさに同調もしてしまいます。

 

 

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