映画『四十七人の刺客』異色の忠臣蔵です?!

この映画『四十七人の刺客』は、「新潮書下ろし時代小説」として1992年9月に新潮社から書き下ろしで刊行された池宮彰一郎の長編時代小説を原作としています。

「日本映画誕生100周年記念作品」として東宝の威信を賭けて製作され、市川崑監督、高倉健主演により1994年10月22日に公開されました。

目次

 


1.紹介

赤穂浪士が討ち入りに至るまでを、主君への忠義といった要素を排して、大石ら赤穂浪士と吉良家・上杉家との謀略戦として描いています。

従来の忠臣蔵に比べて浅野内匠頭の刃傷や切腹の描写を大幅にカットし、内蔵助と米沢藩江戸家老の色部又四郎との駆け引きを物語の中心に描き、そこに内蔵助に想いを寄せる女達が花を添えています。

この作品で色部を演じた中井貴一が第18回日本アカデミー賞の最優秀助演男優賞を受賞しています。

主演の高倉健にとっては、1968年の『祇園祭』(松竹)以来、かつ生涯最後の時代劇作品です。


2.ストーリー

1)プロローグ

元禄15年10月のこと、元赤穂藩国家老、大石内蔵助高倉健)の一派は藤沢の宿を出て江戸へと向かっていました。元藩士の未亡人きよ(黒木瞳)が営む鎌倉の料理茶屋で、仲間と落ち合い旅を続けます。

身分を隠しながら旅を続ける大石達の旅は、主君の敵、吉良上野介西村晃)を討つべく江戸への旅でした。投宿した屋敷で浪士達と盛んに議論を交わす合い間に、竹林で子供達と竹を削って討ち入りの際に合図として使う笛を作る大石でした。

 

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2)松之廊下刃傷事件勃発

時は遡って元禄14年3月14日、江戸城柳の間で赤穂藩主、浅野内匠頭橋爪淳)が吉良上野介を切りつけた事件、いわゆる「松之廊下刃傷事件」により内匠頭は切腹赤穂藩は取り潰されました。

内匠頭に腹を切らせた一方で、吉良に下った裁決は「お咎め無し」。“喧嘩両成敗”の原則を覆すこの幕府の裁断は、時の老中・柳沢吉保石坂浩二)と、吉良の息子が藩主として養子に入っている米沢藩江戸家老、色部又四郎(中井貴一)との謀略によるものでした。

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赤穂で妻子と共に穏やかに暮らしていた家老の大石内蔵助にもこの知らせが届きます。

開城か籠城かで揉める藩士達を制して、城を明け渡す決断をした大石には、実は吉良を成敗する決意と一方的な裁断を下した幕府への復讐心に燃えていました。


3)赤穂藩改易

開城を宣言した日の夜、大石は、赤穂藩の塩田に不破数右衛門岩城滉一)ら腹心の部下を呼びつけ、その想いを打ち明けます。一同は武門の意地を通し吉良を殺害することを誓い合いました。

大石は、不破を大阪へ送り出し、赤穂の名産品である塩の相場をいち早く操作し、その塩の売上によって潤沢な軍資金を調達することに成功しました。

素知らぬ顔で大石は家族と共に山科へ隠遁するのも、つかの間、平和に暮らしながらも密かに軍備を整えて、緻密に計画を練っていました。さらに、吉良のいる江戸にも部下達を送り込み、「内匠頭が吉良に切りつけたのは上野介が金に汚く、内匠頭にしつこく賄賂を要求したせいだ」という噂を流します。

内匠頭に同情的になった江戸の世論は浅野の味方に傾いてゆき、吉良の評判は地に落ちました。身に覚えの無い上野介は降って沸いたような人々の非難の声に困惑はしますが、本当に命を狙われているという危機感は薄く、色部をやきもきさせるのでした。


4)大石の策謀

そのうえ、大石達は「赤穂浪士が吉良邸に討ち入る」という噂を流して吉良邸の周囲に屋敷を構える他の大名達の不安を煽ります。遂に柳沢の決定によって、吉良は屋敷を討ち入りの難しい江戸城御府内から転出を余儀なくされました。

これまで浅野との一件で、幕府からお咎め無しとされて守られてきた吉良は、幕府の庇護を失ったのです。それは柳沢の権勢と、藩主の実父を守るために働いていた色部も、柳沢に見捨てられるような形になったということでした。

当代一の切れ者と言われた色部は、いよいよ意地でも吉良を守るという決意を固めます。そして赤穂浪士を迎え討つべく強固な要塞のように吉良の屋敷が整えられました。

色部は一部の赤穂の浪士達に仕官の口などを持ちかけて、隊の内部からの切り崩しに取りかかります。一年以上におよぶ浪人生活への不安や、親族への義理立てなどから、幾人かの仲間は隊を離れて行きました。色部は、その裏で渋る上野介に隠居を迫ります。

