映画『黄色いリボン』これぞ名作西部劇の1本です!!

この映画『黄色いリボン(She Wore a Yellow Ribbon)』は、1949年製作のアメリカ映画で、ジョン・フォード監督、ジョン・ウェイン主演の西部劇です。

ジョン・フォード監督作品の中の「騎兵隊3部作」と評される『アパッチ砦』、『リオ・グランデの砦』と並ぶ第2作にあたります。

目次

 



1.紹介

モニュメントバレーの見事なロケと、バファローの大群や、馬の暴走場面など見所も多く、行軍する部隊のバックに広がる原野に鳴り響く 稲妻が光る映像は特に素晴しく、その撮影映像は出色です。

1950年の第22回アカデミー賞では、3部作の中で唯一のカラーである本作で、ウィントン・C・ホックが見事に撮影賞(カラー)を受賞しました。

フォード作品はどれもが詩情豊かではありますが、特に本作は退役軍人の物語であり、人情にこだわるフォード監督の思い入れが強く感じられます。

特に、ジョン・ウェインが、亡き妻の墓前で、淡々と墓石に語りかけるシーンや、焼き討ちで殺された二等兵の武勲を称えて埋葬するシーンの、映像の美しさと落ち着いた雰囲気で見せる描写と演出は秀逸です。

 

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2.ストーリー

1)プロローグ

1876年に、第七騎兵隊は全滅し、カスター将軍が戦死、先住民は蜂起し猛威を振るい始めて、騎兵隊との戦いに備えていました。

西部の辺境の地であるスターク砦では、40年の長きに渡り兵役を勤めた老兵ネイサン・ブリトルズ大尉(ジョン・ウェイン)が、6日後に退役を控えていました。


2)スターク砦の面々

ブリトルズ大尉は、閲兵の迎えに来たクィンケノン曹長(ヴィクター・マクラグレン)と共に、自分の退役の日を改めて確認し、制服を着て部隊の方に向かおうとします。

そこへ、シャイアン族の襲撃を受けた駅馬車を、砦に運んだタイリー軍曹(ベン・ジョンソン)の報告を受け、ブリトルズ大尉は警戒を強めました。

暫くすると、砦の司令官マック・オールシャード少佐(ジョージ・オブライエン)の姪オリヴィア・ダンドリッジ(ジョーン・ドルー)は、ロス・ペネル少尉(ハリー・ケリーJr.)と馬車で、ピクニックに出かけようとします。

それをフリント・コーヒル中尉(ジョン・エイガー)に制止され、オリヴィアは彼の嫉妬だと決め付けて抗議しました。

そこにブリトルズ大尉が現れ、コーヒル中尉が非常時に女性の外出を止めたことは正しいと伝え、ペネル少尉が独りでピクニックに向かうことは許可されました。

 



3)最後の任務

その後、オールシャード少佐に第七騎兵隊の最終報告が届くと、戦死者の中にはブリトルズ大尉の知人も多くいました。

9年前に亡くなった妻の墓参りをしたブリトルズ大尉は、退役後はカリフォルニアに行くということと、第七騎兵隊の全滅による旧友の死を知らせました。

そこにオリヴィアが現れ、今朝の一件を謝罪し、ブリトルズ大尉は彼女の姿に妻を想うのでした。

 

 

最後の出撃の朝、ブリトルズ大尉は、部隊に女性を同行させるというオールシャード少佐の命令に抵抗するものの意見書を出すことで、しぶしぶ了承します。

オールシャード少佐は、妻アビー(ミルドレッド・ナトウィック)と姪オリヴィアを東部に帰そうと考え、彼女らを駅馬車の中継所に護送する任務をブリトルズ大尉に命じました。

オリヴィアは、騎兵の制服を着てブリトルズ大尉を喜ばせ、恋しい人に見せる印の黄色いリボンも、彼のためだと言うものの、コーヒル中尉とペネル少尉にもそれを意識させました。

そして、アビーとオリヴィアの護衛を命ぜられたブリトルス大尉は、最後のパトロール出発しました。

 



4)沸き立つ先住民と若い兵士

斥候に出していた、タイリー軍曹の報告を受けたブリトルズ大尉は、移動する先住民の部族を目撃して警戒しながら先を急ぎます。

オリヴィアを巡って、恋の火花を散らす若い2人の士官でしたが、有望なペネル少尉を誘惑するオリヴィアに、コーヒル中尉は厳しい言葉を浴びせました。

オリヴィアの辛い気持ちを察したブリトルズ大尉は、彼女を慰めて若者達を見守るのでした。

バファローの群れの近くに先住民を確認したブリトルズ大尉は、迂回することを考えてタイリー軍曹を中継所に向かわせ、駅馬車を待たせようとします。

その後ブリトルズ大尉は、アラパホ族酋長レッド・シャツ(ノーブル・ジョンソン)一味に襲われ、追跡を逃れたマイク・クウェイン伍長(トム・タイラー)の報告を受けました。

