映画『ワイルドバンチ』バイオレンス映画の巨匠サム・ペキンパーの傑作西部劇です!!

この映画『ワイルドバンチ(The Wild Bunch)』 は、サム・ペキンパー監督による1969年制作の西部劇で、時代の波に取り残された無法者たちの滅びの美学を描いた作品であり、西部劇に引導を渡した「最後の西部劇」と呼ばれています。
ペキンパーの最高傑作として高く評価されていて、定義にもよりますが「アメリカン・ニューシネマ」の一つとされています。

目次

 

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1.紹介

制作者と意見が合わずに、映画から遠ざかっていたサム・ペキンパーが、『ダンディー少佐』(1965年)以来4年振りに監督した作品です。
スローモーションを駆使し、とてつもないカット数でまとめ上げたバイオレンス描写がセンセーションを巻き起こし、その後の作品に多大なる影響を与えた、記念すべき作品でもあります。

そして、「最後の西部劇」らしくレジェンド俳優を配して、ペキンパーは派手なアクションだけでなく、金に執着し悪事を繰り返す無法者達が、友情のために命を懸けて散っていく、男の美学もきっちりと描いていて、西部劇ファンにはたまらない映画となっています。


2.ストーリー

1)プロローグ

20世紀初頭、アメリカ・テキサス州南部のとある街の街はずれで子どもたちが木箱の中で蟻に食われる蠍を無邪気に見つめている横を、馬に乗って通過していく男たちの姿がありました。

男たちの正体は「ワイルドバンチ」という強盗団で、白人とメキシコ人の仲間を統率していたのはパイク・ビショップ (ウィリアム・ホールデン)という老いた白人アウトローです。パイクはこの街の銀行に銀貨があるという噂を聞きつけ、街に入るやいなや銀行に強盗に入りますが、一行はすぐに隣の建物から狙撃隊が控えていることに気づきます。

狙撃隊を率いるのはディーク・ソーントン(ロバート・ライアン)という男で、元はワイルドバンチの一員でした。保安官に捕まったソーントーンは、刑の執行猶予と引き換えにパイクを捕らえる道を選んでいたのです。

ソーントーンが率いているとも知らず、パイクたちは狙撃隊に銃撃戦を仕掛け、街は一瞬で惨状と化します。ソーントーン、パイク両陣営はそれぞれ大きな被害を出し、一般市民も巻き添えで多くの死傷者を出していました。

そんな中でも、パイクはダッチ・エングストロームアーネスト・ボーグナイン)、テクターとライルのゴーチ兄弟(ベン・ジョンソンウォーレン・オーツ)、メキシコ人のエンジェル(ジェイミー・サンチェス)を連れてなんとか逃亡に成功します。街はずれにたどり着いたときには、子どもたちが蟻に食われる蟻が入った木箱に火をつけ笑っていました。


2)因縁の二人

その後もパイクたちは逃走を続け自らの根城に戻りますが、銀行から奪った銀貨の袋を開けてみると、中はただのワッシャでした。パイクたちは、ここでようやく自分たちがおびき寄せられていたことに気づくのでした。

 

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そして、その背後にはかつての仲間ソーントーンがいることを確信します。パイクは今回の仕事を最後にしようと考えていましたが、やむなくもう一度強盗をせざるをえない状況になってしまいます。パイクはダッチ、ゴーチ兄弟、エンジェル、そして根城で待機していたフレディ・サイクス(エドモンド・オブライエン)を連れ、メキシコの街アグアベルテに向かうのでした。

まさにそのとき、パイクとソーントーンはそれぞれ同じ過去を振り返っていました。一仕事を終え、パイクは女たちを侍らせながらソーントーンに「俺を信頼しろ」と言葉を掛けていました。しかし、その直後に保安官が部屋に押し入り、ソーントーンは逮捕、パイクは仲間を見捨て逃亡します。パイクとソーントーンはお互いに対してわだかまりを持っていました。


3)政府軍の横暴

アグアベルテまでの道中、パイクたちはエンジェルの故郷の街に立ち寄りますが、街は政府軍に略奪され、女子供や老人しかいない状態になっていました。

エンジェルは略奪を主導し父親を殺したマパッチ将軍(エミリオ・フェルナンデス)に強い恨みを持ちますが、それ以上にショックだったのは恋人テレサ(ソニア・アメリオ)が自ら進んでマパッチ将軍の愛人になったことでした。

 

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その一方で、街の人々はささやかながらもパイクたちのために宴会を開き、パイクはそのひとときに心の癒しを得るのでした。

