映画『小さいおうち』60年の時を超え、今、明かされる事実は?!

この映画『小さいおうち』は2014年1月25日公開の本作が通算82作目となる山田洋次監督作品です。中島京子直木賞受賞作直木賞受賞作の映画化です。

第64回ベルリン国際映画祭コンペティション部門に選出され、黒木華が最優秀女優賞(銀熊賞)を受賞しました。

目次

 

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1.紹介

一人暮らしをしていた大叔母のタキを亡くした大学生の健史は、遺品の中から、健史がタキに書くように勧めていた自叙伝のような記録のノートが見つけます。そのノートから、彼女が女中として生きていた昭和という時代と、ある家の秘密が描かれます。山田監督ラブストーリーへの初めての挑戦となりました。


2.ストーリー

1)プロローグ

生涯独身で亡くなった大叔母・布宮タキ(晩年期:倍賞千恵子)の葬儀を終えた荒井健史(妻夫木聡)は、遺品の整理中に、赤い屋根の家の絵がありましたが、健史の父荒井軍治(小林稔侍)の一言で処分されました。

そのうち、健史宛ての品が見つかります。開けてみるとタキが健史にうながされて大学ノートに書き記していた自叙伝がありました。

 

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2)タキの奉公先

昭和11年、山形から上京したタキは、おもちゃ会社の常務である平井雅樹(片岡孝太郎)の家で女中として働きはじめました。世間の景気もよく、平井の妻・時子(松たか子)にもかわいがられ、タキ(若年期:黒木華)はしばらく穏やかな生活を送ります。

時はすぎ昭和13年、正月の挨拶をきっかけに、平井の会社の新人・板倉正治吉岡秀隆)が平井家に通うようになり、時子との仲を深めていきます。そして、時子は、支那事変(日中戦争)の影響で仕事が難航し始めた平井とも少しずつすれ違うようになっていきました。しばらくして、板倉に会社がらみでの縁談が持ち上がり説得を頼まれると、時子は板倉の下宿に通い詰めるようになります。

 

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3)不穏な関係

タキは二人の不穏な関係を察知し始めていましたが、ある日のこと、板倉を訪ねた時子の帯の結び方が変わっていたことから、二人が不倫関係に陥ったことを確信し、女中としてどうしたらいいのか悩みはじめます。

そんな中、戦争の状況が悪化し、丙種合格だった板倉も召集されることになってきました。そして昭和16年12月に、アメリカとの戦争がついに始まります。少しずつ世の中が暗い雰囲気になっていく中に、時子と板倉の関係に周囲の人々も少しずつ気づき始めてきました。

そうした人たちによるところの自分への密かな忠告も、タキの悩みに拍車をかけていきました。そんな中、板倉が急に訪ねてきて、召集令状がきたため明後日の夜には上野を発つと告げました。

板倉がそっと、ずいぶん迷って、会わない方がいのではないかと言うと、時子は、黙って行ってしまったら、恨みに思うと返し、二人は抱擁し合います。まもなく帰宅してきた平井への挨拶を済ませると、板倉はそそくさと帰っていきます。


4)今生の別れ

あくる日、時子は板倉の下宿へ最後の逢瀬に向かおうとしますが、タキは、二人を会わせてはいけない、という思いと、これっきりもう会えやしないのだから何が起ころうと会わせてあげよう、という思いの間で揺れ動きます。

迷った末にタキは、会いに行く代わりに板倉を呼び寄せる手紙を書いて自分に届けさせてくれと申し出て、時子を思いとどまらせました。時子は、タキからの進言に少しいらつきながらも、すぐに手紙を書いて彼女に託すのでした。

そうして日が暮れるまで板倉を待っていたのですが、その日彼が訪ねてくることはありませんでした。

 

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その後、さらに戦況は悪化していきます。タキは故郷の山形に戻ることになり、平井と時子は東京大空襲で命を落としましす。

