映画『さすらいのカウボーイ』渋い秀作西部劇です!!

この映画『さすらいのカウボーイ(The Hired Hand)』は、『イージー・ライダー』を製作・主演したピーター・フォンダが監督・主演で、脚本はアラン・シャープ、撮影はヴィルモス・ジグモンド、音楽はブルース・ラングホーンが各々担当し、『ワイルドバンチ』のウォーレン・オーツ、『アメリカを斬る』のヴァーナ・ブルームが共演した、1971年の映画です。

目次

 

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1.紹介

ピーター・フォンダが、主演を兼ねて監督デビューを果たした作品で、少ないセリフや役者の表情などで、その心情を伝えるピーター・フォンダの繊細な演出や、既に数々の話題作を手掛け高い評価を受けていた、ヴィルモス・ジグモンドの美しく幻想的な映像表現なども印象に残ります。

実力派大スターである父ヘンリー・フォンダと姉ジェーン・フォンダに続き、弱冠30歳のピーター・フォンダの才能が窺える秀作西部劇として、批評家から絶賛された作品です。


2.ストーリー

1)プロローグ

物語の舞台は、西部開拓時代のアメリカ、ハリー、アーチ、ダンの3人の男たちはカリフォルニアを目指して旅を続けていました。特にカリフォルニアに夢と希望を抱いていたのは、若者のダン・グリフェン(ロバート・プラット)でした。常に新しい場所を求め、血気盛んなダンの姿に、アーチ・ハリス(ウォーレン・オーツ)は昔のハリー・コリングス(ピーター・フォンダ)を重ね合わせていました。

 

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2)別れの兆し

そんなある日、一行はデル・ノルテという町に立ち寄りました。ハリーたちはこの町で食料の補給や蹄鉄の手入れをしようと考えていましたが、街はひどく寂れており、商業はほとんど発達していませんでした。ハリーたちはそんな町の様子に呆れていました。

同じ頃、町の数人の男たちがダンの馬に目をつけていました。「サムが喜びそうな馬だ」男の一人はそう口にしました。

 

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その後、ハリーたちは町の小さな酒場へ。アーチとダンが安酒を飲みながらカリフォルニア行きの夢を語る中、突然ハリーが家族の元に戻ると言い出しました。

ハリーは数年前に妻と娘を捨てて以来ずっと放浪生活をしていましたが、この生き方がムダだと気づき、今こそ落ち着いた生活に戻ろうと考えたのです。

最近仲間になったばかりのダンはハリーにかまわず旅を続けようと提案しますが、7年近くハリーと旅をしてきたアーチはハリーの離脱に納得できずにいました。しかし、アーチは海が見たいという自分自身の望みを叶えるため、ハリーと別れることを決めました。


3)ダンの死

その夜、悲劇が起きました。酒の買い出しからなかなかダンが戻らないため、ハリーとアーチが酒場に探しに行くと、外から銃声が聞こえてきました。その後、上半身裸のダンが首を撃たれた状態で酒場に入ってその場に倒れ、間もなく息を引き取りました。

それからすぐ、サム(セヴァーン・ダーデン)という中年男が毛布で裸の体を隠す妻を連れて店の中に入ってきました。マクヴェイは妻(リタ・ロジャース)がダンに襲われていたから撃ったと主張、当の妻は英語が話せないために何も語ることはありませんでした。ハリーとアーチはこのサムの主張に反論せず、すぐにダンの遺体を引き取って埋葬を済ませました。


4)ダンの敵討ち

その翌朝、ハリーとアーチはサムの住処に向かいました。表面上はサムに穏便な態度を取っていた二人でしたが、実際のところはサムの言い分を信じておらず、ダンは意図的にサムに殺されたと見抜いていたのです。実際、サムの住処には盗まれたダンの馬がいました。

ハリーとアーチはサムの住処を銃撃、アーチはサムの手下を襲い、ハリーは寝ていたサムの足を撃ちました。ハリーとアーチはサムを凝らしめるとすぐに撤収、ダンの馬を連れてデル・ノルテの町を去って行きました。

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5)帰郷

その後、ハリーとアーチはハリーの妻のハンナ・コリングス(ヴェルナ・ブルーム)と、子ジェイニー(メーガン・デンバー)が暮らす家を目指しました。その道中、ハリーは妻が十歳年上であり、一緒に暮らしたのはたった1年9ヶ月しかなかったことを明かしました。ハリーは妻に非がなく、自分が若すぎたことが別れた原因だとアーチに説明しました。

長い旅の末、ハリーとアーチは小さな農場に到着、ハリーはそこで妻ハンナと再会を果たしました。そのそばにはジェイニーという小さな娘の姿もありました。

ハンナは夫の帰還を歓迎せず、戻る資格はないとハリーに冷たく言い放ちました。ジェイニーにも父親は死んだと説明しており、いたずらに娘を混乱させたくないという気持ちもハンナにはありました。しかし、使用人でもいいから家に置いて欲しいというハリーの言葉に負け、ハンナは渋々ハリーとアーチを受け入れることにし、納屋を寝床として提供しました。

