映画『ロッキーシリーズ』はもうほとんどレジェンドです!しがみたおして下さい!?

1976年以来、ほぼ半世紀にわたって『ロッキーシリーズ』は続いています。賛否はいろいろありますが、それぞれに熱いものを感じさせてくれるのも確かです。その系譜をたどってみたいと思います。

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目次

 

1.プロローグ

若き日のスタローンは、顔面麻痺による演技力の限界や、あまりにも典型的なシチリア人の風貌のため54回のオーディションに落ち、極貧生活の中にポルノ映画への出演やボディーガードなどをこなして日銭を稼ぐ生活が長く続いていました。

そんなある日、彼は世界ヘビー級タイトルマッチ「モハメド・アリ対チャック・ウェプナー」戦のテレビ放送を観戦したところ、アリは当時世界最強と言われていたのに対し、ウェプナーはスタローン同様、繰り返す転職の中で日銭を稼いでいたようで、誰が見ても勝ち目がないウェプナーでしたが、予想外の善戦を展開しました。

試合はアリが勝利したものの、ウェプナーの繰り出したパンチがアリのわき腹を直撃しダウンを奪い、対戦後に「二度と対戦したくない」と言わしめました。スタローンは「アリをダウンさせたその瞬間、ウェプナーは偉大なボクサーとなり人々の心に永遠に刻まれる」と感じ、この出来事を基にわずか3日で脚本を書き上げ、プロダクションに売り込みました。

ここから真偽定かでないある種の都市伝説じみたお話がまことしやかに流れています。プロダクションはその脚本を気に入り7万5千ドルという当時の脚本料としては破格の値をつけたものの、製作の条件として、主演にポール・ニューマンロバート・レッドフォードアル・パチーノといった有名スターを起用することを挙げて譲りませんでしたが、それに対して「貧乏とは上手く付き合うことができる」と、スタローンは脚本料に目を眩ませず、自分が主演を兼任することに徹底的にこだわりました。

結果として、双方の長きにわたる交渉の末に、ギャランティーに関しては、監督は普段の半分、スタローンは俳優組合が定める最低金額、プロデューサーはなし。制作費はテレビシリーズ1本分(約100万ドル)。36万ドルまで高騰した脚本料を2万ドルに減額。という条件の下で製作が開始されたというのです。

これらの話は映画を宣伝するためのほぼ完全な作り話であり、実際にはユナイテッド・アーティスツUA)とスタローンの間に1度も話し合いは行われていなく、予算100万ドル以下の映画はプロデューサーが決定権を持っていて、UAの誰もスタローンと会ったことはなく、「失敗しても、テレビに販売すれば損失をカバーできる」とUAには報告されたそうです。

さらには、当初のエンディングは「試合前にミッキーが歪んだ人種差別的思想を表し、それに失望したロッキーが試合を放棄して会場を去る」といった当時アメリカで隆盛を極めていたアメリカン・ニューシネマと呼ばれるジャンルの流れを汲む陰鬱なものでしたが、これを当時の妻・サーシャが読んで「私はこんなロッキー嫌いよ」と述べたため、ハッピーエンドに変更しています。

このようにして続編が5本、スピンオフ作品が2本に発展、40数年に渡って世界中の人々に愛されることになった『ロッキー』が誕生しました。


2.作品公開時・製作費・興行成績・年齢 

                公開年  製作費   興行収入    年齢  
(1)ロッキー          1976  $1,100,000  $225,000,000  30
(2)ロッキー2         1979  $7,600,000  $200,182,160  33
(3)ロッキー3         1982  $16,000,000   $270,000,000  36
(4)ロッキー4/炎の友情    1985   $34,000,000  $300,473,716  39
(5)ロッキー5/最後のドラマ  1990   $42,000,000  $119,946,358  44
(6)ロッキー・ザ・ファイナル  2006   $24,000,000  $155,720,088  60
(7)クリード チャンプを継ぐ男 2015   $35,000,000  $173,567,581  69
(8)クリード 炎の宿敵     2018   $50,000,000  $212,694,585  72

 

3.作品概要

(1)ロッキー

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1976年公開の第1作で、当時最強のヘビー級世界チャンピオン”アポロ・クリード”は、アメリカ建国200年祭で開催されるヘビー級タイトルマッチに出場予定でしたが、対戦相手が怪我をしてしまったために急遽別の相手を探していました。

