映画『七つの会議』池井戸潤の『半沢直樹』の世界がよみがえりました?!

この映画『七つの会議』は池井戸潤の原作を、監督福澤克雄で、野村萬斎主演の2019年公開の映画です。

目次

 

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1.紹介

福澤克雄監督は『半沢直樹』(2013年版)『ルーズヴェルト・ゲーム』『陸王』『下町ロケット』とTBS系「日曜劇場」枠において数々の池井戸作品を手掛けています。

音楽もこれらの作品を手掛けた服部隆之が担当していて、他にも、日曜劇場を放送するTBSテレビが制作に深く関与しています。また、キャスト面でもこれらの作品の出演者が多数本作にも出演しています。


2.ストーリー

1)プロローグ

中堅電機メーカーの東京建電、鬼とも呼ばれる営業の絶対的な存在北川誠営業部長(香川照之)のもと、厳しい会議が開かれます。

エース坂戸宣彦営業一課長(片岡愛之助)の花の営業一課に対して、原島万二(及川光博)が課長を務める二課は地獄と呼ばれるほど業績も扱いも社内では悪い立場でした。

ただ、一課には北川の眼の前でも居眠りをするぐうたら万年係長ハッカクこと八角(ヤスミ)民夫(野村萬斎)がいました。

原島としては八角位のお荷物は、一課のハンデとしてちょうどいいという思いでした。

 

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2)パワハラ事件

そんなある日、突然、坂戸がパワハラで訴えられました。なんと訴えたのは八角です。

確かに坂戸課長は仕事に対して厳しい男でしたが、相手が八角であれば大したことにはならいと思われましたが、なんと訴えは受け入れられ、坂戸は一課長の座を外されることになります。

空席となった一課長の席に座ることになったのはカス呼ばわりされていた原島でした。

急な出来事に戸惑う原島、寿退社を控えた浜本優衣(朝倉あき)もまた同じ思いでした。

原島は、八角が何かを仕掛けたと思い、彼の行動を追います。すると、八角は北川部長と同期入社で、ある時期まで驚異的な数字を挙げた敏腕営業マンだったのです。

さらに坂戸が退任すると同時に、トーメイテックというベンチャー企業から一度は契約を切った町工場のねじ六に転注があったことを突き止めました。

 

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3)関係者の左遷人事

営業部門の足を引っ張りたい経理部門は、明らかにコストが上がるこの契約に疑問符を付けますが、北川部長はもちろん社長の宮野和広(橋爪功)までこの新契約を容認する姿勢を見せます。

八角と営業部の動きを探った新田雄介経理課課長代理(藤森慎吾)や佐野健一郎カスタマー室長(岡田浩暉)は、唐突な人事で地方に左遷されます。

 

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営業課内だけでなく、社内の人事にまで影響力をみせる八角の動向を探る原島と優衣ですが、その動きは八角にすぐに見透かされて、これ以上探ると戻ることはできないと忠告を受けます。


4)ネジの強度不足

恐怖心に近いものも感じた二人ですが、坂戸が出社もせず家にもいないことから、坂戸の過去を探り始め、そして、見えてきたのは椅子に使用されたネジの強度不足でした。

下請けのトーメイテックを巻き込んで、データを改ざんし、コストを下げていたのでした。

八角は、事実を知った原島と優衣を自分の側に引き込みます。

一見、坂戸の一存で決めたような不正ですが、事の重大さからもっと上層部の人間から発信されているのではというのが、八角の読みでした。

坂戸は北川部長からトーメイテックを紹介されていたのが解ってきます。

北川部長と社長の宮野は、ネジの使用状況を把握したのち事実を公開するという約束の上で、八角に事実の隠蔽を命じていました。

トーメイテック製造のネジの使用は旅客機や鉄道などまでに及び、リコールとなれば東京建電はおろか、親会社のゼノックスの経営すら危うくするものでした。

宮野社長は事実を把握したのち、八角との約束を反故にして隠蔽と闇回収を命じます。

 

