映画『プライベート・ライアン』は反戦映画でしょうか?!

 

 

老人とその家族の墓参シーンから一転、20分余り戦闘シーンが延々と続きます。その戦闘シーンは1944年6月のフランスでのノルマンディー上陸作戦でした。

 

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敵の砲火の雨の中、上陸部隊の兵士たちが次々に倒れていき、画面に現れた死者の数は全編を通じて255にも上ったそうです。

兵士の手足が吹き飛び、内臓が飛び出、炎に包まれて爆死したり、海水が血の色に染まるなど、まるでその場にいるような映像が戦場の現実を生々しく描き出してゆきます。

あからさまな戦争批判や英雄賛美もなく、ただただこの悲壮感だけを粛々と伝え続けるスピルバーグの演出が、観客の心にストレートに響きます。

 

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そんな中、アメリカ陸軍参謀総長ジョージ・マーシャル(ハーヴ・プレスネル)の元に、ある兵士の戦死報告が届きました。それはライアン家の4兄弟のうち3人が戦死したというものでした。

残る末弟ジェームズ・ライアンも、ノルマンディー上陸作戦の前日に行なわれた空挺降下の際に敵地で行方不明になったという報告が入り、マーシャルはライアンを保護して本国に帰還させるように命令しました。

 

4人兄弟の末弟を残し3人の兄弟が時を跨がず戦死するという理不尽な出来事に、敵軍のど真ん中に生死不明の末弟を捜し、連れ戻しに行くというこれもまた理不尽な命令がミラー大尉(トム・ハンクス)に出て、気心の知れた部下7名と共にチームを組み出発します。

 

途中、ミラー大尉たちは保護を求めるフランス人一家と遭遇しますが、安全が保障できないことを理由に保護を拒否します。しかし、部下のカパーゾ(ヴィン・ディーゼル)が独断で子供を保護しようとしてドイツ軍に狙撃されてしまいます。狙撃手のジャクソン(バリー・ペッパー)がドイツ軍の狙撃手を射殺しますが、カパーゾは死亡してしまいます。

 

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カパーゾの死に、ミラー大尉はホーヴァス軍曹(トム・サイズモア)に吐露しました。
「部下が死ぬとおれは自分にこう言い聞かせる。それは2人3人10人の部下を救うためだったと、時には100人を...」
「おれが失った部下の数は94人、ということはその10倍の命を救ったわけだ、もしかしたら20倍かも知れん。そう割り切る。」
「任務か、それとも兵士の命か、その選択だ。」
「(ライアンは)その価値のある奴かな?カパーゾ10人分に値する奴でなきゃ」

 

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ミラー大尉は、ライアンの消息を、混成部隊に加わり前線の橋を守っていることと捜し当てました。ミラー大尉たちは前線に向かいますが、その途中で破壊されたドイツ軍の対空レーダーサイトと警備陣地、数人の友軍死者を発見します。

部下たちは戦闘を避けて迂回するように進言しますが、ミラーは後続の部隊の被害を防ぐために陣地の攻略を命令します。

ミラーたちは陣地を制圧したものの、戦闘で衛生兵のウェイド(ジョバンニ・リビシ)が戦死してしまいます。彼の死に憤慨したライベン(エドワード・バーンズ)は生き残っていたドイツ兵を殺そうとしますが、ミラーはドイツ兵に墓を掘るように命令し、人目を忍んでウェイドの死に涙するのでした。

その後、ミラーは墓を掘り終えたドイツ兵を解放して後続の部隊に降伏するように指示しますが、それに不服を感じ、そもそもライアン探索に懐疑的であったライベンは命令を放棄し、引き留めようとするホーヴァス軍曹(トム・サイズモア)が拳銃を向けるまでに衝突してしまいます。

 

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この危機的状況にミラー大尉は二人に対して、今まで明かしていなかった自身の高校教師であった履歴を語り、そして、帰国して、過酷な戦場で変わってしまったであろう自分の顔(人格)で、妻に会って今日のよう話をする時の心根を語って、その場を収めました。
「ライアンはおれにはどうでもいい。ただの名前にしか過ぎない。だが彼を捜し、帰還させたら胸を張って女房の所へ戻れる。そのための任務だ。」

 

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やがて、前線の橋に向かったミラー大尉たちは、探し求めていたライアンを発見します。ミラー大尉はライアンに帰還するように命令しますが、彼は、

「仲間を残して本国に帰るのは嫌だ。(戦死したら伝言を)僕は戦場での兄弟を見捨てずに残って戦ったと。」
「母は分かってくれます、ここに残ります。」と命令を拒否します。

 

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そして、ミラー大尉は結論を出しあぐね、長年連れ添ってきたホーヴァス軍曹に率直な思いを尋ねます。

「奴の言う通り皆同じように戦ってる。奴を残して引き上げるか、あるいは我々が一緒にここで戦い、生き残って帰国するか。」

「いつの日か振り返って思う。ライアンを救ったことがこのクソ戦争で唯一誇れることだと、そう思います。」

「おれも、あなたのように胸を張って故郷に帰れるような気がする。」

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かくて、ミラー大尉たちも混成部隊と共に、戦車に支援されたドイツ武装親衛隊を迎え撃つことになりました。ミラー大尉たちは敵を市街地に誘い込み奇襲を仕掛けますが、物量差に押されて劣勢になり、ジャクソンやホーヴァス軍曹ら部下が次々に戦死してゆきます。

ミラー大尉も負傷して身動きが取れなくなって瀕死となり、前進する戦車を相手に虚しく拳銃で応戦します。そこにP-51戦闘機と援軍とが到着し、ドイツ軍は敗走します。ミラー大尉は、心配げにのぞき込むライアンに生きて人生を全うするように告げて息絶えます。
「ジェームス、無駄にするな、しっかり生きろ」

 

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画面は冒頭のノルマンディー米軍英霊墓地、ミラー大尉の墓前にかわります。老いたライアンはミラー大尉に感謝の言葉を伝えた後に、妻に、

「私は人生を立派に生きただろうか」と問いかけます。妻の

「もちろんです」

という言葉を聞き、ライアンはミラーの墓に向かい敬礼を捧げるのでした。

 

この映画は、誰の為の何の任務か彼らは答えを見つけられないまま戦火の中に身を投じ、そして死んでゆく。この切ない悲劇の中で、戦争批判や英雄賛美を超えて、それぞれが思う本当の闘う理由とは何なのか?を問い続けます。