そんな中、プロモーターに「無名の選手とやるのはどうだ?」という提案をし、無名の選手にアメリカン・ドリームを与えて周囲に自分の実力を見せつける、というもくろみでしたが、プロモーターはその提案に賛同し、早速対戦相手を探したところ「イタリアの種馬」というユニークなリングネームを持つ、というだけでロッキーに白羽の矢が立ちました。

自信満々で口の悪いアポロですが、その実力は本物で、そんな彼に対戦相手として指名されたロッキーは世間からにわかに注目され、TV出演やマスコミのインタビューにひっぱりだことなるのでした。

アポロとの初戦は賭け率は50対1で、チャンピオンであるアポロが優勢なのは誰の目にも明らかで、しかし、彼は予想外の健闘を見せます。第14ラウンドに鋭いパンチを食らって倒れこみますが、何とか立ち上がり、試合はとうとう最終ラウンドへ。結局接戦だった二人の試合は判定になります。結果はアポロの勝利でしたが、エイドリアンと抱き合うロッキーには試合をやり遂げた達成感がありました。


(2)ロッキー2

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1979年公開の第2作。ロッキーは、タイトルマッチで見せたアポロとの接戦でさらに注目を浴び、僅差で勝ったアポロは「本当の勝利者はロッキー」と言われる事が面白くありません。引退を決めていたロッキーは、彼のたび重なる挑発にとうとう再戦を決意します。

当初、思いやりから反対していたエイドリアンの後押しも受け、再びリングに立つことを決心しました。もちろん迎え撃つアポロも気合い十分で前回以上に猛攻します。終盤でダブルノックダウンになった二人ですが、先に立ちあがったのはロッキーでした。新たなヘビー級世界チャンピオンの誕生となりました。


(3)ロッキー3

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1982年公開の第3作で晴れて世界ヘビー級チャンピオンとなったロッキーは、10度の防衛に成功し、チャリティーでプロレスのヘビー級王者サンダー・リップスと異種格闘技戦を行うなど試合も無敵状態となり、TVや新聞などのメディアに頻繁に登場して、一躍時代の寵児となりました。

その人気の高さと功績を讃え、とうとうフィラデルフィア美術館に銅像が設置されるまでになりました。私生活でも故郷フィラデルフィアに豪邸を構え、家族との仲も良好で、まさに何不自由ない幸せな生活を満喫していた彼は引退を発表します。

ヘビー級ボクサーのクラバー・ラングは世界ランキング1位で猛烈な強さを誇っていました。世界チャンピオン獲得を目指して闘志を燃やす彼は、試合を重ねてチャンピオンの挑戦権を獲得し、引退宣言をした彼に「弱い奴とばかり試合している」と挑発します。

ミッキーの制止も聞かずにラングと試合するロッキーですが、彼の猛攻撃の前に2ラウンドでKOされ惨敗します。さらに、心臓が弱っていたミッキーは息を引き取ってしまいます。

失意のロッキーを励ましたのは宿敵アポロでした。トレーナー役を買って出た彼は、ハングリー精神を失ったと指摘して特訓を開始。もう一度ラングとの試合に臨みます。

アポロやエイドリアンの励ましもあり、ラングとの再戦の時は別人のように素早い動きで彼を翻弄。さらに、ハングリー精神を取り戻した彼はラングに猛攻撃をしかけ、見事KO勝ち。チャンピオンの座を奪還しました。


(4)ロッキー4/炎の友情

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1986年公開の第4作でソ連のプロボクシングに加盟し、アマチュアボクシングのヘビー級王者ドラゴはロッキーとの対戦を熱望していました。しかし引退していた盟友アポロが、「戦士としての自分を止められない」と代わりにドラゴへの試合を受けます。

ラスベガスで行われた試合は、当初アポロが優勢でしたが、ドラゴが反撃に転じ、アポロはコーナーに追い詰められました。ドラゴに殺意を感じたロッキーはリングにタオルを投げようとしますが、ボクサーとして誇り高いアポロはそれを拒否し、そのままリングで命を落としました。

親友を殺されて怒りに燃え、彼はドラゴとの対戦を決心します。試合をノーギャラで行うという不利な条件を受けてソ連へ行きましたが、圧倒的な体格差と最新のトレーニングで鍛えたドラゴの強さは凄まじく、当初は不利な状況でしたが、諦めずに何度も彼に立ち向かいます。

