映画『西部魂』これも西部劇の傑作と言っていいでしょう?!


この映画『西部魂(Western Union)』は、ゼイン・グレイ、1939年の小説『Western Union』を原作とした、監督フリッツ・ラング、出演はランドルフ・スコット、ロバート・ヤング、ディーン・ジャガーなどによる、1941年のアメリカ合衆国の西部劇映画です。

目次

 

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1.紹介

西部開拓時代を舞台にウエスタン・ユニオン電信会社による大陸横断通信網の敷設工事をアメリカ先住民の襲撃やアウトローとの戦いを交えて描いていいます。

男の友情、先住民や無法者との戦い、そして恋など、西部劇としての見どころ満載の内容に加え、ユーモアをまじえたフリッツ・ラングのシャープな演出が光り、見応えある作品に仕上がっています。

ファーストクレジットは東部から来た若い技士ロバート・ヤングなのですが、無法者としての過去を隠しながら工事に加わる男を熱演するランドルフ・スコットが存在感を発揮し、また、実業家として知られるエドワード・クレイトンを演ずるディーン・ジャガーが、統率力のある人物を印象的に演じています。


2.ストーリー

1)プロローグ

1861年アメリカ西部、逃亡中の無法者ヴァンス・ショー(ランドルフ・スコット)は、怪我をした愛馬スパイダーを放し、出くわしたエドワード・クレイトン(ディーン・ジャガー)の馬を奪おうとします。

ショーは、意識を失ったクレイトンが、馬に蹴られて怪我をしていることを知り、見捨てることができずに手当てをしました。

追っ手が近づき身を潜めたショーは、クレイトンを連れて移動します。駅馬車発着所に着いたショーは、クレイトンから、助けた礼に馬を譲ってもらいその場を去りました。

手当てを受けたクレイトンは、電信会社のウエスタン・ユニオンの測量技師であることを、介抱してくれた男たちに明し、銀行強盗が逃亡中だと知りました。

その後、回復したクレイトンは、世話になった者たちに感謝して駅馬車で旅立ちました。


2)ウエスタン・ユニオンの労働者を募集

ネブラスカ準州オマハでは、ウエスタン・ユニオンの労働者を募集していました。マードック医師(ジョン・キャラダイン)は、その場を去ろうとしたコックのクッキー(スリム・サマーヴィル)を引き止めます。

 

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クレイトンは、馬を見に行っている妹のスー(ヴァージニア・ギルモア)の元に向かい、スーに話しかけようとしたクレイトンは、彼女と一緒にいた男がショーだったために驚きました。

二人は何も語らず挨拶しただけで、ショーは町を去ろうとします。それを知ったクレイトンは、ショーを引き止めてスカウトとして雇ことになりました。

ハーバード大学出身の技士リチャード・ブレイク(ロバート・ヤング)が町に到着し、事務所にいたスーにからかわれるものの気にしません。

クレイトンに挨拶したブレイクは、ホーマー・ケトル(チル・ウィルス)とパット・グローガン(マイナー・ワトソン)らを紹介され、ホテルに向かおうとします。

スーに惹かれたブレイクは、彼女に話しかけてその場を去り、荷馬車を見ていてもらっていた男性が、暫定知事(ラッセル・ヒックス)だと知っても驚きもしませんでした。

クレイトンと話したスーとホーマーは、ブレイクが富豪の息子で、父親が5万ドルを寄付したことを知り驚きます。その後、服装だけは西部の男らしくなったブレイクは、ショーやスーそしてクレイトンらの前で荒馬を乗りこなし余裕を見せました。

スーは、そんなブレイクが気になる存在になりました。事務所に向かったブレイクは、その場にショーがいることを知り、2人はスーに挨拶して立ち去り、互いに牽制し合うのでした。

 

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3)始まった妨害

7月4日、独立記念日に、盛大な式典と共に電信工事は始まり、次々と電柱が立てられ、クレイトンらはソルトレイクシティを目指します。

兄をブレイクとショーに任せたスーは、彼らと別れましたが、現場の初日の作業が終り、一旦、町に戻ったショーはスーに会いに行くものの、その場にはブレイクがいました。

その後、牛追いのハーブ(ジョージ・チャンドラー)が先住民に襲われる事件が起きました。ポーニー族はバッファローを狩ることを知るショーは疑問に思い、それをクレイトンに伝えて一人で調べに行きました。

