映画『ザ・ファーム-法律事務所-』もう最先端ではありませんが、立派なリーガル・サスペンスです!!

この映画『ザ・ファーム 法律事務所』(原題:The Firm)は、1993年に製作されたアメリカ映画で、ジョン・グリシャム著の小説『法律事務所』を、監督シドニー・ポラック、主演にトム・クルーズで映画化したものです。ほかにジーン・ハックマンエド・ハリスが出演しています。

目次

 

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1.プロローグ

本作品はちょうどトム・クルーズが30代の大台に乗った頃の作品であり、油の乗り切ったキャリアの勢い凄まじい熱演を画面上に刻み付け、そのトム・クルーズの魅力を最大限引き出し、輝かせているシドニー・ポラック監督の手腕も確かなものです。

映画全編に漲るサスペンスフルな緊張感。手に汗握るエピソードが矢継ぎ早に展開して、155分という長尺でも一瞬たりとも弛緩することがなく、観客を飽きさせることがありません。

さらに、トム・クルーズが得意とする跳躍力のあるアクションをところどころに挿入したことも炯眼そのものです。

また、脇を固める豪華俳優たちを手際よく演出していく布陣も本作の大きな注目ポイントになっていて、ポール・バーホーベン監督の『氷の微笑』(1992)で映画デビューしたばかりのジーン・トリプルホーンが新妻を演じ、悪徳弁護士役のハル・ホルブルックジーン・ハックマンが名優らしい味わい深さを出し、持ち前のブルーの瞳がひと際怪しげなFBI捜査官をエド・ハリスが好演しています。

そして極めつけが、シカゴマフィアのモロルト兄弟役のポール・ソルヴィノとジョー・ヴィテレリです。いよいよ登場する親玉が、数々のギャング映画に出演してきたこのイタリア系俳優たちであったことに誰もが納得する配役です。


2.あらすじ

ハーバード大学を優秀な成績で卒業したミッチ・マクディーア(トム・クルーズ)は、破格ともいえる最高の労働条件を提示した、テネシー州メンフィスにある少数精鋭の税務専門のベンディニ、ランバート&ロック法律事務所に就職しました。

 

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ミッチは幼稚園の教員の妻アビー(ジーン・トリプルホーン)を伴い、心機一転メンフィスへと向かいました。上司のエイヴァリー・トラー(ジーン・ハックマン)の下で猛烈に働き始めたミッチでしたが、事務所の2人の弁護士が事故死したと知らされます。

不安を感じるミッチでしたが、事務所の仕事と司法試験の準備に精を出しています。そんな彼の前に、FBI捜査官ウエイン・タランス(エド・ハリス)が現れ、事務所に裏の顔があること、そして死んだ2人は事故死でないことを告げ去りました。

 

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疑問を抱きながらもミッチは、依頼人にあうためトラーと共にケイマン島に赴きます。ミッチは島の別荘で、多数の謎の書類を発見しますが、その夜に、浜辺でセクシーな女性に誘惑されたミッチは、彼女と一夜を共にしてしまいます。

島から戻ったミッチは、収監されている兄レイ(デイヴィッド・ストラザーン)に面会に行きます。ミッチは兄に紹介された私立探偵のエディ・ロマックス(ゲイリー・ビジー)に、事務所での不審な死についての調査を依頼しますが、ロマックスは何者かに射殺され、ミッチは事務所に対して決定的な疑念を抱てゆきます。

数日後、セミナーに出席するため単身ワシントンに出かけたミッチの前に、FBI長官デントン・ヴォイルズ(スティーヴン・ヒル)が現れました。彼は、ミッチの事務所を所有しているのはモロルト・ファミリーというシカゴのマフィアで、マネー・ロンダリングという違法行為の中枢部が事務所だとつげました。

FBIはミッチに証拠物件の提供を要求したいのです。ミッチはFBIとの接触をトラーに告げると、事務所はミッチに圧力をかけ始めました。ミッチは証拠のファイルのコピーを手に入れようとしますが、その過程でトラーは変死してしまいます。