その後、パイクたちは政府軍の駐屯地を訪れました。そこで、エンジェルは恋人テレサと再会します。テレサは故郷の村の貧しさを嫌悪していることをエンジェルに伝え、平然とマパッチ将軍と戯れ始めました。恋人の豹変に逆上したエンジェルは、テレサをその場で射殺し、政府軍に捕らえられてしまいます。


4)強盗計画

その一方で、パイクたちはアメリカ軍の銃を持っていることに目をつけられ、将軍の酒の席へと招かれることになりました。その場で、パイクたちはアメリカ軍の列車を強盗し、武器を奪うよう政府軍から依頼されます。

メキシコ政府はアメリカ軍の武器が欲しくてたまらないものの、アメリカとの友好関係を維持したいという事情がありました。そこで、ならず者のパイクたちに代わりに強盗させることを思いついたのです。

高額の報酬を提示されたパイクたちはその依頼を受け入れ、エンジェルの釈放も勝ち取ります。エンジェルは故郷の村を攻撃した政府軍のために働きたくないと主張しますが、奪った銃の一部を自衛の手段として村の人々に分け与えることを提案されると、強盗計画を受け入れるのでした。


その頃、ソーントーンはパイクたちの行動を予測していました。アグアベルテでマパッチ将軍と接触すれば、アメリカ軍の列車強盗を必ず持ちかけられるはず…そう確信したソーントーンは粗野な囚人たちを率いて武器を運ぶアメリカ軍の貨物列車に乗り込むのでした。


5)襲撃から追跡へ

パイクたちはアメリカ軍の列車が燃料補給で停車しているところを襲撃し、護衛の兵士を一人ずつ降伏させていきました。そして、武器を載せた先頭列車を切り離し、数キロ先にある荷馬車の元へと発進させることに成功します。

異変に気づいたソーントーンはすぐさま馬を出し追走しますが、その後をアメリカ軍が猛追してきました。兵器がパイクたちに盗まれたときアメリカ軍の兵士は皆居眠りをしており、強盗の犯人をソーントーンと勘違いしてしまったのです。

こうして、パイクら強盗団、ソーントーンら追跡隊、そしてアメリカ軍による三つ巴の銃撃戦が繰り広げられることになってしまいました。

橋を爆破したことでパイクたちはひとまず難を逃れることに成功し、さらに、崩れつつあった連携を再び取り戻しました。しかし、ソーントーンはなおも追跡をやめておらず、パイクは後方に目を光らせ続けねばなりませんでした。

加えて、パイクはマパッチ将軍への対策にも迫られていました。パイクはマパッチ将軍を信用しておらず、報酬を支払わず武器を強奪しようとしてくると予想していたのです。

 

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6)戦利品の引き渡し

エンジェルの仲間への武器引渡しも完了し、あとはマパッチ将軍に残りの武器を引き渡すだけとなりましたが、その道中、パイクら一行はマパッチ将軍配下の大軍に取り囲まれてしまいます。

パイクの予想通り、マパッチ将軍は武器強奪を実行に移したのです。しかし、パイクは武器にダイナマイトを事前に仕掛けており、さらにアメリカ軍の最新式の機関銃をマパッチ将軍の部下に向けました。

これにマパッチ将軍の部下はひるみ、パイクは有利な立場を利用してマパッチ将軍との面会の約束を取りつけることに成功します。

マパッチ将軍と面会したパイクは、巧みな交渉術で報酬額を引き上げ、さらに自らの安全を得るために複数回に分けて武器を引き渡す条件を飲ませるのでした。

引渡しは順調に進み、いよいよパイクたちは最後の引渡しを迎え、ダッチとエンジェルが武器を持ってマパッチ将軍の元を訪れていました。ところが、引渡しが終わるとエンジェルはマパッチ将軍に罪人として捕らえられてしまいます。
テレサの母親が娘を殺されたことを恨み、エンジェルが武器を村に横流ししたことをマパッチ将軍に密告したのです。


7)虎穴に入って

何もできずその場を後にしたダッチは、パイクにありのままを報告しました。ちょうどそのとき、ソーントーンら追跡隊が間近に迫ってきており、単独行動をしていたサイクスが重傷を負いながらも必死に逃走していました。

パイクはサイクスを見捨て、身の安全を確保するためにマパッチ将軍のいる村へと身を寄せることを決めますが、一行が村に着くと、そこにはなぶりものにされ、血まみれになったエンジェルの姿がありました。