 

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6)妻ハンナ

翌日、ハリーとアーチは農場の力仕事に精を出しました。ハンナはそんな二人の姿を陰ながら見守っていました。

ある夜、ハンナとアーチは二人きりで話す時間を持ちました。ハンナはハリーがまた出て行くに決まっていると予想していましたが、アーチは「物事は変わるもんだ」と返答しました。ハンナはそのアーチの言葉に反論しませんでした。

 

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そんなある日、ハリーとアーチは街に出かけました。ハリーが買い出しをしている間、アーチは酒場でビールを飲み、店主にハンナの農場で働いていることを教えると、酒場にいた男が絡んできました。男の話によれば、ハンナは雇った男と寝ているといいます。

アーチはこの男を相手にせず、店を出てハリーと合流しますが、男はハリーにもハンナの男関係を語ろうとしました。アーチはハリーを傷つけまいと男を殴り倒しますが、ハリーは男が言いかけた言葉でハンナの知られざる過去に気づいてしまいました。


7)ハリーの宣言

アーチはハンナに真相を問いただすようなことはしてはいけないと忠告しますが、ハリーはアーチの言葉に従わず、その夜、ハンナと二人きりになったときに使用人との関係を尋ねてしまいました。
すると、ハンナは何人かの使用人と寝たことを認めました。しかし、ハンナは旦那ヅラされることを嫌い、使用人との関係は季節が終わるまでの短い間のことであったことも付け加えました。「男と一緒に暮らすのは1人でこりごり」ハンナがそう語ると、ハリーはそれ以上聞くのをやめました。

翌朝、ハリーは一人町に出かけ、保安官事務所の掲示板や商店にチラシを貼っていきました。「死んだと思われたハリーが戻った。今後使用人は不要。ハリー・コリングス」…チラシにはそう書かれていました。

その後、町に暮らす老婦人がハンナの元を訪ねてきました。老婦人は町中の人々がハリーのチラシを見たと話し、夫が帰って来てくれてよかったとハンナに声をかけました。
しかし、そのチラシの存在を初めて知るハンナは老婦人に当たり障りのない返答しかできず、複雑な思いに駆られました。

 

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8)ハンナの独白

その夜、ハンナはアーチと二人で話す時間を持ち、ハリーが放浪をやめて落ち着こうとしていることについてアーチに意見を求めました。アーチはハリーのことについて何か言おうとはせず、いずれ自分はこの農場を離れるつもりだと返答しました。
すると、ハンナはこれまでの使用人との関係を赤裸々に語り始め、「今夜あなたと寝てもいい」と声をかけました。アーチは何も答えず、ただハンナの素足にそっと触りました。
ここに残ることがハリーにとって幸せなのかとハンナが疑問を口にすると、アーチは幸せだと答え、ハリーに残って欲しければ、ハリー本人にも自分自身にも同じ質問をしてみればいいとアドバイスしました。


9)アーチとの別れ

ハリーとアーチはその後も精力的に働き、平和な時間が過ぎていきました。そんなある夜、アーチはカリフォルニアに行くと言い出し、ハリーはショックを受けました。

ハリーはアーチに出て行くよう頼んだのかとハンナに尋ねると、ハンナはアーチ自身の意思だと返答し、これまでにためていた思いを吐露し始めました。

ハンナはアーチを良い人だと認めていましたが、それと同時に、ハリーがアーチと一緒に出て行ってしまうのではないかと不安に思っていました。
「あなたは長年暮らした浮気相手と戻り、皆で住もうと言ってるの」ハンナがそう言って自分たちの関係をたとえると、ハリーは「君が望むとおり、アーチは出て行く」とだけ返答しました。

その後、ハリーはアーチから「夫として暮らす練習」をするよう助言を受けました。ハリーはこの言葉に「分かってる」とだけ返答し、それ以上アーチと会話をしませんでした。

 

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アーチは予告した通りに農場を出て行きました。ハリーはその直前まで「戻ってこい」と声をかけ、アーチとの別れを惜しみました。

アーチが去ったことをきっかけに、ハリーとハンナは夫婦関係を取り戻していきました。ハリーは納屋から母屋に移り、ハンナの寝室へと迎え入れられました。二人は同じベッドで眠り、互いへの愛を確認し合いました。


10)アーチの指

ハリーとハンナの平和な夫婦生活は、長く続きませんでした。ある日、サムの使者と名乗る男がアーチの馬に乗って農場に現れ、サムの元に来いと伝えてきました。その際、男はアーチを捕らえていると語り、切断したアーチの指を見せてきました。

