映画『ブラック・ライダー』いろんな問題を抱えたまさに異色の西部劇です?!

この映画『ブラック・ライダー(Buck and the Preacher)』は、俳優シドニー・ポワチエの初監督作品で、主演し、歌手でも有名なハリー・ベラフォンテが共演している1972年のアメリカ合衆国の西部劇映画です。

目次

 



1.紹介

主演を兼ねたシドニー・ポワチエの初監督作品で、虐げられる黒人の苦難の旅を描いています。黒人及び黒人俳優の地位向上に大きく貢献した彼の意欲が窺える力作です。

白人の黒人に対する偏見をストレートに描いた作品ではありますが、先住民の問題も加えた社会性もあって内容にユーモアもまじえ、メリハリが効いた展開は実に小気味よいものになっています。

人種の壁を越えて、逞しく勇敢なガイドを貫録の演技で好演するシドニー・ポワチエと、聖職者らしくない強欲な牧師を怪演する同じ歳(1927年生まれ)のハリー・ベラフォンテの意外な好演も見られます。


2.ストーリー

1)プロローグ

アメリカを二分した南北戦争は終わり、奴隷制度は廃止され、奴隷の身分から解放された黒人たちは自由を求めて次々と南部から西部へと旅立っていきました。

しかしながら、南部の白人の中には黒人たちを元の農場へ連れ戻そうと目論む無法者も少なくはありませんでした。

かつて北軍の騎兵隊員だった黒人のバック(シドニー・ポワチエ)は移住する黒人たちのガイドを務めていました。白人の無法者のリーダーであるディシェイ(キャメロン・ミッチェル)らの執拗な妨害や襲撃に見舞われながらも黒人たちを守るために必死で闘っていました。

この日もディシェイの一味はルイジアナから来た黒人の幌馬車隊を襲撃し、バックの居場所を教えない者を容赦なく殺していました。

家に戻ろうとしたバックは、デシャイに銃を向けられている妻ルース(キャメロン・ミッチェル)の表情で危険を察知し、彼らの銃撃をかわして逃走しました。


2)出逢い

翌朝、たまたま野営していた自称・巡回牧師のラザフォード(ハリー・ベラフォンテ)の馬をバックは馬が弱っていたことから、買おうとしますが、拒否されたので、最終的に自分の馬と引き換えに彼の馬を奪って走り去りました。

数日後、バックはディシェイ一味に追われているという幌馬車隊に合流し、一方のラザフォードはバックの馬でとある町に辿り着き、現れたディシェイ一味に馬を奪われたことを話します。ディシェイはラザフォードに、バックの居場所を知らせてくれたら500ドルをやると持ち掛けました。


3)再会

その後、ラザフォードは、幌馬車隊の野営地を見つけると、バックに殴りかかり、ラザフォードが黒人たちが命がけで貯めてきた金を狙っていることに気付いたバックは馬を返すから消え失せろと警告するのでした。

やがてバックは、インディアンに彼らの土地を通過するのに必要な通行税を払うべく一旦幌馬車隊を離れ、ラザフォードもバックに帯同するうちにいつしか奇妙な友情が芽生えてきました。


4)襲撃

バックとラザフォードが幌馬車隊に戻ると、ディシェイ一味に襲われた後で、子供を含む数人が犠牲になっていました。そして何よりも黒人たちが大事に貯め込んできた1400ドルまでもが奪われてしまいました。

後で合流するとして再び幌馬車隊と別れたバックはラザフォードと共にディシェイ一味の後を追います。

バックとラザフォードは、コッパースプリングスの町に辿り着いてディシェイ一味が売春宿でカードゲームに興じていることを知り、バックは、散弾銃を手に乗り込んでディシェイを射殺しました。

 



5)逃亡

金を取り戻したものの、500ドルしか残っていなかったバックは、その場にいた売春宿のマダム・エスター(ニタ・タルボット)から残りの金の在り処を聞き出そうとしますが、埒が明きません。

そこへ保安官(ジョン・ケリー)が、騒ぎを聞きつけて駆け付け、バックとラザフォードは追われる身となってしまいました。

自宅に戻ったバックはルースにラザフォードを紹介し、この土地を離れると告げ、もうこんな自由のない国に居たくないというルースも二人に帯同することにしました。


6)大逆転

バックとラザフォードとルースは、幌馬車隊に渡す金を作るために銀行強盗を思いついて、早速実行に移して大金を手に入れました。保安官やディシェイの残党は3人の後を追いますが、その前にインディアンたちが立ちはだかります。