犯人を見つけたショーは、それが、先住民に扮していたかつての仲間ジャック・スレイド(バートン・マクレーン)らでした。

牛を奪ったスレイドからそれを取り戻そうとしたショーは、彼が従おうとしないために一旦、その場を去り、クレイトンの元に戻ったショーは、牛は見つけたが取り戻せないので、先住民に貸しを作るべきだと伝え、ショーは責任を取ってやめようとするものの、クレイトンに引き止められるのでした。

スーが現れたために驚いたクレイトンは、ブレイクが通信士として呼んだと考え、オマハに戻るよう彼女に言い聞かせます。クレイトンは納得したスーをショーに任せ、仕事に出かけました。

出発するスーに思いを伝えるショーは、2年前に会いたかったと言いながら、彼女を見送ろうとします。過ちを繰り返したことを後悔するショーは、過ちは正せると言われるものの、無理だとスーに伝えるのでした。

駅馬車が到着し、御者(フランシス・フォード)を呼び止めたクッキーは、それに乗ろうとするものの、チャーリー(ヴィクター・キリアン)に引き止められます。

駅馬車に乗ったスーは、見送ってくれるショーに目的地のソルトレイクシティで会うことを約束し、お守りだと言ってペンダントを渡しました。

 

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4)ショーへの疑惑

その後、測量をしていたブレイクは、先住民がこちらに向かっていことを確認します。野営地に戻ろうとしたブレイクは、途中で出くわしたホーマーから、電信で知らせるようにと言われて準備をします。

ブレイクからの電信で先住民の襲撃を知ったクレイトンは、彼らの元に部下を向かわせました。

先住民が追いつき、酔ったリーダー(チーフ・サンダークラウド)は酒を要求し、測量機を奪おうとしたためにショーが取り戻します。しかしながら、抵抗したリーダーを射殺したブレイクをショーは殴り倒しました。

そこに野営地から仲間がが現れ、先住民たちは逃げ去りました。

ショーとブレイクは言い合いになり、電信の連絡で野営地が先住民に襲われたことが分かります。ホーマーは、電柱の上で矢を受けて死んでいました。

犠牲者を出しながらも何とか先住民の襲撃を凌いだマードックは、白人が先住民に扮していたことを知りました。それをマードックから知らされたクレイトンは、ショーに意見を求め、何も答えない彼に、白人が先住民を酔わせてけしかけた可能性があるという考えを伝えるました。

クレイトンは、牛を盗んだのが先住民だったことをショーに確認し、そうだと思うと言う彼に現場監督を任せるのですが、ショーを疑い始めたブレイクは、その考えをクレイトンに伝えるのでした。


5)先住民との対峙

翌日クレイトンは、ブレイクとショーと共に、奪われた馬を補充するために町に向かいました。クレイトンは、その場にいたスレイドがショーを知っていることを気にしながら、売ろうとする馬は自分のものだと言って、それを確かめようとします。

先住民が奪ったものを買い取ったと言うスレイドの話を聞いたクレイトンは、5000ドルですべてを買い取る取引をして、次は殺すと彼に伝えて酒場に向かいました。

クレイトンからスレイドのことを訊かれたショーは、同じ町で育ったと答えました。クレイトンから5000ドルの小切手を受け取ったスレイドは、今後も彼をカモにしようと考えるのでした。

その後クレイトンは、騎兵隊のハーロウ大尉(アディソン・リチャーズ)から、スー族の部族長が電信線を引かせないと言っていることを知らされました。

理由は息子が撃たれたからだということであり、クレイトンは、自分たちが襲われたことを伝えますが、それを否定するスー族が、酒を飲まして馬泥棒を誘った白人を責めろと言っているということを知ったクレイトンは、政府の方針なので工事は続けるとハーロウに伝えました。

クレイトンは、自分が族長と交渉することをハーロウに伝えてその場を去り、ブレイクとショーと共にスー族の元に向かったクレイトンは、族長スポッテッドホース(チーフ・ジョン・ビッグツリー)と話をします。

電線は魔除けだと言うクレイトンは、族長にそれを信じさせるために、戦士10人に電線をに握らせて証明しようとし、ブレイクは地面に水をまき、戦士たちが握った電線に電流を流します。