妻やロマックスのアシスタントのタミー(ホリー・ハンター)の協力でコピーを手にしたミッチは、兄を釈放するという条件でFBIと取引をし、それを渡しました。

さらにミッチはマフィアのボスのモロルト兄弟(ポール・ソルヴィノ、ジョージョー・ヴィテレリ)と会い、書類を操作して、事務所の摘発からマフィアに手が回らないように図ると言い、自分は弁護士としてマフィアと手を組むことに成功しますする。そして事務所の弁護士たちは逮捕され、ミッチは危機を脱するのでした。


3.ポイント

ミッチが事務所とFBIに追い詰められて絶体絶命のピンチに陥った時のミッチの表情がものすごく真に迫っていて、これからどうなるんだろうと手に汗を握りますが、おもしろいのはここからで、例えば、正義のために弁護士資格を投げうってFBIにマフィアを引き渡す(もっとアクションも取り入れる)というようなやり方では全くありません。

このどう転んでも絶望状態から、弁護士資格を守りながらも自身の命も脅かさない一つの計画を思いつきました。

ミッチは、FBIの狙いであったマフィアを暴くのではなく、水増し請求という法律事務所の法律違反、という事件にしてしまいました。そして顧客であるマフィアを守り、自分の弁護士資格も守りました。完全に意表つかれ、あまりに現実的すぎて、驚いてしまいます。

まるで禁酒法時代のアル・カポネをエリオット・ネスが脱税で投獄したのを思い浮かびました。


4.ジーン・ハックマン

蛇足みたいになりますが、ジーン・ハックマンの演じた、エイヴァリー・トラーの境遇に心打たれます。

この法律事務所は邪悪な仕事をさせるために若い弁護士をリクルートしますが、破格の報酬は、やはり禁断の果実で、通常の業務から邪悪な業務に移り変わるとき、リクルートされた弁護士は、もはや逃れられない状況に陥っています。すでに(そうとは知らずに)手を染めた汚職、人質になっている配偶者や子ども。知られたくないプライベートな情報も法律事務所が手中におさえられています。
そうして、生き残ったのがエイヴァリー・トラーでした。

ミッチ・マクディーアも一つ間違えばこのトラーのようになるところでした。トラーはミッチの妻ながら純粋無垢で清楚なアビーに惹かれます。そして、現在の悪の巣窟にいる自分の姿に失意してか、わずかに残った良心のなせる業か、アビーの行為を見逃してやりました。

男の悲哀を切なく演じていました。やはり名優です。

 

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5.トム・クルーズ

マーロン・ブランドポール・ニューマンジェームズ・ディーンを輩出したアクターズ・スタジオアメリカ映画に果たした意義は大変なものがありますが、彼らはキャラクターへの極度な感情移入を行う、所謂メソッド俳優たちであり、芝居がかった演技を得意としています。

 

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それに対してトム・クルーズの演技は、いかにも爽やかなもので、どれだけカメラのフレーム内で自身を輝かせるかに全身全霊が注がれています。

煌めく瞳、かしげた横顔の美しさ、時折みせる魅惑の表情。そして両腕を激しく振り上げるあの全力疾走の姿。危険を顧みない極限のアクション。

トム・クルーズトム・クルーズたらしめるためのあらゆる努力が画面の中に集約され、比類のないスター像が浮かび上がってきます。その点では、彼は自分自身のキャラクターを演出する力に秀でた俳優だとも言えるでしょう。

映画俳優としてトム・クルーズほど映画を愛し、愛されている俳優も他にいないでしょう。彼は正真正銘の映画スターです。


6.まとめ

ここのFBIとファーム、まったく相反する立場のものが、「条件を提示する側」「自分が条件を提示する側」であることを少しも疑っていない傲慢さを同じように持っているのがおかしく、それに善悪を知る者である主人公は決断をしなければなりません。ファームの「特別な熱意」とFBIの「特別な熱意」の、そのどちらかをです。

しかし、「他人を観察する側」すなわち「他人を観察する側」であることに何の疑問も抱いていない傲慢な両者の、傲慢なるが故に、そのどちらにも抵抗することができるのではないか。そう考えた主人公は、顔に汗し、両者を欺き、両者から逃れ、両者にそれ相応の打撃を与えます。観ていて、胸のすく思いがしました。

 

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