映画『遙かなる山の呼び声』山田洋次監督の民子3部作第3作にして、『幸福の黄色いハンカチ』の姉妹作?!

 

 

 

幸福の黄色いハンカチ』に続き、またもや「凶状持ち」と「待つ女」のお話です。

「凶状持ち」とは、大辞林によると「凶悪犯、また凶悪犯罪の前科者や逃亡犯」となっています。

 

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幸福の黄色いハンカチ』の「勇作」は「凶悪犯罪の前科者」で『遙かなる山の呼び声』の「耕作」は「凶悪犯罪の逃亡犯」となります。勇作は刑期を終えているとは言えその前にも犯罪歴があって、殺人罪を含む前科2犯となります。

 

この様な「凶状持ち」に『幸福の黄色いハンカチ』の「光枝」は6年待ち、『遙かなる山の呼び声』の「民子」は2年以上4年以下の刑の耕作を待つことになります。バツイチや後家さんではありますが、どちらもけなげで美人なのは周囲が認めるところとなっています。

 

この様に、互いに「男前」「美人」でありながら暗い過去をもったものが、互いに慈しみ惹かれ合い何者にも代えられないものとなって、「待つ」が絶対的な物語となって行きます。

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北海道東部、根釧原野にある酪農の町、中標津で、風見民子(倍賞千恵子)は、亡夫の残した土地で酪農をしながら、一人息子の武志(吉岡秀隆)を育てています。

 

激しい雨の降るある春の夜、道に迷った一人の男(田島耕作高倉健)が民子の家を訪れ、納屋に泊めることになりました。その晩、牛のお産があり、男はそれを手伝うと、翌朝、去っていきましたが、その時、民子が未亡人であることを武志から聞くことになりました。

 

夏のある日、その男がまたやってきて、働かせてくれといいました。隣家の娘ひとみが手伝ってくれてはいますが、男手のない民子はその男を雇うことにし、田島耕作と名乗る男はその日から納屋に寝泊まりして働きだすことになりました。

 

近所で北海料理店を経営する虻田(ハナ肇)は、民子に惚れていて、ある日、力ずくで彼女をモノにしようとして耕作に諫められましたが、性懲りもなく後日にまた民子にのしかかりるところを、耕作にこっぴどく痛めつけられました。怒った虻田は兄弟を集めて、耕作に決闘を挑むが、簡単にやられてしまい、以後、耕作を兄貴と慕うようになりました。

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民子が無理をしてぎっくり腰を患い、入院することになって、武志はさみしさから、耕作と一緒に納屋に寝るようになり一層二人の距離は縮みました。民子が退院して間もなく、従弟の勝男(武田鉄矢)が新婚旅行で新妻の佳代子を連れてやって来たり、数日後、耕作の兄の駿一郎がやってきたりして、民子や耕作の過去が明らかになってきます。

 

勝男が民子の牧場を去る時、夫を亡くした民子の苦労を目の当たりにして目に涙していました。耕作の兄(鈴木瑞穂)も耕作が起こした事件で教職を追われていましたが、耕作の行く末を心配していました。耕作は、兄の持ってきたコーヒーを民子に振る舞いながら、ここにとどまってもいいと胸の内を明かしました。

 

季節は秋に変り、土地の人達が待ちこがれる草競馬の時期となりました。耕作も民子の馬で出場、見事、一着でゴールインし、民子、武志、の絆はより一層深くなりますが、観客の中に、刑事の姿がありました。

 

刑事の質問にシラを切った耕作でしたが、その夜、民子にすべてを打ち明けました。耕作は二年前、妻が高利の金を借りて自殺、それを悪し様に言う高利貸しを殺してしまい、警察から逃げ回っていたのでしたが、もうこれまでと観念しました。家を出ていくという耕作に民子は止めるすべもなかったのですが、夜更けに耕作が民子の家の戸をたたきました。

 

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不安と期待でもって戸を開けた民子でしたが、耕作は牛のぐあいが悪くなったと知らせにきたのでした。稼ぎ頭の牛が危ないという辛い状況の中で、民子は田島に「行かないで、私寂しい」とすがりついてしまいます。

 

飲み屋で飲んでいた獣医(畑正憲)を呼び、徹夜で牛の看病をして事なきを得ました。そして、翌朝、耕作は家の前にとまったパトカーへ自分から歩いていきました。

 

冬、網走に向かう列車の中に2年以上4年以下の刑が確定した耕作の姿がありました。美幌の駅で耕作は虻田と民子の姿をみつけました。さりげなく乗り込んできた民子に虻田は護送の刑事に気遣いながら、民子が町に出て、耕作の出所を待つために武志と新しい生活を始めたことを会話の中で告げ、やがて感極まってくちゃくちゃになってしまいました。耕作は民子から渡された黄色いハンカチで涙を拭うのでした。

 

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この映画、西部劇『シェーン』をオマージュしてその主題曲にちなみ『遙かなる山の呼び声』と名ぜられたそうですが、耕作がパトカーで連れられて行くときに叫んだのは「シェーン、カムバック」ではなく「おじさぁんどこ行くの」でした。

 

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他にも、『幸福の黄色いハンカチ』に続き、武田鉄矢渥美清を登場させ、北海道の動物なら畑正憲を獣医として登場させるなど、小技が見られます。

 

いっそ、この映画の舞台を牧場に移し、民子(倍賞千恵子)に子供(吉岡秀隆)があって、耕作(高倉健)が網走刑務所を出てラーメンを食い逃げして警察に追われ、民子の従弟が(武田鉄矢)離婚して、人工受精士(渥美清)が警察官に転職したら物語は完全にループし、永遠に北海道の四季と人のぬくもりを味わえることになります。