その後、ブーイングばかりだった観客からもコールが巻き起こり、国家の威信のために戦っていたドラゴも一人のボクサーとして戦うようになります。最終15ラウンド、壮絶なラッシュの末に戦いを制したのはロッキーでした。


(5)ロッキー5/最後のドラマ

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ソ連でドラゴとの死闘に勝利したロッキーですが、会計士の不正で破産し、これまでの試合のダメージが重なったこともあって引退することにしました。

引退後はかつての恩師ミッキーの経営していたジムでトレーナーを始めます。彼はそこで新進気鋭のボクサーであるトミー・ガンを見つけ、彼をボクサーとして育てることに生きがいを感じるのでした。

彼の息子であるJrはちょうど思春期を迎える年ごろ。トミー・ガンの育成に夢中になる父の姿を目の当たりにして複雑な気持ちになり、親子の間に溝が生まれてしまいました。

しかし、やがてトミーはプロモーターのデュークに誘われて金や名誉欲に取りつかれるようになってしまい、二人は袂を分かつことに。トミーのロッキーに対する一連の行動は、大衆に不信感を抱かせ、せっかくチャンピオンの座についても祝福する人はいませんでした。

そのためトミーは師弟対決を望み、二人はストリートファイトで決着をつけることになります。義兄ポーリーも殴られ、とうとうロッキーはトミーへ怒りを燃やしてきました。途中苦戦したもののミッキーの幻影に心を奮い立たせて勝利し、息子とも和解するのでした。


(6)ロッキー・ザ・ファイナル

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2007年公開の第6作で、年老いたロッキーは、地元フィラデルフィアで愛妻の名前をつけたイタリアンレストランを経営しています。愛妻エイドリアンはガンですでに他界しており、訪れる客にこれまでの自分の戦いを話して楽しむ日々を送っていました。

しかし、彼女の命日には必ず墓参りを忘れません。息子は命日には来なかったものの、義兄のポーリーと共に彼女と過ごしたフィラデルフィアの街を巡ります。

現世界ヘビー級チャンピオンのメイソン・ディクソン。強くはありますが常に対戦相手を秒殺するため、人気はいまひとつで本人もそれを気にしていました。そんな時に彼はTVでロッキーと自分の試合シュミレーションを目の当たりにし、自分より評価の高いロッキーへ闘志を燃やします。

プロボクサーとして復帰し、ディクソンの挑戦を受け、最初はためらうものの、常連のバーで働く女性マリーに説得されて試合の出場を決意します。

過酷なトレーニングを積んだ彼はディクソンと対峙します。試合は現役選手であるディクソン優勢と思われていましたが、トレーニングの成果もあって善戦しました。

ディクソンが試合途中で左の拳を骨折するハプニングもあって試合は最終ラウンドへ。結果は判定負けでしたが、観客は彼とディクソン両者に惜しみない拍手を贈るのでした。


(7)クリード チャンプを継ぐ男

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『ファイナル』から、およそ8年。不屈の闘志を持つボクサーロッキーの信念は新たな世代へと受け継がれることとなります。2015年公開、ライアン・クーグラーがメガホンを取り、マイケル・B・ジョーダンが主演を務めた『クリード チャンプを継ぐ男』はシリーズのスピンオフとして、新たな章の幕開けとなった作品です。

ある日、目の前に現れたのは盟友アポロ・クリードの息子アドニス。彼を世界チャンピオンに導くべく、ロッキーは再び立ち上がることになるのでした。


(8)クリード 炎の宿敵

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「ロッキー」シリーズを新たな主人公アドニスの物語として復活させ、世界中で好評を博した「クリード チャンプを継ぐ男」の続編です。

「ロッキー4 炎の友情」で、アドニスの父であり、ロッキーの盟友だったアポロ・クリードを葬ったイワン・ドラコの息子ヴィクターが登場し、アドニスが因縁の対決に挑む姿を描きます。ロッキーの指導の下、世界チャンピオンに上り詰めたアドニスは、かつて父アポロの命を奪ったイワン・ドラゴの息子ヴィクターと対戦することになりました。

ヴィクターの反則行為により試合には勝利したものの、納得のいく勝利を飾ることができなかったアドニスは、心身ともに不調に陥ってしまいます。しかし、「ボクシングこそが自分そのもの」と気づいたアドニスは、ヴィクターとの再戦を決意するのでした。