バックらはインディアンに協力を求めますが、彼らは白人の戦争に加担した黒人も同罪だとして協力を拒みました。

一方の保安官たちもバックらが幌馬車隊に合流するとみて先回りして監視していますが、幌馬車隊を襲撃すべきだと主張するディシェイ残党のフロイド(デニー・ミラー)は、強硬手段に打って出て保安官を殺害してしまいました。

バックとラザフォードは、フランクらを迎え撃つ決心をし、ルースを幌馬車隊に連絡に向かわせるとフロイドらを岩山に誘い込んで銃撃戦を繰り広げました。

バックとラザフォードは、追い詰められてしまいますが、そこにインディアンが加勢して二人を助け、フロイドも倒します。更に、ルースの呼びかけに応じた幌馬車隊までもが駆け付けて敵を追い払うことに成功しました。

 



7)エピローグ

バックとラザフォードはインディアンに感謝して別れを告げ、やがて幌馬車隊は目的地に辿り着いて、バックとラザフォード、ルースは自由を求めて新たな旅に出ました。


3.四方山話

1)シドニ・ポワチエ

彼が、映画に進出し始めた時期は、以前の黒人俳優には労働者のような端役や悪役程度にしか活躍の場が与えられていませんでした。

公民権運動の活発化を受けて徐々に待遇が改善されていた一方で、そういった気風も抜け切ってはいないという、いわば黒人俳優の黎明期でした。

その中にあって、彼は、黒人俳優の最古参の1人とも言える人物の当時人気を博していたウディ・ストロードのようなパワフルで逞しい肉体を擁したアクション系の黒人俳優の個性が定着しつつありましたが、一方、ポワチエはあえて肉体のパワーではなく演技と「知」のイメージでの活躍を意識したそうです。

こうした一見、地道な個性が社会派作品『野のユリ』(1963年)におけるアカデミー主演男優賞及びゴールデングローブ賞 主演男優賞 (ドラマ部門)受賞という歴史的快挙に結実しました。

この授賞式のポワチエのコメントは、「私一人で貰ったとは思っていない。これまで努力した何百人もの黒人映画人の努力が実ったものだと思っている」でした。

一方、同胞である黒人たちからは、「ショーウィンドウの中の黒人」とも揶揄され、ポワチエの演じる「黒人」像とは、あくまで白人が望む「素直でおとなしく、礼儀正しい黒人」でした。


2)ハリー・ベラフォンテ

ニューヨーク市ハーレム生まれで、父親は仏領マルティニーク系黒人、母はジャマイカ系です。「バナナ・ボート」(1956年)が世界的な大ヒットとなり、アルバム『カリプソ』も当時としては珍しいミリオンセラーを記録し、一躍スターとなりました。

「バナナ・ボート」はジャマイカの労働者がバナナを船に積み込むときに歌う労働歌を元に作られた曲で、掛け声が特徴的で、この掛け声の語感のコミカルさから、日本でも浜村美智子江利チエミのカバーバージョンがヒットしました。またその後も「マティルダ」や「ダニー・ボーイ」などの世界的なヒット曲を連発しました。

一方、俳優としても活躍し、多くの作品に出演しています。2006年には、エミリオ・エステヴェス監督の映画『ボビー』で、老いに悩むホテルの元ドアマンを演じました。ちなみに、この作品で重要な意味合いを持つキング牧師ロバート・ケネディとは個人的にも親交がありました。
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3)評価

本作の作品説明にコミカルとか書かれているのを見ますが、決してコミカルではなく、コミカルなのはジョーズハープを使った音楽でしょうね。

結構楽しめる作品ですが、音楽も含めた演出が安っぽいのが残念です。

あと主人公たちを助ける先住民の族長やその奥さんが凛としてカッコよかったのですが、インデアンの顔がどれをとっても白人の有色メイクなのが残念なのです。もっともこの時代ならずともどの西部劇でもこんなものですが。


4.まとめ

人権問題にひたむきに立ち向かう主人公が、派手な追跡劇なども見せて、アクションとしても楽しめましたが、悪党まがいの銀行強盗をするのはいただけません。2丁の短銃身のショットガンが出てきた時はおどろきました。

それだけが原因ではありませんが、敬愛するポワチエの初監督作品とはいえ、B級映画の謗りは避けられませんね。