一方、京都に隠れ住みながら着々と江戸での討ち入り準備を勧めていた内蔵助は、可憐な町娘、一文字屋のおかる(宮沢りえ)と知り合って惹かれ合い、やがておかるは大石の子を宿しました。そしてついに大石が江戸に向けて旅立つ時となります。ただの仕事と信じて大石を送り出したおかるは、二度と大石に会うことはありませんでした。

 

5)吉良邸討入り

色部は何とか上野介に米沢への隠遁を承諾させました。しかし色部の心配をよそに上野介は米沢行きの前に江戸で盛大な茶会を催す事を決めます。色部は茶会の候補日を3日決めておき、実際の茶会の日はギリギリまで明かさないという作戦で浪士達を撹乱しようとします。

しかしながら、大石達は12月14日が本当の茶会の日であることを突き止め、その日の深夜大石以下47人の刺客が吉良邸になだれ込みました。

水壕が走り、迷路のように入り組んだ吉良の屋敷に苦戦しながらも奮戦の末、浪士達は抜け道から出たところを小屋に吉良上野介を追い詰めます。上野介は、寝間着で小屋の角に追いやられ、取り乱して命乞いをします。

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「内匠頭が刃傷に及んだ理由を知りたくないか」と言う上野介に、内蔵助は、ただ一言「知りとうない」と答え、上野介を斬り殺しました。

自邸で討ち入りの報を聞いた色部は半狂乱になって吉良邸へ駆けつけようとし、家臣達に押し止められます。当代一の切れ者といわれた色部又四郎もついに知略において大石内蔵助に負けたのでした。

 

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6)エピローグ

数日後、京都にいる身重のおかるのもとへ、討ち入り前日に大石から意を含められて逐電した瀨尾孫左衛門が訪ねて来ます。瀨尾に気がついたおかるは、大石からの知らせかと嬉しげに駆け寄るのでした。

 

 

 

 

 


3.四方山話

1)本作の忠臣蔵の特徴

①謀略戦

己の権勢を誇示するために浅野内匠頭切腹を命じ、さらには赤穂藩を取り潰した幕府を仇討ちによって、その面目を叩き潰そうと目論む大石内蔵助吉良上野介を彼らから守る事によって幕府の権勢を維持しようとする米沢藩江戸家老・色部又四郎。この2人の謀略戦でした。


②恋バナ

大石と一文字屋の娘・かるとの恋。他に大石は序盤で外で作った仔を内に入れ妻りくに面倒を看させ、挙句の果てにかるを身ごもらせます。さらには、あろうことか家来の瀬尾孫左衛門をりくの面倒を看させるために逐電させます。


③キャラ描写

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本作は、忠臣蔵の大まかなあらすじを知ってから観るのが前提となっていて、この時点でかなり不親切なのですが、キャラ描写にも偏りがあって、主要キャラとしては、内蔵助は他の忠臣蔵作品と同様に活躍シーンが多いのですが、けっこう立ち回りをして、吉良の首まではねてしまします。

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堀部安兵衛(宇崎竜童)に裂かれるシーンはほぼく、討ち入られる側の吉良の登場シーンも最小限に抑えられています。かわりに吉良側の話の中心になるのが、中井貴一の演じる、米沢藩上杉氏家老の色部です。

他の忠臣蔵を扱った作品では、吉良の孫で米沢藩主になるため養子に出された上杉吉憲が、祖父を助けようと出兵するところを諌める役になることが多いのですが、本作だとガッツリ事件に関わる形となっており、赤穂浪士の討ち入りを阻止しようと奔走します。

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④尺

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問題は唐突に、かると内蔵助の逢瀬が描かれることです。このシーンも淡々としていてなんのために入れたのかが正直わからないレベルで、無駄とも思えるシーンの挿入がさらにこの作品を退屈にしています。ちなみに、この作品はメインイベントとなる討ち入りシーンが15分程度しかありません。2時間を超える尺も、りく関連のシーンを全部カットすれば、こういった間延びしたシーンを観ることもなく、また、楽に2時間の放送枠に収まるでしょう。
もっとも、エンディングがりくなので終わりが無くなってしまいますが。


⑤他にない良いところ

所々にこの映像は良いと思える部分はあって、討ち入り直前のシーンとか。討ち入りのシーンで長期戦を考え、美作屋の握り飯や水の手配、刀が刃こぼれした時のために代用の刀を用意している細かさも「七人の侍」のオマージュみたく好感が持てました。


4.まとめ

新しいことをしようとする熱意は伝わってきますが、全て裏目に出てしまっているのがこの作品で、吉良を討ち取った後、街を行進するシーンも省かれてしまっているため、爽快感があまりなく、討ち入り後の浪士の切腹シーンもないため、悲劇性も強調されません。

やはり忠臣蔵は観飽きたとは言いつつも、お約束のシーンを思い浮かべさせてしまうと、この新しい試みの敗北と言えなくもないでしょう。

 

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