映画『ダイヤルMを廻せ!』ヒッチコックの王道的なサスペンスです?!

この映画『ダイヤルMを廻せ!(Dial M for Murder)』は、監督アルフレッド・ヒッチコック、出演はレイ・ミランドグレース・ケリーなどの、1954年のアメリカ合衆国のサスペンス・ミステリ映画です。原作はフレデリック・ノットによる同じタイトルの舞台劇で、ノットは本作の脚本も手がけています。

目次

 

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1.紹介

見ている者には犯人は分かっていながら、警察側がそれをどのようにして突き止めるかという、知的サスペンスの代表作です。

電話、鍵、ハサミなど、多くの小道具の使い方が抜群であり、巧みに仕上がった戯曲の映画化なので、あえて映画的に脚色し直していないところや、物語のほとんどがアパート内という、ヒッチコックの演出は、舞台劇の特色をそのまま生かした、素晴らしく、主人公が、計算しつくした殺人計画を、実行犯に延々と説明する様子を、天井から映すシーンなども斬新です。

ヒッチコック作品には、初出演のグレイス・ケリーの美しさと若さが際立っていますが、突然襲われ動揺する場面や、自分の主張が何一つ通らない絶望感の表現なども見事です。主演のレイ・ミランドは、妻殺害を企てるものの、予期せぬ事態が多発し、追い詰められていく男性を熱演しています。


2.ストーリー

1)プロローグ

プロテニスの花形選手だったトニー・ウェンディス(レイ・ミランド)は、資産家である妻のマーゴ(グレイス・ケリー)とロンドンのアパートに住んでいます。トニーはテニスのツアーのために自宅を留守にしがちだったので、それが不満だったマーゴとの夫婦仲は冷え込んでいました。

夫の留守中にアメリカ人の推理作家マーク・ハリディ(ロバート・カミングス)との浮気に走ったマーゴは、トニーと別れてマークと一緒になる気持ちに傾いていました。妻の浮気に気づいたトニーは、妻と別れるよりも、妻を殺害して資産を手に入れようと考え、緻密な殺害計画を練り上げるのでした。


2)殺害計画

ある晩、トニーは自宅でひとりになると、大学の同窓生のレスゲイト大尉ことチャールズ・アレキサンダー・スワン(アンソニー・ドーソン)を電話で呼び寄せるます。スワンは在学当時から手癖の悪さで有名で、刑務所暮らしも経験していました。

トニーは彼にマーゴとの経緯を語って聞かせ、1000ポンドの報酬で妻の殺害を持ちかけます。調べあげた彼の悪行を並べ立てて脅しもかけ、乗り気になったスワンにトニーは計画を説明しました。


明日の晩、トニーがマークを連れてパーティに出かけ、マーゴをひとりにする。
出かける際にマーゴのハンドバッグから鍵を盗んで玄関前の階段に隠しておくので、それを使って部屋に忍び込む。
隣の寝室にいるマーゴに気づかれないように、フランス窓のカーテンの陰に隠れ、電話が鳴るのを待つ。
午後11時にトニーが出先から電話をかける。
マーゴが起きてきて電話に応じている間に彼女を襲う。
その後、金目のものを適当に取り散らして物盗りに見せかけ、玄関から出て行く。
その際に鍵を元の隠し場所に戻しておく。
警察には、強盗が盗み目的でフランス窓から侵入したが、マーゴを殺してしまい、慌てて何も盗らずに窓から逃げていったと思わせる。

スワンは自ら手順を確認した後、手付金の100ポンドを懐に収めました。


3)計画の失敗と擬装工作

次の日の晩、スワンは約束の時刻に部屋に侵入し、カーテンの陰に隠れます。電話が鳴ってマーゴが電話に出ると、スワンが背後から彼女の首にマフラーを巻き付けて締め上げます。ところが、マーゴはもがきながら手を伸ばしてデスクの上のハサミを掴み、それをスワンの背に突き刺したので、スワンは床に倒れて死んでしまいました。

 

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マーゴが恐怖におののきながら再び受話器を取ると相手はトニーと分かり、男に首を絞められたが、その男は死んだと話します。トニーは自分が戻るまで何も触らず、誰にも話さないように約束させると、急いでアパートに戻りました。

部屋に戻ったトニーは、マーゴの目を盗んでスワンのコートから鍵を探り出し、彼女のハンドバッグに入れます。スワンが凶器に使ったマフラーを焼却して、マーゴの裁縫箱からストッキングを出しておきました。

さらに以前手に入れていたマークからマーゴに宛てた手紙をスワンのポケットに忍ばせ、それらのことを済ませると、トニーは警察が来るのを待ちました。


4)マーゴの嫌疑

翌朝ハバード警部(ジョン・ウィリアムズ)が訪ねてきます。警部は細かい質問をしながら、しだいにマーゴを追い詰めていきました。

昨夜は地面が濡れていて、スワンの靴に表戸口のマットで泥を拭った形跡があったから、スワンは玄関から入ってきたと思われる。
スワンの死体から鍵が見つからなかったので、マーゴが部屋の中からドアを開けたとしか考えられない。
さらにスワンがマークの手紙を持っていたことから、彼は浮気相手からの手紙を見せてマーゴを恐喝するつもりだったと推定される。