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5)御前会議

裏切られた八角は、ゼノックスからの出向組の村西京助副社長(世良公則)にこの事実を伝えます。

村西副社長は親会社のゼノックスに報告、ゼノックス社長徳山郁夫(北大路欣也)、梨田元就常務取締役(鹿賀丈史)が出席する通称“御前会議”の議題として挙がります。

宮野社長は営業部の暴走であり、自分は被害者であるという立場を主張していましたが、北川部長にトーメイテックを薦めたのは宮野社長でした。

坂戸、北川部長に責任を負わせようとした宮野社長でしたが、八角の追及により宮野社長の直接的な関与が明らかになります。

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6)本当の黒幕

更に御前会議では、宮野社長が不正に動いたのは、かつて製造部門の責任者だった時代に不正に目をつぶったことが原因だと吐露します。

そして、当時の営業部門の長で八角・北川の上司だったのは、目の前に座るゼノックスの現常務梨田なのでした。

八角は社会の常識や価値観より、会社のそれが重視される風土に問題があると徳山社長に訴えます。

八角はその風土があったために、ゼノックスと直接つながっている村西副社長経由で徳山社長に訴え出たのでしたが、徳山社長もまた隠蔽を命じました。

しかし、働くことに“正義”を求める八角は、マスコミに情報をリークします。

ことが明らかになり、宮野社長、梨田常務は失脚、東京建電は残務整理のみの会社となりました。


7)エピローグ

その残務処理に残ったのは、課長の原島八角で、そこにドーナッツ屋に転職した優衣の姿がありました。

会議の時間を知らせに来た原島に対して八角は、「居眠りの時間だ」と笑って返すのでした。

 

 


3.四方山話

1)「七つの会議」のタイトルの意味は?

原作は連作短編集の「7つの短編」で7人の主人公がいて、解決編となる8章目があるため、こういったタイトルが付けられたのかもしれません。

ちなみに本作であった会議は…

①冒頭の営業成績報告会議
②「パワハラ委員会」の会議(人事会議?)
③ドーナツ無人販売の「職場環境改善会議」
原島が一課長になった後の「営業成績報告会議」(吐いてましたね)
経理部が報告した「役員会議」
⑥屋上での会議(事情を知る者の話し合い)
⑦終盤の「御前会議」

これが公式の答えではなく、福澤克雄監督も「会議が七つあるわけではない」と会見で言っている様に、公式にはタイトルの意味の発表はありません。


2)原作について

本作の原作「七つの会議」は、2011年5月から2012年5月まで「日本経済新聞電子版」に連載され、単行本化の際に1話を加筆し、8話構成の連作短編集として、主人公はそれぞれにあって、2012年11月5日に日本経済新聞出版社より刊行されました。

2013年には、東山紀之主演でNHKによりテレビドラマ化されています。


3)原作者の言葉

池井戸潤

「実は映画の八角は、原作のイメージとかけ離れたものだったので、きっと萬斎さんは小説を読んでないと勝手に決めつけておりました。でも、対談をさせていただき、原作をしっかり読み込んで臨まれたと聞いて驚きました。天賦の才以外のなにものでもありません。演者としての間口の広さ、奥深さに感銘を受けました」

と池井戸は大絶賛しました。

野村萬斎は「身に余るお褒めのお言葉をちょうだいし、恐悦至極でございます」と恐縮しています。

 

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4)アワビの地獄焼き

TOHOシネマズ六本木ヒルズの舞台挨拶で

香川照之は、冒頭で部下たちを叱責するシーンに全力投球したそうで

「萬斎さんは(ぐうたらな役なので)ただ寝てるだけ。誰がエンジンを回すんだ?ってことで、僕が回さないとしょうがないと。『七つの会議』は1ラウンドからいかなきゃダメだ」

と舞台挨拶の場で言っています。

野村萬斎は笑いながら

「人の台詞を食いまくってしゃべるなあ」

と言うと、及川光博

「せっかく覚えてきた台詞をね(苦笑)。でも、それがすばらしかったというか、助かりました。僕は1ラウンドでノックアウトで、おえって吐いてしまった」

と香川の熱演を称えています。

さらに及川は香川の表情筋のすごさについて「鉄板焼きのアワビのよう」とたとえると、香川は「僕はアワビ俳優!?」と笑い、及川は「アワビの地獄焼き」と言うと、会場は爆笑の渦に包まれました。

 

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4.まとめ

原作では各登場人物の視点で物語が群像劇的に描かれていて、本作ではほぼカットされていたカスタマー室の佐野が関わる「編集会議」などもあります。

もっと細かいことを言えば、トーメイテックと東京建電の両社長がネジの不正を企てる場面や、ラストの弁護士による事実調査委員会も会議に含んでいいかもしれません。

また、キリスト教の「七つの大罪」や会社を潰す「七つの悪」などを引っ張ってくる人もいます。ことここに至っては「七つ」に拘るのは無意味に思われます。

どうして映画化したときに新しい題名にしなかったのでしょう。