負傷したクウェイン伍長の傷の治療のために、軍医オラフリン(アーサー・シールズ)は、部隊を止めるようブリトルズ大尉に要請します。

それを拒んだブリトルズ大尉でしたが、仕方なく徒歩で前進して速度を落とすことにしました。

アビーも手伝った治療は成功し、部隊は前進を続けます。


5)高まる緊張感

シャイアン族に追われたタイリー軍曹は、中継所に到着した部隊と合流し、アラパホ族も手を組んでいることをブリトルズ大尉に報告しました。

焼き討ちされ、惨殺された犠牲者を確認したブリトルズ大尉は、最後の任務に失敗して落胆します。

 

 

その姿を見たオリヴィアは、西部を見たいなどと言った自分に責任があると、ブリトルズ大尉に謝罪します。

しかしブリトルズ大尉は、あくまで指揮官の自分に責任があることをオリヴィアに伝えました。

犠牲者の埋葬を終えたブリトルズ大尉は、尚もオリヴィアの件で争い合うコーヒル中尉とペネル少尉に喝を入れました。

その後、100人もの敵に監視されている部隊は、密かにその場から脱出しようとします。

ペネル少尉とタイリー軍曹を伴い、偵察に行ったブリトルズ大尉は、武器を売りつける商人から、それを略奪する先住民を目撃し、新たな警戒心を高めながら部隊を撤退させました。

先住民を食い止めるため、川に残ることになったコーヒル中尉にオリヴィアが信頼感を示し、ペネル少尉はついに納得します。


6)最後の儀仗

砦に戻ったブリトルズ大尉は、オールシャード少佐に任務の失敗を報告しました。

ブリトルズ大尉は、即刻コーヒル中尉の救助に向かおうとするが、少佐はペネル少尉にそれを任せて、夜明けの出撃とする考えを伝えました。

ペネル少尉では無理だと判断したブリトルズ大尉は、翌日の退役の延長をに申し出ます。しかし、ペネル少尉とコーヒル中尉に、経験を積ませるのが自分達の義務だと言って、少佐はブリトルズ大尉を納得させました。

そんな、ブリトルズ大尉の寂しさを知ったオリヴィアやアビーは涙するのでした。

そして退役の日、ブリトルズ大尉は、クィンケノン曹長に私服を試着してみるよう伝え、最後の閲兵に向かいました。

礼服を着たブリトルズ大尉は、ペネル少尉指揮下、整列した部隊員を見て緊張しながら彼らの元に向かいます。

出撃する中隊を激励したブリトルズ大尉は、部下らから記念品の銀時計を贈られ涙を堪えるのでした。

そしてブリトルズ大尉は、ペネル少尉に出撃命令を出し、最後の任務を終えました。

その様子を見て、オリヴィア、オールシャード、そしてアビーは涙するのでした。


7)嵌められたクィンケノン曹長

宿舎に戻ったブリトルズ大尉は、2週間後に退役を控える、自分の私服を試着したクィンケノン曹長に、同じ物を注文するよう、酒代を渡して売店に行かせました。

ブリトルズ大尉は、クィンケノン曹長を無事に退役させるために、酔って私服を着ていると言って、彼を営倉送りにするよう部下に指示します。

売店のバーで、コネリー(フランシス・フォード)と酒を酌み交わしたクィンケノン曹長は、自分を逮捕しに来た兵士達と殴り合いを始め、彼らと共にブリトルズ大尉のために乾杯したりもします。

そして、再び兵士達を叩きのめしたクィンケノン曹長は、現れたアビーの命令で営倉に送られました。

ブリトルズ大尉は、クィンケノン曹長のことをオールシャード少佐に託し、オリヴィアとアビーに別れを告げて砦を去りました。

 



8)奇襲攻撃

その頃、先住民は総攻撃のために、800~900人が集結していました。

ブリトルズ大尉コーヒル中尉とペネル少尉の隊と合流して、退役までの残り時間が4時間あることを確認し、タイリー軍曹を伴い、先住民の大酋長”歩く馬”(チーフ・ジョン・ビッグ・トゥリー)の元へ和平交渉に向かいます。

