映画『頭上の敵機』指揮官とは?リーダーシップの教本です?!

この映画『頭上の敵機(Twelve O'Clock High)』は、監督ヘンリー・キング、主演グレゴリー・ペックの1949年のアメリカ合衆国の戦争映画です。

目次

 

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1.紹介

アメリカの第二次世界大戦参戦初期にナチス・ドイツ及びナチス・ドイツ占領下のフランスに白昼爆撃を敢行したアメリカ陸軍第8空軍の指揮官の物語です。

実話をもとにして、部隊の士気を高めるために派遣された将校の、指揮官としての使命と、部下との信頼関係に苦悩し葛藤する姿を描いています。

本作は、1948年のサイ・バートレット、バーン・レイ・Jr作の小説『Twelve O'Clock High』を、原作者であるバートレットとレイ、ヘンリー・キング監督が脚本を担当し、グレゴリー・ペックの他、 ヒュー・マーロウゲイリー・メリル、ミラード・ミッチェル、ディーン・ジャガーらの出演で映画化した作品です。


2.ストーリー

1)プロローグ

1949年のロンドン、ある骨董店で、見覚えのあるトビー・ジャグを見つけたアメリカ人弁護士ハーヴェイ・ストーヴァル(ディーン・ジャガー)は、それを手に入れてアーチベリーに向かいました。

アーチベリーに着いたストーヴァルは、戦後まだ数年しか経っていないにも拘らず、朽ち果ててしまった飛行場を前に、想い出にふけるのでした。

 

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2)第918航空群

1942年、ストーヴァル少佐の赴任していたアーチベリー飛行場は、苦戦するアメリカ第918航空群の陸軍航空軍基地でした。

連日の無謀な白昼爆撃で、兵士は疲労の極に達して士気も低下していました。

部下を案ずる航空司令キース・ダベンポート大佐(ゲイリー・メリル)は、翌日の出撃に備えていたが、精神的不安定な兵士の状態を、カイザー軍医(ポール・スチュワート)から指摘されます。

任務と部下の命との板ばさみで、ダベンポート自身も休養が必要でした。

上官フランク・サヴェージ准将(グレゴリー・ペック)の元に向かったダベンポートは、既に出撃命令を出した将軍に、部隊の状況などを説明して抗議しました。

 

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3)指揮官交代

司令官パトリック・プリチャード少将(ミラード・ミッチェル)から、作戦失敗が続く、第918航空群の欠点を指摘するよう命ぜられたサヴェージは、指揮官ダベンポートに問題がある可能性があると言いました。

指揮官としては優秀なダベンポートでしたが、人の良さが裏目に出て、任務よりも部下を重視してしまうことが欠点だと、友人でもある彼を、サヴェージは厳しい視点で見ていたのでした。

基地に向かったプリチャード少将は、同行したサヴェージの指摘した、ダベンポートの指揮官としての資質を確認して彼をその場で解任しました。

そして、帰り道、車を止めて、プリチャード少将は、基地全体の大改革を行う為に、サヴェージを第918航空群の新指揮官に任命しました。


4)意識改革

重責を背負い、人格まで変えて基地に赴くサヴェージは、副官ストーヴァル少佐を呼び出し、決死の覚悟で部下を鍛え始めました。

問答無用のサヴェージは、ダベンポートの足を引っ張るような行動をとったと、酒に酔っていた現飛行司令ベン・ゲートリー少佐(ヒュー・マーロウ)を逮捕し、プライドを傷つけて罵倒して解任してしまいます。

 

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部隊員を前にしたサヴェージは、即刻、飛行訓練を開始することを告げ、自分の意思に従えない者は、基地を去るよう言い放ちました。

バーで非礼な態度を取ったコッブ少佐(ジョン・ケロッグ)を飛行司令に任命したサヴェージは、兵士の士気が、危機的な状況にまで低下していることを、カイザー軍医から知らされます。

兵士達がダベンポートを慕っていたのが原因で、軍医は、サヴェージの、兵士に対する厳しい態度を弱めることを提案しました。

サヴェージは、時間的な余裕がないことを理由にそれを拒絶し、自分のやり方で、兵士達にプライドを取り戻させようとするのでした。

 

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5)成果の陰に

サヴェージの厳しさに転任希望者が続出する中、彼の真意を理解するストーヴァルは、転任手続きの引き伸ばしに尽力します。

ゲートリーの機体は”臆病集団”と名付けられ、連日飛行訓練を続けます。そして、ついに出撃命令が届き、その報せとして、バーの”トビー・ジャグ”が兵士に顔を向けるのでした。