そこまでで、タキの自叙伝は終わっていました。


5)宛名の無い手紙

健史はノートのほかにも、宛名の無い1通の手紙を見つけます。差出人は「平井時子」とあったため、健史は恋人・ユキ(木村文乃)とともに生き延びていた息子の恭一(晩年期:米倉斉加年)を探し、居場所を調べて訪ねました。

今は年老いて目の見えない恭一の許しを得て、代わりに手紙を読み上げると、なんとそれは板倉を呼び寄せる時子の手紙だったのです。タキは手紙を届けることなく、時子と板倉の関係を自分の手で終わらせたのです。


6)エピローグ

恭一は、自分の母親の不倫を知りショックを受けつつも、板挟みになって苦しんだタキをおもんばかりました。健史は恭一のその言葉に涙し、時子や板倉の狭間で揺れ動き、年老いてなお「長く生き過ぎたの」と涙を見せたタキの気持ちに思いを馳せて、物語は終わります。


3.四方山話

1)キャスティング

現代パートの平成期と昭和期の回想パートとが描かれていて、昭和期で平井時子を演じる松たか子は、山田洋次とは『隠し剣 鬼の爪』(2004年)以来の9年ぶりのタッグとなりました。

布宮タキの晩年を演じる倍賞千恵子は、『男はつらいよシリーズ』(1969年 - 1995年)他多数、『母べえ』(2007年)以来となる山田作品への参加となります。

また、昭和期のタキを演じる黒木華は、「クラシックな顔立ち」が決め手となり起用されました。

晩年の恭一を演じた米倉斉加年は、『男はつらいよシリーズ』に6作出演していて、準山田組といって良いでしょう。


2)黒木華

前述のように、本作での演技により第64回ベルリン国際映画祭(2014年)最優秀女優賞(銀熊賞)を受賞し、日本の女優では左幸子田中絹代寺島しのぶに次いで史上4人目であり、23歳での受賞は日本人最年少でした。

映画祭の総評において「(黒木の)演技力は群を抜いていた。」と評されました。銀熊賞受賞に際しては、内閣官房長官菅義偉(当時)も祝意を示しました。

さらに、第38回日本アカデミー賞・最優秀助演女優賞も受賞し、その年最も活躍し将来の活躍が期待できる俳優に贈られるエランドール賞新人賞も受賞しました。


3)時代

書評家の豊崎由美は、本作の原作を、『一貫して中流家庭に仕えた女中の視点の戦中生活が描かれ、戦争を扱った小説や映画やドラマで刷り込まれた、戦時中の軍靴の音が響くようなイメージとは異なり、「戦争が始まって(中略)世の中がぱっと明るくなった」「食べ物は貧相になっていたけれども、(中略)株やなにかが、どんどん上がっていって、それで大儲けした人なども出て、街が少し賑やかになり」などといった、教科書で習うのとは正反対の記述が多々あり、これまでの戦争文学が太ゴシック体なら、本作は柔らかで親しみやすい細明朝体の歴史が生き生きと綴られている』と評しました。

この時代に生きた山田監督であらばこそこの雰囲気を疑うことなく描きえたのでしょう。


4)もんくもん

時子と板倉の初デートとなった音楽会の場面ですが、板倉が遅れて来て劇場職員に案内されてホールに入場しましたが、まったくの演奏中であり、普通は、職員に入場を断られ、曲間を待って入るものでしょうが、この時代とは言えクラッシクの演奏会ではあり得ないマナー違反です。


4.まとめ

山田監督は産経新聞のインタビューに応えて、『小さいおうち』で描きたいのは「戦前の昭和のサラリーマンの家庭の穏やかな暮らし方を思い返したい、見つめてみたいということ。これは僕の少年時代の思い出でもあるわけだ」と述べています。

1964年生まれの原作者が取材の蓄積から『小さいおうち』を著したのに対し、1931年生まれの山田監督はノスタルジーを込めて過去を振り返っていることが判ります。

 

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