ブリトルズ大尉は、戦いに向けて、気勢を上げる部族の若者達への不満を酋長に伝えますが、既に手遅れだと酋長に言われたブリトルズ大尉は、仕方なく部隊に戻りました。しかしながら、この時タイリー軍曹に馬の位置と数を掌握させておきました。

深夜近く、ブリトルズ大尉は奇襲攻撃をかけ、先住民を殺さずに馬を暴走させ、戦いを回避することに成功します。

ブリトルズ大尉は、コーヒル中尉とペネル少尉に、先住民を居留地に送り返す命令を出し、民間人となった彼は、2人に別れを告げてカリフォルニアに向かいました。


9)エピローグ

しかしながら、軍はブリトルズを必要として、タイリー軍曹に後を追わせ、陸軍中佐として彼を部隊に呼び戻します。

砦では、ブリトルズの歓迎会の準備が整っていましたが、彼は、まず亡き妻の墓前に報告に行きました。

そして、妻の墓前のブリトルズの脳裏には、新たな任務に就き、逞しき兵を指揮する自らの姿がありました。


3.四方山話

1)ジョン・ウェイン

主演のジョン・ウェインはこの時44歳、老兵役なのですが、若い士官が足元にも及ばないほどの大活躍と、毅然とした中にも情に弱い愛すべき指揮官を好演し、その演技は高く評価されました。

作中で度々彼が口にする、”謝罪は、弱さに通じる”(Never apologize, it’s a sign of weakness.)は、強さと威厳の象徴的存在のウェインならではのセリフです。それほど、彼の存在感は他を寄せ付けない圧倒的ものでした。


2)ヴィクター・マクラグレン

脇をかためている、ジョン・ウェインの補佐ヴィクター・マクラグレンが、飲んだくれで乱暴な軍曹をいつもながらに怪演し、大いに楽しませてくれます。

イングランド・ケント州出身。父親は聖職者で、父親について子供の頃は南アフリカに住んでいました。

1920年より映画に出演するようになり、1935年の『男の敵』でアカデミー主演男優賞を受賞しました。

以降の作品では、脇役中心となりますがその存在感は相変わらずでした。


3)ベン・ジョンソン

主人公の信頼が厚い、タイリー軍曹を演ずるベン・ジョンソンも、さすがに見事な手綱さばきを見せて、最も優れた騎兵役を見事に演じています。

父はカウボーイであり、ジョンソン自身もロデオのチャンピオンになったこともありました。

ハワード・ヒューズに馬の調教師として雇われたことが映画界に入るきっかけとなり、その後、スタントマンとして西部劇に出演、ジョン・ウェインゲイリー・クーパーのスタントを務め、ジョン・フォード作品の常連となった。

1971年の『ラスト・ショー』でアカデミー助演男優賞を受賞しています。


4)黄色いリボン

イエローリボン(Yellow ribbon)は、輪状にした黄色のリボン、もしくはそれを図案化したシンボルで、アウェアネス・リボンのひとつです。多くの国で使われていますが、国によって大きく意味が異なります。

このシンボルが最も広く使われている国は、アメリカ合衆国で、愛する人、特に戦争に送られ、一時的に祖国に帰ることができなくなった兵士達に対して、帰りを待ちわびているという思いを表すシンボルとして使われています。

本作のように、黄色いリボンにこのような意味づけをする軍歌は古くから知られていましたが、今日のような使われ方のきっかけは、1979年のイランアメリカ大使館人質事件の際、ケンタッキー州リッチフィールドの婦人会で、人質の無事帰還を願って街路樹に黄色いリボンを結んだり、身につけたりしたもので、これがABCテレビのニュース番組で取り上げられ、全国的に黄色いリボンの掲示が行われるようになりました。

湾岸戦争の時には、派遣軍人に対する連帯として「Support Our Troops」というメッセージ付きで掲げられるようになり、その後も地上軍の投じられる戦争の度に用いられ、多くは、マイカーのリアバンパーなどに貼られています。

 

4.まとめ

フォード監督の映画は概ね、『怒りの葡萄』『わが谷は緑なりき』を中心とした戦前の社会派タッチの作品群。
そして、戦後の「騎兵隊三部作」を中心とする戦後の西部劇作品群。
さらに、1950年代の『創作者』『静かなる男』などの市場の意識よりもフォード監督の個人的な思索の延長にあるような作品群に大別されるようで、この偉大な監督の作品はは間違いなく、人類の文化遺産と言えるでしょう。

 

黄色いリボン