二度の出撃で未帰還機は一機と、以前に比べ損害は激減しますが、サヴェージは、爆撃の命中率の低さを指摘し、航空群への忠節を第一に考えるよう徹底させました。

ダベンポートが基地に姿を現し、転任者の引き伸ばしによって、暴動が起きる可能性をサヴェージに告げました。

部下の心の支えになる必要性を指摘するダベンポートだったが、サヴェージはそれを拒み、あくまで厳しく接する意思を示しました。

サヴェージは出撃の度に指揮を執り、自ら出来うる限りの情熱を、この航空群に捧げるのでした。


6)意識の変化

その後、出撃中に、無線連絡を怠ったサヴェージを責めるプリチャード少将でしたが、敵の重要拠点爆撃に成功した部下達を称えるよう、サヴェージは直訴します。

サヴェージは、ダベンポートの意見を参考にしてみるものの、部下達の心は動かずに苦悩します。

監察官が第918航空群の異動願滞留などの問題を確認するため到着した際、サヴェージは解任を覚悟して荷づくりを行っていました。

しかし、飛行司令コッブ少佐の報告で、兵士達が移動申請を取り下げたと知り、ついにサヴェージの気持ちが部下に理解されるのでした。

サヴェージは、それにも拘らずコッブに厳しい指示を出して彼を戸惑わせるが、ストーヴァルは理想の高い上官の真意を察しました。


7)志気の高揚

その後、航空群は、いよいよドイツ本土爆撃に出撃し、負傷者を出しながらも攻撃に成功して編隊は帰還しました。

航空群の兵士は、徐々にプライドを取り戻し、地上に待機することこそが屈辱だと感じるような、自覚を取り戻していくのでした。

そして、ストーヴァルら地上勤務者まで、無許可で戦闘に出撃し、サヴェージは内心喜びながら警告しました。

次の出撃で、サヴェージの直属だった若い兵士の機が撃墜されゲートリーも負傷して入院します。

サヴェージは、ゲートリーが以前の出撃で負傷しながら出撃を続けていたことを、カイザー軍医から知らされました。

入院しているゲートリーを見舞ったサヴェージは、自分に反感を持つ彼の気持ちを察し、言葉少なく声をかけて立ち去ります。

しかし、サヴェージは、看護師にゲートリーの大佐昇進を伝え、彼への特別な待遇を命じました。

それを知ったゲートリーは、サヴェージの気持ちを知り涙するのでした。


8)決死の爆撃任務

そして、航空群に最高司令部からの最重要指令が下り、ドイツ空軍の軍需の拠点である、ボール・ベアリング工場を爆撃することになりました。

航空群は精鋭となるが、プリチャード少将は部下に情の移ったサヴェージが、ダベンポートと同じ過ちを犯す可能性を心配します。

 

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サヴェージが指揮する、ベアリング工場攻撃に飛び立ったB-17の編隊は目的地に近づき、敵の対空砲火と戦闘機の攻撃を受けました。

友軍機に被害を出しながら、目的地上空に到着した編隊は爆撃を開始するが、コッブの機も撃墜されます。


9)極限から錯乱へ

1日目の任務を果たした編隊は帰還し、サヴェージは、翌日も指揮を執り出撃しようとします。

しかし、心身ともに疲労の極限に達していたサヴェージは、出撃直前で錯乱状態になってしまいました。

編隊は、ゲートリーが指揮を代わり出撃しますが、基地に残ったサヴェージの心は、編隊と共に戦地にあり、彼の症状は一向に回復しませんでした。

その時、ダベンポートの元に、編隊の攻撃が成功して、戦果を上げたという報告が入ます。

ダベンポートはサヴェージを励まし、見事に航空群を立て直した彼の功績を評価しました。

サヴェージの様子は変わりませんでしたが、編隊の帰還を知りはじめて、正気を取り戻した彼は眠りに就くのでした。

 

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10)エピローグ

景色は現在のアーチベリーに戻り、そして、退役したストーヴァルは、その想い出を飛行場に残し、その場を去るのでした。

  

 

3.四方山話

1)リアリティ

爆撃機作戦に従事した元兵士たちは『頭上の敵機』は、実戦を忠実に再現した唯一のハリウッド映画である、とコメントしています。

1948年の映画『戦略爆撃指令』と併せ、『頭上の敵機』は勧善懲悪的、楽観的な戦争映画の枠を外れ、戦争によって失われる人命と向き合う迫真のリアリティを追ったターニングポイントとされています。

この二つの映画はP-51の様な航続距離の長い戦闘機が出現する以前、第二次大戦参戦直後の陸軍航空軍の戦闘ドクトリンに従い、護衛戦闘機なしで白昼爆撃を行った部隊を描いています。


2)原題の意味

英語の原題「twelve o'clock high」は敵機の方向を示す用語で、"twelve o'clock"はクロックポジションで12時の方向(前方)、"high"は自身より上方に敵機がいることを表しています("level"は自身と同高度、"low"は自身より下方)。

つまり、"twelve o'clock high"を直訳すれば『12時の方向上』であり、この方向から敵機が接近していることを意味しています。

初期型のB-17では機首正面方向が弱点とされており(この方向を射撃できる防御機銃が少ないため)、ドイツ空軍の戦闘機はこの位置からB-17を攻撃することが多く、上方から急降下してくる敵戦闘機は相対速度の速さもあって難敵でした。


3)評価

ボスレイ・クローサーニューヨーク・タイムズに寄稿した映画評がこの時代のこの映画の評価をよくあらわしています。クローサーは飛行機や機械ではなく人間に主眼を置いた映画である、と記しています。

タイムズは『頭上の敵機』を1949年の映画十傑に選出し、後年すべての映画の千傑に選出しています。

戦略航空軍団のカーチス・ルメイ将軍は、プレミア試写会に参加した後、観客に対して、この映画には完ぺきだ、と述べています。

アメリカのあらゆるSL理論を採用する高級軍人養成学校で『頭上の敵機』を観ることが求められました。この映画は、軍事部門、民間部門の双方でリーダーシップの基本を教える教材として利用されています。

 

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4.まとめ

戦争ものというより、上司とは、指導者とは、管理職とはどうあるべきかを学べる作品で、友人として、部下としての立場、振る舞いについても教えられてしまいます。