 

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パイクはエンジェルを解放するよう掛け合いますが、マパッチ将軍は聞く耳を持とうとしませんでした。

その後、パイクたちには女があてがわれましたが、その間もエンジェルへの暴力は続いていました。時間が流れ、パイクたちはエンジェルを救出する決意を固めます。

一行はライフル銃を片手にマパッチ将軍の元へと赴きました。村人と兵士に囲まれながら宴会を楽しむマパッチ将軍に、パイクは「仲間を返せ」と要求しました。

すると、マパッチ将軍自らエンジェルをパイクに引き渡そうと立ち上がりました。しかし、引き渡す直前、マパッチ将軍はエンジェルの喉をナイフで切り裂いてしまいます。パイクたちはすかさずマパッチ将軍に銃を放ちました。

 

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8)銃撃戦

マパッチ将軍の死から数秒間の沈黙を経て、パイクたちとメキシコ政府軍との激しい銃撃戦が始まりました。数的には圧倒的に不利ではあったものの、パイクたちは機関銃を奪い奮戦します。

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銃撃戦は長時間に及び、パイクたちは政府軍の戦力の大半を倒しますが、ついに全員銃弾に倒れ壮絶な最期を迎えました。村は全滅状態となり、人肉を求めてハゲタカが群がり始めました。

そこに、ソーントーンが現れました。ソーントーンはかつての友人のパイクの元に行き、彼のホルスターから拳銃を取り出しました。

そして、村の塀に腰掛けていると、追跡隊の囚人たちが駆けつけ略奪を始めました。やがて、囚人たちは賞金首のパイクたちの遺体を抱えて出て行き、生き残った人々もまた村を後にしました。


9)エピローグ

それからしばらくしてから、遠方で銃声が鳴り響きました。その後、サイクスが仲間を連れてソーントーンの前に姿を現しました。サイクスはエンジェルの故郷の村人に助けられていたのです。

サイクスは追跡隊の囚人たちを全員殺したと言い、ニヤニヤと笑顔を浮かべてこれから仲間とともに強盗しに行くことをソーントーンに伝えました。

 

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そして、サイクスはソーントーンに仲間に加わるよう誘いを持ちかけます。ソーントーンは力なく笑いながら立ち上がり、サイクスとともに村を出発しました。

 

 

 

 


3.四方山話

1)銃撃戦シーン

ペキンパーは本作品でスローモーション撮影と当時のカラー映画最多の3600カットを駆使し、アクション映画における暴力描写に新境地を切り開きました。

特に6台のマルチカメラを用いて11日間ぶっ通しで撮影されたというラストの壮絶な大銃撃戦は、「デス・バレエ」(死のバレエ)、「ボリスティック・バレティックス」(弾道バレエ)などと呼ばれ、後続の映画製作者たちに多大な影響を及ぼしました。


2)後塵の悔しさ

スローモーションによる強烈なバイオレンスをアーサー・ペンの『俺たちに明日はない』に先を越されてしまった悔しさからか『ワイルドバンチ』の撮影現場で「俺たちで『俺たちに明日はない』を葬り去るってやる!!」とペキンパーが何百もの弾着を仕掛けながらそう言っていたと衣装係のゴードン・ドーソンは回想しています。


3)評価

第42回アカデミー賞で作曲賞と脚本賞にノミネートされましたが、受賞には至りませんでした。1998年にアメリカ映画協会が選んだ映画ベスト100中第80位、2007年に更新されたリストではベスト100中第79位にランクインしました。1999年にはアメリカ国立フィルム登録簿に登録されています。


4)バリエーション

公開当初のオリジナル版は上映時間が2時間14分。後にペキンパー自身が再編集したものがディレクターズ・カット版があり、こちらが一般的なようです。

さらに、この映画には別に「アルバム・イン・モンタージュ」というメイキングフィルムが存在しますが、それによると映画史に残る有名なシーンのパイクとその仲間たち4人が「最後の仕事」にむかう場面は即興で撮られたそうです。

その後に起こるあの壮絶な銃撃戦はこの映画の終わりであると同時に、西部劇の歴史のひとつの終わりであるようにも思えます。


4.まとめ

西部劇ファンにとっては、オールスターキャストのドリームフィルムです。そしてそのそれぞれが見事に持ち味を見せています。

そして、サム・ペキンパー監督をはじめ、そのオールド・オールスターズのすべては、すでに物故されています。しかしながら彼らの残してくれた映像はいつまでも輝いています。