したがって、彼がマーゴに不意に襲いかかるとは考えにくく、マーゴが部屋を訪れたスワンと会っているうちに、故意に彼を刺したのだろうと、警部はそう判断しました。

マーゴは首もとに絞められた跡のあざがあると主張しますが、現場に彼女のストッキングしかなかったことから、自分であざをつけて襲われたように偽装したのかも知れないとして取り合いません。

マーゴは殺人容疑で逮捕され、裁判にかけられ、死刑が確定してしまいました。


5)ハバード警部の仕掛け

死刑が執行される前日になって、ハバード警部がトニーを訪ねて来ます。用件を済ませると、警部は帰りぎわにコートをわざと間違えてトニーの鍵を持って出て行きました。

トニーが出かけた後にこっそり戻ってトニーの鍵でドアを開けて部屋に入り、そこに外で様子をうかがっていたマークも加わります。警部が電話で合図すると、マーゴが拘置場所から車に乗せられてきて、アパートの外で降ろされました。
マーゴは渡された自分のハンドバッグから鍵を出して部屋に入ろうとしますが、鍵が合いません。あきらめてアパートを出ると、刑事に促されて庭のほうから部屋に通されるました。あっけにとられるマーゴとマークに警部が事情を説明しました。

警部は偶然マーゴのハンドバッグの中の鍵が彼女の鍵ではないことに気づきました。そこで彼女の鍵を捜索したところ、階段に隠されているのを発見します。そのことから警部は、トニーがスワンを使ってマーゴの殺害を企てたことを見破ったのでした。

 

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6)鍵のくい違い

事件の前夜、トニーはスワンに、部屋に入る際は階段に隠しておいたマーゴの鍵でドアの錠を開け、部屋を出る際に階段に戻しておくように指示しました。だからトニーは、部屋を出ることなく死んだスワンのポケットにはマーゴの鍵が残っているものと思い込んでいます。

ところが事件当夜にスワンがとった行動は違っていました。スワンは階段から鍵を取り出してドアの錠を開けると、部屋に入る前に鍵を階段に戻していたのです。スワンの死体のポケットにあった鍵はスワン自身のアパートの鍵でした。トニーはスワンの鍵をマーゴの鍵と勘違いしてマーゴのハンドバッグに入れたのでした。

警部がマーゴにハンドバッグの鍵を試させたのは、階段に鍵を隠したのはマーゴだった可能性もあったからですが、マーゴは隠し場所を知りませんでした。


7)エピローグ

警部は部下に命じてマーゴのハンドバッグを警察署に戻させました。やがてトニーがアパートに帰ってきてコートから部屋の鍵を出そうとすると、警部のコートと取り違えたことに気づきます。そこで警察署へ行ってマーゴのハンドバッグを受け取り、その中の鍵でドアを開けようとしました。

ところが鍵は合いません。トニーは少し考えて、マーゴの鍵がまだ階段に残されていることに気づき、階段から鍵を取ってドアを開けると、部屋の中でマーゴとマーク、ハバード警部の3人が待っていました。犯人しか知り得ない鍵の隠し場所を自ら暴露したトニーは敗北を認めるのでした。

 

 

 

 


3.四方山話

1)ヒッチコックのカメオ

本作の恒例のヒッチコック監督のカメオ出演は、トニーの出身大学の同窓会の出席者のひとりとして、記念写真の中にはっきりと写っています。なお、後半でこの写真を確認するシーンもありますが、さすがに写真を正面から見せていませんでした。


2)鍵

英語の台詞では、トニーやハバード警部はアパートの鍵をラッチ鍵(latchkey)と呼んでいます。ラッチ式の錠は、鍵を回すと出入りする金具部分の先が斜めになっていて、ドアを閉じるとき、金具が斜めの部分にうながされて沈み込み、ドアを閉め切ったときにバネで金具が元に戻って錠が掛かります。
ドアが閉まると同時に施錠されるので、ドアを閉めるときには鍵は要らないが、部屋の外からドアを開けるときには鍵が必要になります。

それにしても、トニーの部屋の鍵とスワンの部屋の鍵が触っても違いが判らないほどそっくりなのでしょうか?


3)映画批評家によるレビュー

Rotten Tomatoesによれば、批評家の一致した見解は「『ダイヤルMを廻せ!』はヒッチコックの最高傑作とまでは言えないかもしれないが、他のどんな基準から見ても、洗練された、ゾッとするような不気味なスリラーであり、さらにグレース・ケリーの忘れられない演技を見せてくれる作品である。」でした。

 

 

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4.まとめ

サイコパスや謎の組織など怪しくおかしい人物が出てくることが多いヒッチコック作品の中で、王道的な論述的ミステリーであり、そういう意味で異色の作品となっています。