感電した戦士たちを見た族長は、電線が魔除けになることを信じて、クレイトンに工事を進めることを許しました。


6)襲われた野営地

その後、作業は順調に進み、ソルトレイクシティは目前となったとき、スレイドが撃たれたということを知らされたショーは、彼らの元に向かいました。

罠に嵌り、捕らえらえたショーはスレイドの元に連れて行かれ、野営地に放火することを知らされ、スレイドは、仲間に加わることを拒むショーを拘束して野営地に向かいました。

ショーは、焚火の火を利用して縛られたロープを焼き切ろうとし、拘束を逃れたショーは、馬で野営地に向かいました。

ブレイクらは、野営地の周囲に火を放ちました。

クレイトンは、ショーが馬で出掛けたことをブレイクから知らされ、それが気になりました。クレイトンらは湖に向かい、ブレイクは放火だと気づきました。

その場に戻ったショーは、仲間たちを助けました。

翌朝、何とか避難したクレイトンは、火傷の手当てをしたショーと話し、放火の証拠であるオイルの瓶を見せました。クレイトンは、真実を話すべきだと言っても何も語らないショーに、去るようにと告げました。

ショーは、別れを告げるブレイクに、スレイドが自分の兄であることをクレイトンに知らせてほしいと言い、スレイドにはウエスタン・ユニオンの邪魔はさせないと言い残し、ショーはその場を去るのでした。


7)最後の対決

町の床屋にいたスレイドは、ショーが現れたことを知り、その場で待ちます。右手の包帯を外したショーは床屋に向かい、スレイドから再び仲間に誘われました。

それを断ったショーは、決着をつけに来たと言ったとき、スレイドは隠し持っていた銃を発砲し、銃弾を受けたショーは反撃します。

その場にいた手下を倒したショーでしたが、スレイドに射殺されました。ショーの死を確認したスレイドは、現れたブレイクと撃ち合いになりました。

ブレイクは、銃弾を受けながらもスレイドを倒し、ショーが持っていたスーのペンダントに気づくのでした。

その後、ショーは電柱が並ぶ場所に埋葬され、工事は終了しました。


8)エピローグ

ソルトレイクシティでは、ブレイクらと共に開通を祝うクレイトンは、電信を打つ音が”ミュージック”だと思えました。

クレイトンは、それをショーに聴かせたかったと言うスーに、遠い場所に眠っていても、彼はきっと聴いていると言いました。


3.四方山話

1)息抜き

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ストーリーと関係ないところでのギャグも巨匠ラングらしく、ここでも、コメディリリーフのコックが、いろいろ笑わせます。

揺れる馬車の中で調理をするために指を切ってしまい、指が包帯だらけになってしまったりとか、牛が盗まれてしまったために料理の材料がなくなり、作業用のロバをいとおしそうに撫でたりとか、自分だけに特別にとっておいた料理の皿を転んでひっくり返したりとか、他愛もないギャグですが、ストーリーの息抜きになっています。


2)賛辞

全体のタッチはジョン・フォードのおおらかな西部劇にも通じるものがあり、ヨーロッパ出身のラングが監督した作品とは思えなくもあります。

実際、ラングは西部開拓者の生き残りから「西部の精神を再現した映画」との賛辞の手紙をもらい、自慢していたという話も伝わっています。


3)ランドルフ・スコット

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もはや日本では半ば忘れかけられた感のある俳優ランドルフ・スコットですが、かつてのハリウッドでは、ジョン・ウェインゲイリー・クーパーにも負けないほどの人気を誇る西部劇スターでした。

34年間のキャリアで、実に100本以上もの映画に出演したと言われるスコットですが、そのうちの半分以上が西部劇で、若い頃はハンサムな顔立ちと立派な体格で、見栄えだけはいいが演技は大根と呼ばれました。

B級西部劇のヒーローか大物女優の相手役が関の山であったものの、年齢を重ねるごとに渋い存在感と人間味のある芝居を身につけ、50歳を過ぎたあたりから本格的に人気が爆発しました。’50~’53年にかけては、ハリウッドのマネー・メイキング・スター、つまり最も興行価値の高い映画スターのトップ10に4年連続でランクインしています。


4.まとめ

ナチスドイツから逃れ、アメリカに渡ったラング監督が、もっともアメリカらしい西部劇を典型的な西部劇として撮ったラング監督のアメリカへのオマージュのように思えます。