ハリーはアーチを助けるためにすぐに男とともに農場を出発、ハンナが泣いて引き止めてもハリーの決断は翻りませんでした。ハンナはハリーが再び去った現実に絶望し、呆然としました。

サムの使者の男の指示に従って出発したハリーでしたが、このままサムの好きなようにさせるつもりはありませんでした。その道中、ハリーは休憩中のサムの使者を射殺、サムの元へと急ぎました。


11)1対3

それと同じ頃、アーチは檻に入れられ、右手の小指を失った痛みに耐えていました。監禁生活を強いられる中で、アーチはサムの妻がサムに虐待されていることに気づきました。そこで、アーチは檻の中からひそかにサムの妻に話しかけ、銃を渡すよう協力を求めました。しかし、サムの妻はサムからの暴力を恐れ、アーチの前から逃げてしまいました。

その後もサムは妻に暴力をふるいました。夫からの仕打ちに耐えられず、サムの妻はひそかにアーチに銃を引き渡しました。それと時を同じくして、ハリーがサムの住処に到着しました。

ハリーはたった1人でサムとその手下と対峙、2丁の拳銃でサムたちを撃ちました。しかし、ハリーはサムたちから一斉に銃撃を受け、その場に倒れてしまいました。サムは松葉杖をつきながらハリーに近づき、とどめを刺そうとしました。

ちょうどそのとき、アーチが檻から脱出、サムとその手下たちの後方を襲いました。サムたちはアーチの襲撃により全滅、アーチはすぐに瀕死のハリーの元に駆け寄りました。「抱いてくれ」…ハリーが苦しそうにそう語ると、アーチは黙ってハリーの体を抱き起こしました。


12)エピローグ

夕暮れ時、ハンナが不安げな表情を浮かべながら家のポーチの椅子に座っていると、そこにハリーの馬に乗ったアーチが自分の馬を引き連れてやって来ました。ハンナは夫が帰ってこないことを理解し、椅子から立ち上がりポーチから去って行きました。アーチはハリーの馬と自分の馬を納屋に入れ、扉を閉めました。やがて日は沈み、あたりは暗くなっていきました。


3.四方山話

1)お手本

監督ピーター・フォンダは、『荒野の決闘』(1946年)を手本に映画を作ったそうで、内容は全然違いますが、ゆったりしたテンポ(本当の西部ではめったに馬を走らせることなどなかった)、静かな会話、毅然とした男たちの姿は通じるところがあります。
そして、出てくる拳銃は雑多で不発だったり当たらなかったりするのがリアリズムです。
ワイアット・アープ本人と知り合いだったジョン・フォードが描いた『荒野の決闘』の世界、西部のリリシズムをピーターは見事に再現して見せましたし、より現代的な詩的な映像や音楽、ニューシネマ的な結末は、新旧ハリウッド西部劇の見事な融合となりました。


2)市川崑監督

1982年の暮れ、日本映画『だいじょうぶマイ・フレンド』(1983年)に出演するために来日したピーター・フォンダは、撮影期間中のある日、東宝撮影所で市川崑監督に遭遇し、噴水の前に腰かけて会話する機会があったそうです。
驚いたことに、市川崑監督はすでに『さすらいのカウボーイ』を観ていて、「映画を撮ったとき、君は何歳だったんだね?」と訊いてきました。
ピーターが「30歳になったばかりでした」と答えると、「私は今までに女性映画をたくさん撮ってきたが、どうやったらあんな風に女性を描けるのかわからない」と驚いていたそうです。
そのとき市川崑はちょうど、名作『細雪』(1983年)の撮影中でした。エンディングも見事だと褒められたピーター・フォンダは、誇らしげにインタビューでそんなエピソードを語っていました。


3)キャスト

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ピーター・フォンダからは旅の疲れがひしひしと伝わり、ウォーレン・オーツは最高で、愁いをおびた表情は何者にも代えがたいものがあります

それと主人公が捨てた奥さんのヴァーナ・ブルームが絶妙です。どこからみても百姓のかみさん。金髪のきれいな女ではなく、浅黒い中年女。これまたリアル。
しかも貞淑に夫の帰りを待っているような人間ではなく、テラスで納屋から誰か使用人が自分のベットにやってきてはくれまいかと待ちこがれていたという告白。色気やロマンスなんかみじんも感じさせず、もっと原始的、動物的、とても土くさくて、人間そのもの、よくぞここまでさらけ出しました。

 

 

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4.まとめ

とても地味な映画、小品なのですが、所々に70年代らしさ、気概が感じられます。
筋立ては古典なのですが、映像は逆光を多様、ハレーション気味の映像とニューシネマっぽい結末。
それといままでの嘘くさい西部劇に反発するような、細部にこだわった時代考証は、とてもリアルで、きっと当時の人たちはこんな風だったんじゃないかと納得させられてしまう力を持っていました。

 

 

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