4.各作品の評価

(1)ロッキー

公開当時、アメリカの映画界はベトナム戦争への軍事介入を機に台頭したアメリカン・ニューシネマにより、ハッピーエンドを否定する作品や、英雄を描かない作品が最盛を極めていた。しかし本作品の出現と大ヒットにより、「個人の可能性」「アメリカン・ドリーム」への憧憬を再燃させ、アメリカン・ニューシネマの終焉を決定的なものとしました。

  第49回アカデミー賞に3部門受賞、6部門ノミネート
    受賞⇒作品賞、監督賞、編集賞
    ノミネート⇒主演男優賞、主演女優賞、助演男優賞脚本賞、歌曲賞、音響賞
  第34回ゴールデングローブ賞のドラマ作品賞受賞、他5部門ノミネート


(2)ロッキー2

前作を超える壮絶なボクシングの試合場面が展開され全世界でヒットしましたが、作品の評価・興行成績ともに前作には及びませんでした。前作で一躍ハリウッド・スターとなったスタローンでしたが、本作以降は「人気の裏返し」として公私にわたり批判的な意見も聞かれるようになりました。

 

(3)ロッキー3

シリーズのマンネリ化の兆候や、前作までの不器用さゆえの苦悩を抱えるロッキー像が唐突に国民的スーパーヒーローに切り替わったことに対する批判も多く、それが高じてスタローン本人に対するバッシングも激しくなっていきました。


(4)ロッキー4/炎の友情

過去のロッキー作品と比べてストーリー性を減らし、上映時間を短くするなど単純なエンターテインメントに特化した作風となりましたが、ストーリー展開の凡庸さや、ミュージック・ビデオを彷彿とさせる演出が延々と続く点などが酷評されました。

  第6回ゴールデンラズベリー賞10部門中8部門にノミネートされ、5部門を受賞
   受賞⇒最低男優賞、最低助演女優賞、最低監督賞、最低新人賞、最低作曲賞
   ノミネート⇒最低作品賞、最低助演男優賞、最低脚本賞

 

(5)ロッキー5/最後のドラマ

今回はノミネートのみで受賞は免れましたが、演技が酷評されていたスタローン以外に1作目では絶賛されたアヴィルドセン監督、タリア・シャイアバート・ヤングもノミネートされ有終の美を飾るというわけにはいきませんでした。

スタローン自身は前年に「この10年最低主演男優賞」を受賞し、ラジー賞からはすでに「歴史に残る最低男優」のレッテルを貼られています。

  第11回ゴールデンラズベリー賞10部門中の7部門にノミネート
   最低作品賞、最低監督賞、最低主演男優賞、最低主演女優賞、最低助演男優賞
   最低脚本賞、最低主題歌賞


(6)ロッキー・ザ・ファイナル

第1作から30年、前作からも既に16年が経っていたため、本作は当初イベント的な意味合いで製作されているものと受け止められていましたが、実際に公開されたところ、批評家からもその内容を絶賛され、「今年最大のサプライズ」との声も聞かれました。


(7)クリード チャンプを継ぐ男

批評家の意見の要約は「『クリード チャンプを継ぐ男』は『ロッキー』シリーズに驚異の7ラウンド目をもたらしたと絶賛し、シリーズの伝統を踏まえつつも斬新な演出がなされており、そこで新たなボクサーの物語が展開されている。」となっていました。

シルヴェスター・スタローンゴールデンラズベリー賞ラジー賞)の常連としても知られていますが、第36回ラジー賞では、ラジー賞での評価を覆した者に送られる名誉挽回賞を受賞したのみならずスタローンは第73回ゴールデングローブ賞助演男優賞を受賞しました。


(8)クリード 炎の宿敵

『炎の友情』を回収する上でも、そして『クリード チャンプを継ぐ男』の続編という意味においても、これ以上にない完璧な回答を本作は示してみせました。『炎の友情』は興収面での成功とは裏腹に評価自体は酷評を受けてしまい、のちに様々なシーンが笑い種として語られるほどになってしまっていましたが、それらも含めて本作が見事に一つの物語へと昇華したのでした。 


5.エピローグ

『ロッキーシリーズ』を長年に渡って続け、その間『ランボーシリーズ』、『エクスペンタブルシリーズ』と人気シリーズを創出してきたシルベスター・スタローンは、芸術性はともかくエンターティメントとしては、ハリウッドにおけるプレイニングマネージャーとして、クリント・イーストウッドと双璧といっても過言ではないのかも知れません。